著者 : マーガレット・ローム
この土地の古いしきたりに従ってクレアは黒い花嫁衣装を着た。悪魔のような花婿ロルフとの結婚式にふさわしい色だ。引き締まった体を優雅な夜会服に包んだ、尊大な大富豪は、舞踏会で出会ってすぐ、破廉恥にも彼女を抱き寄せ唇を奪った。初めて感じた、体に電流が駆け抜けるような衝撃。クレアは激しく動揺した。婚約者がいる身だというのに…。ところが、婚約者があろうことかロルフの金を横領したと発覚。するとロルフは彼女に結婚を迫ってきたー男らしさと性的魅力にあふれたロルフ。婚約者に泣きつかれ、クレアは言い知れぬ不安に脅えつつ、結婚を承諾したのだが…。
リネットの父は、美しい娘を洗練された淑女にするために、没落貴族の娘を教育係としてあてがい、厳しくしつけさせた。たしかにマナーやセンスは身についたけれど、こんな生活は苦痛…本来は読書好きでおとなしいリネットの心は沈んでいた。そんなある日、リネットは寄宿学校時代の親友から兄を紹介される。ルイス・エステベス・パラディ侯爵はフランスとスペインの混血で、極楽島の海賊と呼ばれ、結婚を忌み嫌う社交界のスターだという。彼女は親友ともども、ルイスが所有する極楽島へ招待されるが、途中、彼は一行から離れ、リネットを秘密の小島に連れ出す。隠れて休むときに使うというその島で、彼は夜を過ごそうと誘い…。
地味で堅実な姉と、美人でわがままな妹ー姉のアンジェリーナは母亡きあと、家事いっさいを引き受け、牧師の父の手伝いもしている。一方、妹は家族を支えるどころか、あちこちでトラブルを起こしては、姉に後始末をさせていた。とはいえ、今度ばかりは酷すぎる。アンジェリーナは頭を抱えた。旅先で知り合った大富豪ヘリオスと成り行きで婚約したものの、別の男性に心変わりしたから婚約解消を伝えてきてほしい。妹がそう言って泣きついてきたのだ。早々にギリシアへ飛び、荒んだ様子のヘリオスに面会したアンジェリーナは、すぐに悟った。妹の身代わりの花嫁になる。それが唯一、彼女にできることだと。
生まれてまもない赤ちゃんを置いて、姉が家を出ていった。両親もすでに亡く、キャロラインは途方に暮れながらも、ただひたすらその子に愛情をそそぎ、育てていた。6カ月後、子どもの父親の従兄弟だという、イタリア人大富豪ドメニコ・ヴィカーリが現れる。子どもの父親は亡くなったとドメニコは言い、キャロラインを母親と勘違いして、その子を引き取るから結婚しよう、と申し出た。真実を言えば、きっとこの子から引き離されるー悩んだ末、キャロラインは姉になりすまし、プロポーズを受け入れた。