著者 : プルースト
ゲルマント大公邸のパーティーに赴いた「私」は驚愕した。時は、人びとの外見を変え、記憶を風化させ、社交界の勢力図を一新していたのだ。老いを痛感する「私」の前に、サン=ルーの娘はあたかも歳月の結晶のように現れ、いまこそ「作品」に取りかかるときだと迫る。
幼年時代の秘密を明かすタンソンヴィル再訪。数年後、第一次大戦さなかのパリでも時代の変貌は容赦ない。新興サロンの台頭、サン=ルーの出征、「破廉恥の殿堂」での一夜…。過去と現在、夢と現実が乖離し混淆するなか、文学についての啓示が「私」に訪れる。
ヴィルパリジ夫人のサロンに招かれた語り手は、ドレフュス事件や藝術の話に花を咲かせる社交界の人びとを目の当たりにする。一方、病気の祖母の容態はさらに悪化し、語り手一家は懸命に介護するのだが…。第三篇「ゲルマントのほう」(一)後半と、(二)前半を収録。
アルベルチーヌの突然の出奔、続く事故死の報。なぜ出ていったのか、女たちを愛したからか?疑惑と後悔に悶える「私」は「真実」を暴こうと狂奔する。苦痛が無関心に変わるころ、初恋のジルベルトに再会し、その境遇の変転と念願のヴェネツィア旅行に深い感慨を覚える。
前巻から2年後、「私」は避暑地バルベックで夏を過ごすことになる。個性的な人びととの交流、そして美しい少女たちとの出会い。光あふれるノルマンディの海辺で、「私」の恋は移ろう…。全篇の中でも、ひときわ華やかな印象を与える第二篇第二部「土地の名・土地」を収録。
ヴェルデュラン夫妻が借りた海を見下ろす別荘と、そこへ向かう小鉄道で展開される一夏の人間喜劇。美貌の青年モレルに寄せるシャルリュス氏の恋心はうわさを呼び、「私」の恋人アルベルチーヌをめぐる同性愛の疑惑は思わぬ展開を見せる。
悪徳と罪業の都市ソドムとゴモラ。本篇に入り、同性愛のテーマがいよいよ本格的に展開される。不意によみがえる死んだ祖母への想い。祖母を失った悲しみの感情に「私」は突然とらえられる(「心の間歇」)。「私」はアルベルチーヌに同性愛の疑いをいだくが…。(全14冊)
プルースト(1871-1922)が20代前半に書いた短篇小説・散文・詩をまとめた第一作品集。鋭敏で繊細な感受性、細部にわたる緻密な観察、情熱や嫉妬といった心理の微妙かつ執拗な探究、スノビスムへのこだわりなど、大作『失われた時を求めて』にも見られる特徴の数々が本書にはすでに現れている。作家プルーストの原点。
冬に向かうパリ、「私」をめぐる景色は移ろうー「花咲く乙女」とベッドで寄り添い、人妻との逢い引きの夢破れ、ゲルマント夫人の晩餐には招待される。上流社交界の実態、シャルリュス男爵の謎、予告されるスワンの死…。人間関係の機微を鋭く描く第七巻。
祖母の旧友ヴィルパリジ夫人のサロンで、「私」はゲルマント公爵夫人とついに同席。芸術、噂話、ドレフュス事件など、社交界の会話の優雅な空疎さを知る。家では祖母の体調が悪化。母、医師、女中に見守られ、死は「祖母をうら若い乙女のすがたで横たえる」。
パリのゲルマント館の一翼に引っ越した一家。家主の公爵夫人は神秘の輝きを放つ貴婦人。その威光にオペラ座で触れた「私」は、コンブレー以来の夢想をふくらませ、夫人の甥のサン=ルーを兵営に訪問、しだいに「ゲルマンのほう」へ引き寄せられる。
社交界の寵児スワンと、粋筋の女オデット。追う女/追われる男の立場はいつしか逆転し、男は年下の恋人への猜疑と嫉妬に日夜悶える(スワンの恋)。ジルベルトは二人の娘、幼い「私」はシャンゼリゼで見たこの少女に思慕を捧げる(土地の名ー名)。-二つの恋の回想。
ひとかけらのマドレーヌを口にしたとたん全身につたわる歓びの戦慄ー記憶の水中花が開き浮かびあがる、サンザシの香り、鐘の音、コンブレーでの幼い日々。重層する世界の奥へいざなう、精確清新な訳文。プルーストが目にした当時の図版を多数収録。
マドレーヌを口した瞬間、少年時代の記憶が甦る奇妙な感覚。「私」の成長とともに描き出される、第一次世界大戦前後のフランス社交界の人間模様。それは「私」の失われた時を探し求める長い旅の始まりだった…。独自の時間解釈と記憶に対する見解を提示し、20世紀の文学・哲学概念を変革させた傑作大長編小説を漫画化。