著者 : ルイーザ・ヒートン
サマンサは実の母に“おまえの体は壊れている”と言われ続け、必要のない手術を何度も受けて心身に深い傷を負いながら育った。そのせいで自分も母のようになるのではという不安から子を持つ気はない。ある日、彼女は勤務先の病院で手術を執刀中に吐き気を覚えた。疲れがたまったせいだと考えていたとき、手術室のドアが開き、入ってきた外科医を見て、彼女は驚きと動揺のあまり失神してしまう。11週間前、短期のパリ出張で出逢った一夜の恋人ヤニスだったのだ!サマンサを抱きとめたヤニスが彼女の体調を心配して血液検査をした結果、なんと妊娠していることが判明したーもちろん、ヤニスの子を。だが、ヤニス側にもまた、子を望まない理由があった…。
小児科医のメリーはイギリスから飛行機でアイスランドに来ていた。今は山道にいて、頭から爪先まで雪まみれでこごえている。彼女には大事な目的があった。一夜をともにしたクリスチャンに、“あなたの子を妊娠した”と言わなくてはならない。段ボールに入れられて教会に捨てられていた私のように、おなかの赤ちゃんを父親のいない子にはしたくないから。でも、つかの間の関係以上を求めなかった彼には何も期待していない。寒さに震えながらクリスチャンが勤める病院に着いたメリーは、雪で道が通行止めになり、町から出ていけなくなったことを知る。さらにクリスチャンは意外にも、「父親になりたい」と言い出して…。
レインは亡き親友とした約束で、診療所の看護助手として働き始めた。目的は医師のコールに「あなたには8カ月の娘がいる」と伝えること。彼は自分に子供がいると知らない。赤ん坊の母親がこの世にいないのも。レインは親友の名前すら聞いていないコールを許せなかった。しかし医師としてすばらしいうえ、男性としての魅力にもあふれる彼に知らず知らずのうちに惹かれ、夢中になってしまう。コールに娘の存在を明かしたとき、レインはある過ちに気づいた。彼が赤ん坊を引き取りたがったら、わたしはまた一人ぼっちになる。でも、コールが言う「ぼくたち」にわたしの入れる隙間はあるの?どんなに愛情深く育てていても、しょせんは母親の代用品なのに…。