小説むすび | 著者 : デボラ・シモンズ

著者 : デボラ・シモンズ

尼僧院から来た花嫁尼僧院から来た花嫁

黒い僧衣に白いベールを纏った乙女。 これが、我が妻となる娘か! 孤児のジリアンは無慈悲な伯父によって尼僧院に入れられた。 なじめないながらも、そこでの暮らしに慣れた頃、 彼女のもとを、ニコラス・ド・レーシと名乗る美男が訪ねてきた。 ド・レーシ家といえば、国じゅうに聞こえた大金持ちだけれど、 そんな人が、尼僧見習いの私にどんな用が? 「私たちは結婚するのだ。そなたに選択の余地はない」 聞けば、ジリアンの伯父が死に、国王の命により、 伯父の領地と隣のニコラスの領地を一つにするため結婚せよというのだ。 美しいけれど冷酷無情な彼の瞳には、なぜか蔑みの炎が揺れていた。 日が暮れ、ジリアンはそっと逃げ出そうと窓から飛び降りるがーー その姿を上階から見ていたのは、なんと……ニコラスだった! かつて深手を負ったニコラスはジリアンの伯父に見殺しにされた恨みがあり、もうこの世にいないその宿敵の血を引く彼女を妻にして、酷い扱いをしてやろうと考えます。そして夫婦の契りも結ばず、奥方としての役割も禁じますが、それで弱るジリアンではなく……。

騎士と女盗賊騎士と女盗賊

男装の女盗賊に心を奪われては、 誇り高き騎士の名が廃る……。 「動くな。武器を捨てろ。あなたたちは包囲されている!」 さる領地へ向かう途中、伯爵家の騎士サイモンに命令する者があった。 暗がりに目を凝らすと、声の主はどうやら少年盗賊らしい。 百戦錬磨のサイモンは生意気な相手を黙らせようと剣を抜いたが、 不意をつかれて馬上から地面へ落とされ、揉み合いになった。 たかが少年に手こずるとは屈辱的だと腹を立てながら、 サイモンは一撃で急所を仕留めるため、相手の下腹部に手をやったーー ない……あるはずのものが! 戸惑った瞬間、頭に石を打ちつけられ、 遠のいていく意識のなか、サイモンは驚きの光景を見た。 目の前にいるのは少年ではなく、はしばみ色の瞳の美しい女だった。 気を失って囚われの身となったサイモンは、“女盗賊”ビーシアへの怒りをあらわにし、自由になった暁には彼女を奴隷にしてやると心に誓いますが……。本作は初版時、HQヒストリカルの100号記念作に選ばれました。活発で聡明なヒロインが印象的な秀作です!

伯爵家の事情伯爵家の事情

不埒な侯爵に物申すはずが、 身も心も囚われて……。 誕生日の夜、ロス侯爵グレイは社交界の集まりから屋敷へ戻り、 書斎に足を踏み入れたとき、ただならぬ気配を感じて身構えた。 そこには、薄汚い服を着たひどい身なりの少年が一人。 少年は銃を構えて叫んだ。「妹の純潔を奪って孕ませた責任をとれ!」 世間から罪作りな男と呼ばれてはいるが、まるで身に覚えがない。 グレイは隙をついて銃をたたき落とし、少年を床に組み敷いた。 よく見れば、艶やかな肌に、丸みを帯びた頬、豊かなまつげ……。 少年のだぶだぶの上着の下に手を入れ、体に触れるーーこれは、女だ! だが次の瞬間、銃を取り返そうとする“少年”ともみ合った勢いで 弾丸が飛び出し、体を貫かれたグレイは、崩れるように気を失った……。 少年に扮したヒロイン、ケイトは、責任として養育費を支払わせようと、ただ脅すだけのつもりでした。けれども銃の暴発に動転し、侯爵を家に連れ帰って必死に看病することに。眠る侯爵は地上に落ちた大天使のように美しく、彼女は思わず見とれてしまうのでした。

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