小説むすび | 著者 : 下山由美

著者 : 下山由美

男装のレディの片恋結婚男装のレディの片恋結婚

最愛の放蕩貴族との結婚。 それは、私の片恋を証明するだけの結婚。 家族に自由を奪われてきたソフィアはある夜、こっそり外出に成功した。 だが帰り道に何者かによって、見知らぬ屋敷へ連れ去られてしまう。 そこにいたのは、なんと彼女が密かに想いを寄せるワイアット卿! 彼は駆け落ちした妹を捜していて、ソフィアは人違いされたのだった。 そうと知った彼女はぜひ力になりたいと、彼と妹捜しを始める。 しかし行方がつかめないまま、宿を取らざるをえなくなった夜、 ワイアット卿からキスと抱擁を受け、ソフィアは思わずつぶやいた。 「愛しているわ」その瞬間、拒絶され、彼女の頬を涙がこぼれ落ちた。 このままでは、彼に置き去りにされてしまう……。意を決した彼女は、 翌朝まるで別人になったーー男装をし、長い髪をばっさり切り落として! ワイアット卿はソフィアが供も連れずに彼と二人で過ごしたことや、レディともあろう者が少年の格好をして彼と行動を共にしたことを考え、ある結論に達します。それは、名誉にかけて彼女と結婚することでした。愛する人と愛なき結婚などしたくないソフィアは……。

恋に落ちた騎士恋に落ちた騎士

結婚の“無効”を望む夫を、 愛してはいけないでしょうか……。 アンは珍しい色の瞳をした美しき騎士リースに王宮で声をかけられ、 見知らぬ男性とはいえ、その魅力に抗えず言葉を交わした。 すると、それを見咎めたアンの異母兄がリースを負傷させてしまう。 事態を収めようと国王が命じたのはなんと、アンとリースの結婚。 会ったばかりで夫婦になるなんて! でも、王に逆らうことはできない。 それに、アンにとっては暴君の異母兄から逃れられるだけでなく、 超然として堂々たるリースの妻になると思うと、胸が高鳴るのだった。 ところが、そんなアンの乙女心を知ってか知らずか、 二人きりになると、リースが思いがけない策を打ち明けた。 「結婚したあとでも、床入りしなければ、結婚を無効にできる」 ヒストリカル・ロマンスの大御所マーガレット・ムーアの秀作をお贈りします! 花嫁に提案した秘策を、弟たちや友人にも説明したリースですが、いざアンとの結婚生活が始まると、みずからが思いついた計画と欲望とのあいだで板挟みになり……。

謎めいた後見人謎めいた後見人

無慈悲な現実とかすかな希望。 不遇の乙女の小さな恋は……。 物心つく頃に母はなく、ずっと寄宿学校で暮らしてきた19歳のアン。 もうここを出ていくべき年齢だが、父もこの世を去り、行く当てがない。 なにせこれまでも、着る物にも困って施しを受けていたほどなのだ。 教師として母校に残るのが自分の生きる道だと思い始めたある日、 イアン・シンクレアと名乗る、上質のコートに身を包んだ貴族が現れた。 美貌の彼は、アンの父の遺言で彼女の後見人に指名されたのだという。 まあ、こんなすてきな方が、私を迎えに来てくれたなんて! アンの胸に、人生で初めて、淡い恋心が芽生えた。 だがイアンは彼女を社交界デビューさせ、ふさわしい花婿を探す役回りだ。 しかも、アンはまだ知らなかったーー彼が明日をも知れぬ命ということを。 どこか陰のある美しいイアンですが、じつはかつて胸に被弾したときの破片が心臓近くに残り、いつそれが災いするかもわからない運命にありました。謎めいた後見人に恋してしまったアンははたして幸せをつかめるのでしょうか? 劇的リージェンシー・ロマンス!

竪琴を奏でる騎士竪琴を奏でる騎士

修道院の窓から覗く外の世界は、 自由だと思っていたのに……。 13年ものあいだ、つらい修道院暮らしをしてきたエリザベスは、 おじがもたらした縁談に心躍らせると同時に不安を覚えた。 食事もろくに与えられず、鞭で叩かれる生活からは逃れたいが、 縁談相手のカークヒーズ卿レイモンは、誰からも恐れられる騎士だった。 しかも、本来嫁ぐはずだった美人のいとこが逃げ出したため、 身代わりに差し出される不器量な自分が受け入れられるかはわからない。 修道院に戻りたくない一心で、エリザベスは彼に懇願したーー よく働く貞淑な妻になります、愛人を持ちたいなら文句は言いません、と。 すると、感情の読み取れない顔で、レイモンがおじに告げた。 「この女と結婚することにした」 レイモンは悪夢のような結婚から、二度と女を愛するつもりはないのですが、跡継ぎをもうける手段を得ることは悪い話ではありませんでした。一方、修道院にいる間、男性を目にしたことすらなかったエリザベスは、彼に触れられただけで心臓が激しく打ち……。

罪なき誘惑罪なき誘惑

無垢な娘の罪なき誘惑は、 不幸せな結婚への序章……。 二十歳のルイーザは決意を胸にロンドンのとある屋敷へやってきた。 両親亡きあと、家督を継ぐはずの兄ジェームズは放蕩の限りを尽くし、 故郷にも戻らず、毎夜賭事をしては大金をすっている。 今すぐあの悪習を断たなければ、唯一残った館も人手に渡ってしまう。 だが時すでに遅く、兄は一世一代の大勝負に出ていた。 相手はカードの名手で社交界の重要人物、アリステア・ダンスタン卿。 案の定、勝負を制したアリステアはしかし、その後に大きな過ちを犯す。 ルイーザをジェームズの愛人と思いこみ、露骨に言い寄ったのだ。 無垢な彼女は館を守りたい一心で、捨て身の作戦に出た。 「4000ギニーいただけるなら、ひと晩、お相手を務めます」 頽廃の香り漂う18世紀ロンドン社交界。男は思ったーー誰の愛人だろうとかまわない、彼女が欲しい。女は思ったーー愛してもいない人に惹かれるって、こういうものなの? それぞれの思惑は外れ、事態は予期せぬ方向へ……。誤解と偏見が生む、愛の煩悶の物語。

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