小説むすび | 著者 : ニコラ・コーニック

著者 : ニコラ・コーニック

愛されぬ花嫁でも愛されぬ花嫁でも

よるべなき窮地の乙女を守るのは、 優しいおじ? それとも美貌の伯爵? 「初めて会ったときから、あなたが欲しかった」 18歳で天涯孤独となったカトリオーナに救いの手を差し伸べたのは、 放蕩者と悪名高い次期伯爵ニール・シンクレア。 彼の瀟洒な邸宅に住み、美しいドレスと宝石で身を飾ってよいという。 つまり愛人契約だ。黒い瞳のハンサムな彼の官能的なほほえみに、 カトリオーナの心は乱れたものの、結婚前の無垢な乙女が 愛人契約にのるなどとんでもない醜聞だ。一抹の不安を胸に カトリオーナは会ったこともないおじと名乗る人物の屋敷に身を寄せる。 だが不安は的中したーー彼女が一族の家系図を見つけたことから、 予想もしなかった事件の幕が開いてしまう。 HQの大人気作家ニコラ・コーニックが、スコットランドの名作家スティーヴンソンの『誘拐』を題材に描いたドラマティックな作品です。ウィットに富んだ会話に魅力的な悪役登場、誰が味方で誰が敵かもわからない展開ーーページをめくる手が止まらない一冊!

伯爵夫人の出自伯爵夫人の出自

煙突のすすのようなモノクロの世界に、 伯爵との出逢いが色彩をもたらした。 漆黒の髪、黒の上着とスカートに、黒いブーツ。 煙突掃除人の娘ジェマイマは伝統的な盛装で、貴族の結婚式の余興に出た。 上流階級の人々に気後れしていたところ、一人の男性が声をかけてきた。 見目麗しきその男性は、第15代セルボーン伯爵ロブ。 結婚式に煙突掃除人とキスをすると幸せになれるーー そんな言い伝えに則って彼に口づけされ、ジェマイマの胸はときめいた。 一方ロブは、亡き父と祖母の奇妙な遺言に頭を痛めていた。 伯爵領と莫大な資産を継ぐ条件として、父からは4週間以内の結婚を、 祖母からは100日間の禁欲を命じられたが、適した相手がいないのだ。 いや、待てよ。この煙突掃除人の娘を、名ばかりの妻にしたら……? 透き通る白い肌と青紫の輝く瞳、そして教養と機知に富んだジェマイマこそ、完璧な伯爵夫人候補だーー煙突掃除人の娘でさえなければ。迷うロブでしたが、出逢った数日後に彼女の家を訪れ、便宜結婚を申し込みます。「結婚しても君は君、僕は僕で暮らそう」と。

淑女と娼婦淑女と娼婦

伯爵に蔑みの目を向けられたのに、 彼の誘惑に抗えないなんて……。 なぜ姉の突飛な頼みを聞き入れてしまったのかしら? 純朴でまじめなルシールはしきりに後悔していた。 父の死後、姉は相続のためにさる伯爵領内の屋敷に住む必要があった。 だが、留守中にルシールが姉になりすますのはあまりに無謀だった。 双子の二人は顔がそっくりでも、性格もふるまいも……なりわいも違う。 ルシールは地味な教師で、姉は社交界に名を馳せる高級娼婦なのだから。 領主のシーグレイブ伯爵はもちろん、村人からも白眼視される毎日。 次々とつらい目に遭い、思わず涙を流してしまった彼女を見て、 伯爵は目の前の女性が自分の知る人物らしくないことに気づいた。 ほどなくルシールは仰天の誘いを受けるーー僕の愛人にならないか、と。 太陽と月ほど違う性格の双子の姉に代わり、不機嫌な伯爵や村人と渡り合わなければならなくなったルシール。皆の敵意は本来、姉に向けられているとはいえ、手酷い仕打ちに傷つきます。うぶな彼女と伯爵との成就しそうもない恋は、いったいどうなることやら……。

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