著者 : ロレイン・ヒース
第9代ソーンリー公爵の命の灯は、暴漢の手によって消されようとしていた。逃げた花嫁を追い、貧民街になど足を踏み入れたせいだ。運命を呪う公爵だったが、颯爽と現れた男性に救いだされ、手厚い看病を受ける。目覚めた公爵の瞳に飛びこんできたのは、あるはずのない胸の膨らみーそう、恩人ジリーは女性だったのだ。治安の悪い場所で働くため、幼い頃から女性らしさを拒絶して生きてきたジリーは、今も男装を貫いている。しかし、男物のシャツでは隠しきれない可憐さと、意外にもうぶな一面が、公爵の男の部分を刺激して…。
幼い頃に天涯孤独の身となり、公爵夫妻を親がわりに育ったアスリン。次期公爵に嫁ぎ、何不自由のない日々を送るはずだった彼女の世界は、突然現れた大富豪ミック・トゥルーラヴによって一変する。貧民街に生まれながらも、不屈の意志で巨万の富を築きあげた彼は、裏社会を統べる危険きわまりない存在。真夜中を思わせる瞳、官能的な手練手管に、純真無垢なアスリンが抗えるはずもなかった。しかし、ミックが近づいてきたのは壮大な復讐劇のためー30年前に公爵家から捨てられた幼子が、すべてを奪う悪魔となって戻ってきたのだ。
マティルダはその午後、ハンサムな来訪者に厳しい視線を向けていた。妹の求愛者として現れたレクストン侯爵は、英国社交界最高の花婿候補と謳われ、家柄も立ち居振る舞いも完璧だ。しかし、かつての自分のような不幸な結婚をさせないため、マティルダは二人の外出にお目付役として同行する。完全無欠な侯爵の、不適切な一面はすぐに明らかになったー冬空を思わせる青い瞳はマティルダに向けられるときにだけ、暗く官能的な熱を帯びるのだ。危険な男性だ。妹にはふさわしくない。憤りつつも、彼のまなざしに体は熱くなって…。
旅行中に命を落とした双子の兄の遺言が、エドワード・オールコットの運命を一変させた。グレイリング伯爵の地位を継ぐばかりか、帰国後は兄になりすまして、幼な妻ジュリアとの結婚生活を続けなければならなくなったのだ。兄とは正反対に放蕩の限りを尽くしてきたエドワードは、数年前のある“過ち”のせいで、彼女から毛嫌いされている。4カ月ぶりに夫と再会したジュリアは、幸いにも瓜二つのエドワードを夫と信じて疑わなかったが、彼を愛情深く見つめる“妻”の隣で眠ることに、エドワードは次第に耐えきれなくなっていた。