著者 : 下山由美
最愛の放蕩貴族との結婚。 それは、私の片恋を証明するだけの結婚。 家族に自由を奪われてきたソフィアはある夜、こっそり外出に成功した。 だが帰り道に何者かによって、見知らぬ屋敷へ連れ去られてしまう。 そこにいたのは、なんと彼女が密かに想いを寄せるワイアット卿! 彼は駆け落ちした妹を捜していて、ソフィアは人違いされたのだった。 そうと知った彼女はぜひ力になりたいと、彼と妹捜しを始める。 しかし行方がつかめないまま、宿を取らざるをえなくなった夜、 ワイアット卿からキスと抱擁を受け、ソフィアは思わずつぶやいた。 「愛しているわ」その瞬間、拒絶され、彼女の頬を涙がこぼれ落ちた。 このままでは、彼に置き去りにされてしまう……。意を決した彼女は、 翌朝まるで別人になったーー男装をし、長い髪をばっさり切り落として! ワイアット卿はソフィアが供も連れずに彼と二人で過ごしたことや、レディともあろう者が少年の格好をして彼と行動を共にしたことを考え、ある結論に達します。それは、名誉にかけて彼女と結婚することでした。愛する人と愛なき結婚などしたくないソフィアは……。
亡き伯爵の遺言状が、今まさに読み上げられようとしている。後継者のジャックは、12年前に勘当されて行方知れず。莫大な遺産は、いったいだれが受け継ぐのか?ざわめく人々を、伯爵の養女キャスは部屋の片隅でそっと眺めていた。“スクラップ”-厄介者と親類に呼ばれる彼女は、今日で屋敷を追われる運命なのだ。そのとき、ひとりの男が現れて、全員が息をのんだ。ジャック…放蕩息子は生きていた。遺産も爵位も彼のものとなる。ところが、驚きはそれだけでは終わらなかったー新伯爵はいきなり、キャスに結婚を申し込んだのだ!
アンは珍しい色の瞳をした美しき騎士リースに王宮で声をかけられ、見知らぬ男性とはいえ、その魅力に抗えず言葉を交わした。すると、それを見咎めたアンの異母兄がリースを負傷させてしまう。事態を収めようと国王が命じたのはなんと、アンとリースの結婚。会ったばかりで夫婦になるなんて!でも、王に逆らうことはできない。それに、アンにとっては暴君の異母兄から逃れられるだけでなく、超然として堂々たるリースの妻になると思うと、胸が高鳴るのだった。ところが、そんなアンの乙女心を知ってか知らずか、二人きりになると、リースが思いがけない策を打ち明けた。「結婚したあとでも、床入りしなければ、結婚を無効にできる」
物心つく頃に母はなく、ずっと寄宿学校で暮らしてきた19歳のアン。もうここを出ていくべき年齢だが、父もこの世を去り、行く当てがない。なにせこれまでも、着る物にも困って施しを受けていたほどなのだ。教師として母校に残るのが自分の生きる道だと思い始めたある日、イアン・シンクレアと名乗る、上質のコートに身を包んだ貴族が現れた。美貌の彼は、アンの父の遺言で彼女の後見人に指名されたのだという。まあ、こんなすてきな方が、私を迎えに来てくれたなんて!アンの胸に、人生で初めて、淡い恋心が芽生えた。だがイアンは彼女を社交界デビューさせ、ふさわしい花婿を探す役回りだ。しかも、アンはまだ知らなかったー彼が明日をも知れぬ命ということを。
13年ものあいだ、つらい修道院暮らしをしてきたエリザベスは、おじがもたらした縁談に心躍らせると同時に不安を覚えた。食事もろくに与えられず、鞭で叩かれる生活からは逃れたいが、縁談相手のカークヒーズ卿レイモンは、誰からも恐れられる騎士だった。しかも、本来嫁ぐはずだった美人のいとこが逃げ出したため、身代わりに差し出される不器量な自分が受け入れられるかはわからない。修道院に戻りたくない一心で、エリザベスは彼に懇願したー。よく働く貞淑な妻になります、愛人を持ちたいなら文句は言いません、と。すると、感情の読み取れない顔で、レイモンがおじに告げた。「この女と結婚することにした」
伯爵は自ら傷を抱えたまま、 翼の折れた天使を拾った。 ロンドン社交界に名の通った賭博場の貴賓専用サロンーー そこで働くエリザベスを一目見て、デア伯爵の視線は釘付けになった。 どことなく気品の漂う美しい彼女は、その場に似つかわしくなく、 経営者のフランス人に利用され、明らかに虐待も受けているようだ。 良い育ちであろう彼女が、いったいなぜ身を落としたのか? 不遇の女性についてそんなことを考えるうちに、 デア伯爵はそのフランス人経営者と一対一の勝負に挑んでいた。 その日、運の女神を味方につけた伯爵は、相手の持ち金が底をつくや、 貴族にあるまじき言葉を口にした。「その女を賭けろ」 みなさまの熱いリクエストにお応えして、リージェンシーの名作がよみがえります。仲間を失ったばかりで失意のデア伯爵と、薄幸なエリザベスが主人公。彼女の苦難続きの人生は、伯爵との出会いで夜明けを迎えるのでしょうか? 波瀾万丈のシンデレラストーリー。
領主の姫君が、男爵の召使いに! 父の死を境に一転した乙女の運命ーー ガブリエラはドゲール男爵一行の到着を待っていた。 伯爵である父はひと月前に亡くなり、彼女には借金だけが残された。 城と領地は没収され、今日ドゲール男爵に明け渡すことになっている。 でも、消息不明でまだ父の死も知らない兄が戻るまで、 わたしはなんとしてもこの城に残りたい。 一縷の望みを胸に、彼女はやがて到着した男爵に願いを伝えた。 すると、噂にたがわず冷酷な彼は、情け容赦なく言い放った。 「ここを出ていくか、召使いとして城に残るかだ!」 あまりのことに色を失うが、行くあても金もないガブリエラは、 悲痛な思いで召使いになる道を選んだ……。 ヒストリカルの大御所マーガレット・ムーアの名作! “悪魔の申し子”の異名をとる傲慢男爵と、父が遺した城を守りたいと願うけなげな乙女の物語。愛情表現を知らない男爵に振り回され傷つくヒロインの運命やいかに?
無垢な娘の罪なき誘惑は、 不幸せな結婚への序章……。 二十歳のルイーザは決意を胸にロンドンのとある屋敷へやってきた。 両親亡きあと、家督を継ぐはずの兄ジェームズは放蕩の限りを尽くし、 故郷にも戻らず、毎夜賭事をしては大金をすっている。 今すぐあの悪習を断たなければ、唯一残った館も人手に渡ってしまう。 だが時すでに遅く、兄は一世一代の大勝負に出ていた。 相手はカードの名手で社交界の重要人物、アリステア・ダンスタン卿。 案の定、勝負を制したアリステアはしかし、その後に大きな過ちを犯す。 ルイーザをジェームズの愛人と思いこみ、露骨に言い寄ったのだ。 無垢な彼女は館を守りたい一心で、捨て身の作戦に出た。 「4000ギニーいただけるなら、ひと晩、お相手を務めます」 頽廃の香り漂う18世紀ロンドン社交界。男は思ったーー誰の愛人だろうとかまわない、彼女が欲しい。女は思ったーー愛してもいない人に惹かれるって、こういうものなの? それぞれの思惑は外れ、事態は予期せぬ方向へ……。誤解と偏見が生む、愛の煩悶の物語。