著者 : 三枝和子
祖母・持統天皇から「氷高を長屋王に婚姻せたりはしません。あの皇女は、もっと大変なことが出来したときに重要な地位に即いてもらわねばなりません。誰彼の妃になどしてはならない」と命を受け、母・元明天皇から「私が生きているあいだは、不比等はお前を御位から下ろすことはできますまい。お前は推古様のように長生きして、長く皇位に即いている必要があります」との言葉を受けて、政争のただ中に、氷高皇女は即位する。生涯独身だった美しき女帝をとりまく、不成就の恋の歌。政争と不思議なめぐり合わせで、祖母、母、娘と三代の女性がつづいて皇位に即く。氷高元正天皇の波乱の生涯。
恋愛・結婚・女性観、エロス論、イデア論…。彼は古代ギリシアで、どう生きていたのか。-そうだ、プラトーンに会いに行こう。午睡のあと、ソフィアとカズゥコはタクシーを拾い、神殿へと向かった。
女郷長に近づき、鉄を作り、うるしの技法を学び、周辺各国を手中におさめた須佐之男の情熱と勇気、そして息子大国主の努力と実行によって繁栄した出雲王朝の謎に迫る長編書き下ろし考古学小説。
仁明帝、東宮、在原業平、僧正遍照などとの様々な恋に懊悩し、情熱的な和歌の才能を発揮した六歌仙の一人、小野小町。絶世の美女とも謳われた華のごときその生涯を通して、平安時代の豊かな男女の関係のありようを浮かびあがらせた物語。
敗けいくさの日々が女子供や物言わぬ生きものたちの上へ、どのように降りかかって来たか-。“日本軍もまた各地でそうしてきた”略奪と残虐の実情-。忘れられない記憶が、戦後を生き延びた母たちの無念の叫び、鎮魂の祈りとともに語り出される…。
「高貴な血筋の方を次々と手玉にとる遊び女」そんな噂をも心の隅で楽しみながら、あくまでも誇り高く、男を愛し、愛されて奔放に生きた情熱の歌人和泉式部。今なお輝きを持つ恋の数々と、鮮やかな生き方を魅力的に描く歴史物語。
物語の中では、どんな恋をも生み出せる。けれどこのやりきれない現実…。不本意な結婚と死別。義理の息子との不義の恋。時の人道長との恋愛。古今東西にわたって不朽の名作として輝く『源氏物語』に込められた作者・紫式部の想いを、知られざる人間模様・恋模様を通し、きめ細やかに浮き彫りにした魅力溢れる歴史ロマン。
なげきつつひとり寝る夜のあくるまはいかに久しきものとかは知るー「あなたを幸せにする」そう約束してくださったはずなのに。持ち前の男ぶりの良さで人望と女たちの愛とを一身に集める夫、兼家への想いに身を焦がす日々。美貌の才女として知られた「蜻蛉日記」の著者、藤原道綱母の生涯を平安の王朝に鮮やかに染め上げた歴史物語。
ふと、その一節を口ずさみたくなる、永遠に瑞々しい随筆『枕草子』を書いた清少納言とはどんな女性だったのか。華やかな王朝時代に、一条天皇の中宮・定子に仕え、藤原公任、藤原行成をはじめとする貴族との恋を、きらきらした才覚で彩った清少納言を生き生きと描く歴史小説。
血みどろの戦乱をくぐりぬけ、卑弥呼は邪馬台国の王となる。盲目ながら気品と美しさを備えた女王に対して、周辺の国は並々ならぬ関心を寄せる。危い女王を全力で補佐する老将伊支馬の奮闘と異相の愛。そして卑弥呼の決断のときが来た。謎の王国と女王のありようを新しい視点で描き上げた、問題の秀作。
古代女権社会のエジプトで権勢を振るった美貌の女王・クレオパトラは、カエサルやアントニウスに近づき、ローマも手中におさめようと計る。が、男権社会の壁に敗北し、自ら朽ち果てた。書き下ろし長編。
響子は夜久村の山野を母胎に生まれ出て、自然児として育ち、人間本来の衝動のままに男と交わり、自然と感応して輝いている。子を生んでも結婚はせず、世間の常識や村の掟からはなれて自由に生きる響子は、その凶まがしさを力に心々の心をとらえ、事件をひき起こしては夜久村を揺り動かす-。性愛にも血縁にも縛られず奔放に生きた響子は、死によって生まれない以前の世界「不生」に至り、物語はその娘・風子を介して、「微笑」の世界へと回帰していく…。自然・エロス・生命、待望の四部作完結篇。
平安中期、匂うばかりの美しさで、五節の舞姫に選ばれた天女の生まれ変わり、空前絶後の美女。小野小町は仁明帝・東宮・在原業平・僧正遍照など男たちとの恋に懊悩しながら、情熱的な和歌の才をますます発揮し、六歌仙の一人となる。書き下ろし長編歴史ロマン。
不朽の名作『源氏物語』が生まれた動機・背景、舞台を再現。宣孝との不本意な結婚そして死別、義理の息子隆光との道ならぬ恋、時の権力者道長との不倫など、女文学者紫式部の知られざる人間模様を浮き彫り。書き下ろし歴史長編ロマン。
野や山を蝶のように遊び回っていた自然児の響子は、望まれて結婚したが、一年たらずであっさり家に帰ってしまい、いぜん、村の掟やタブー、血縁のきずなを蹴っ飛ばして、奔放にみずみずしく生きつづける。響子に女性の“原型”を透視する作者が、生れたままの女の、とらわれない愛のかたちを追求した神話的な長編現代小説。
平安女流文学を艶やかに彩った情熱の歌人、和泉式部は「高位高官を手玉にとる遊び女」「男を食べてしまう女人」と巷はかまびすしい。恋ごころ、歌ごころを兼ねそなえた自由な女の生涯を見事に描く書き下ろし歴史長編小説。