著者 : 三川基好
究極のノワール 復刊! 『このミステリーがすごい!2001年版』(宝島社) 海外編 第1位 『同 2019年版 キング・オブ・キングス』(過去30年のベスト10) 海外編 第5位 「安物雑貨店(ダイムストア)のドストエフスキー」 ーージェフリー・オブライエン(本書所収評論より) 「トンプスンの最高傑作は他とは別格で、 ハメットの『赤い収穫』と比較されるべき 犯罪文学の金字塔。この魂の荒涼が吐きつける 言葉に震撼させられずしてハードボイルドの なんたるかはとうてい語れまい」 ーー中条省平(フランス文学者) ポッツヴィル、人口1280。この田舎町の 保安官ニックには、心配事が多すぎる。考 えに考えた結果、自分にはどうすればいい か皆目見当がつかない、という結論を得た。 口うるさい妻、うすばかのその弟、秘密の 愛人、昔の婚約者、保安官選挙……だが、 目下の問題は、町の売春宿の悪党どもだ。 思いきった手を打って、今の地位を安泰な ものにしなければならないーー饒舌な語り と黒い哄笑、突如爆発する暴力! 人間の 底知れぬ闇をえぐり、読者を彼岸へとみち びく、究極のノワール。巻末にトンプスン 再評価のきっかけとなった歴史的評論を収 録のうえ、新装版で復刊!〈解説・吉野仁〉 Jim Thompson ジム・トンプスン 1906年生まれ。職業を転々としながら作家活動をつづけ、42年に初長編を出版。49年に犯罪小説に転じ、その後、ペイパーバック・オリジナルを書きとばす。50年代なかば、S・キューブリックの映画製作にかかわる。小説が斜陽となると、TV脚本にも従事。作品がすべて絶版の状態で、77年に死去。死後、ようやく作品の再評価がはじまった。 〈扶桑社ミステリーのジム・トンプスン作品〉 『グリフターズ』 『おれの中の殺し屋』 『ポップ1280』 『失われた男』 『荒涼の町』 『残酷な夜』 『この世界、そして花火』
裁判所から召喚された世捨て人作家コーソは、出廷命令を無視して行方をくらますことにした。元恋人と空路ミネソタを目指すが、空港は大雪で閉鎖。レンタカーで移動する二人は、吹雪で事故を起こし凍死寸前に。やっと見つけた空き家で床板を燃やして一命を取りとめるが、床下からは何体もの白骨死体がー。その家にまつわる身の毛もよだつ驚愕の秘密とは?至高のサスペンス登場。
残忍な殺人は平穏な海辺の館で起こった。殺されたのは金持ちの老婦人。金目的の犯行かと思われたが、それは恐るべき殺人計画の序章にすぎなかったー人の命を奪う魔の瞬間“ゼロ時間”に向けて、着々と進められてゆく綿密で用意周到な計画とは?ミステリの常識を覆したと評価の高い画期的な野心作を新訳で贈る。
病院の崩壊事故にともなう死傷事件の公判直前。手抜き工事の黒幕バラギュラは、証人を片端から消すよう部下に命じていた。ノンフィクション作家コーソは、彼の悪事を暴く本を執筆中だったが、元恋人が、バラギュラの証拠隠滅工作に巻き込まれ瀕死の重傷を負ったと知る。さらに自分の身辺にまで殺し屋を差し向けられ、ついにコーソの憤りが炸裂する!問答無用のサスペンス名編。
元俳優で警備員のスコットは、映画会社から調査を依頼された。話題の新作映画の脚本家バートが共産主義者だと指摘する手紙が届いたため、密かに差出人を突きとめてくれという。が、製作発表パーティの夜、バートが他殺体で発見された。殺人と手紙の関連を探るスコットは、事件の裏に潜む醜悪な人間関係に突きあたる…赤狩り旋風が吹き荒れるハリウッドを舞台に、男たちの哀愁が浮かびあがる情感豊かなハードボイルド。
「わたしの車を取り返して」ある日同じ会社に勤めるマリアンナがハロルドを訪ねてきた。中古車販売店で下取り車を相場より三千ドルも安く買い叩かれたので、売りつけられた車をつっ返して元の車を取り戻したいというのだ。女に弱い中年男のハロルドは、いいところを見せようと気軽に引き受けた。だが、それがきっかけで次々に起こる思いがけない出来事に、彼はぬきさしならない泥沼にはまりこむ。やがて刑務所入りは確実という事態に追いこまれるが-。MWA、アンソニー両賞の最優秀処女長篇賞の候補となった期待の新人のデビュー作。
元俳優の警備員スコット・エリオットは、映画監督ドルリーから、撮影現場の警備の依頼を受けた。再起をかけて、自作のリメイクを撮影中だったドルリーだが、その現場で謎の事故が相次いでいるのだという。彼の才能に嫉妬したものの仕業なのだろうか?エリオットは、犯人探しに乗りだすのだが…1950年代の古き良き時代のアメリカを舞台にした、傑作ハードボイルド。アメリカ私立探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
いつもまずいときにまずい場所に居合わせ、金にならない厄介な事件ばかりを抱え込んでしまう私立探偵のシックススミス。例によって今夜も、合唱団の練習をこっそり抜け出した途端に死体が入った段ボール箱に蹴つまずき、犬猿の仲の警官からは犯人扱いされ、口うるさい伯母からは大目玉を食らう始末。おまけにナチの戦犯容疑をかけられた老人にまつわる騒動や、女性教師のセクハラ疑惑にまで巻き込まれ…怪事件、難事件の連続に自慢の強運ももはやこれまで。
その老人は、むせかえるように暑い温室で私を待っていた。私立探偵の私は、暗黒街のボスである老人から、過激な環境保護グループの一員となり家出した孫娘を連れ戻すよう依頼されたのだ。やがて私は、孫娘の居所と彼女が密会する若者が住む小屋を探りあてた。だがその晩、小屋は焼け落ち、さらに私の身辺にも卑劣な罠が…探偵レオが森林開発に絡む邪悪な陰謀に挑む。ハードボイルドのジャンルに新風を吹き込んだ注目作。