著者 : ヘルマン・ブロッホ
20世紀ドイツ文学を代表する作家であるヘルマン・ブロッホの死後に遺稿から編纂された長編小説をドイツ文学者・古井由吉が翻訳した言語芸術の最高峰ともいえる名作を復刊。本作の訳業は古井由吉が作家への道を歩むきっかけのひとつに。 山間部の山村で素朴に生活を営む人々。その村に都会から「誘惑者」が流れつき、しだいに村は「誘惑者」の妄想に浸透されていく。語り手である田舎医師を通して描かれる、村人たちの空疎な熱狂と荘厳なる自然。筑摩世界文學体系(1973年2月刊行)に収録の同名作品の復刊。コンパクトサイズ、1段組で読みやすく。 ◆誘惑者 上 語り手のまえがき 1章 漂泊者 2章 黄金 3章 夢 4章 思い出 5章 素朴 6章 不安
20世紀ドイツ文学を代表する作家であるヘルマン・ブロッホの死後に遺稿から編纂された長編小説をドイツ文学者・古井由吉が翻訳。ときにはひとつの文で数頁にまでおよぶこともある、ドイツ語の表現を極めた特異な文体を、古井由吉だからこそ翻訳なしえた言語芸術の最高峰。 「誘惑者」に浸透されていく村人たちと、侵されることのないひとりの老婆。やがて語り手である田舎医師も眩惑されていき、ついには宗教的儀式である出来事が。田舎医師を通して描かれる、村人たちの空想な熱狂と荘厳にそびえ立つ山々の様子。 筑摩世界文學体系(1973年2月刊行)に収録の同名作品の復刊に書き下ろしの解説(早川文人・金沢大学)を追録。 ◆誘惑者 下 7章 憎しみ 8章 甦り 9章 孤独 10章 救済 11章 羞恥 12章 無限なるもの 語り手のあとがき ◆訳者解説 ◆解説 ヘルマン・ブロッホ/古井由吉の『誘惑者』 早川文人(金沢大学)
20世紀ドイツ文学の記念碑的小説復刊!古代ローマの大詩人ウェルギリウスの死の直前の18時間を描いたヘルマン・ブロッホの畢生の大作。 詩人ウェルギリウスは、アテナイからローマへの帰国の途中ブルンディシウムの港で熱病に侵され、死の思いに耽り詩人としての自分に思い及び、やがて未完の大作『アエネーイス』についてある決断をすることに。現実と非現実、過去と現在と未来、意識と超意識が内的独白で融解していく。 1977年発行集英社版『世界の文学』に収録の同書名の復刊し、解説(原田義人)を追加。 第一部 水ー到着 第二部 火ー下降 解説 ヘルマン・ブロッホの『ヴェルギールの死』
20世紀ドイツ文学の記念碑的小説復刊!古代ローマの大詩人ウェルギリウスの死の直前18時間を描いたヘルマン・ブロッホの畢生の作。 詩人ウェルギリウスは自らの決断を友人たちに伝え、やがてそれを知った皇帝アウグストゥスが現れる。詩人と皇帝は芸術、詩、生と死について激しく語り合っていく。そしてついに肉体の死を迎える。オーストリア出身でユダヤ系の著者がナチスに拘禁された際の個人的な死の覚悟から、抒情的作品にまで発展させた大作。 1977年発行集英社版『世界の文学』に収録の同書名の復刊。 第3部 地ー期待 第4部 灝気ー帰郷 出典 訳者解説
下巻は第3部「1918年」を収録。下巻に至って、多面的な構成、実験的性格が顕になる。1918年は、第1次大戦の終結の年。ドイツ帝国は崩壊へと一気に突き進んで行く。混乱し錯綜する時代像を、詩や戯曲、哲学的論考など、様々な文章形式を駆使し、従来の小説観を突き破る斬新な手法で活写。ヘッセやT・マンなど、文壇に衝撃を走らせた。舞台は、ドイツ西部戦線後方の地方都市。第1部や第2部の主人公など、過去の登場人物たちも時を隔てて登場。多彩な人物が織りなすドラマは、一大曼荼羅図。「夢遊」する人々に、果たして「覚醒」はあるのかー。附録に、ブロッホの文学観を知る一助として、講演「長編小説の世界像」を収録。
偉大な作家たちは、時代に深く沈潜、その時代の「精神」を捕捉し、作品に封じ込めようと格闘してきた。20世紀前半、その努力は頂点に達し、巨大な作品が群生、雄大な山脈となって現れたのだった。仏語圏のプルーストしかり、英語圏のジョイスしかり…。そして独語圏にも驚異的な膂力を持った作家が現れたー名はヘルマン・ブロッホ。ヒトラー登場へと続く時代の危機を、その淵源にまで遡り省察。本書は、その独創的な省察、「価値崩壊」論を背景に、時代風俗の中で“夢遊”する人々を活写する。雄大な構想、精緻な分析、斬新な描写手法は、圧倒的だ。読者は究極、「時代精神」の確かな彫像を見ることだろう。「全体小説」を唱えた巨匠の一大金字塔。