著者 : 中堂利夫
野心家の須藤恭介と、純朴そのものの津村良太は幼馴染みである。二十二歳で上京した良太はバーの経営者・山脇に傾倒し、一方の恭介は極道と接触し、傍若無人の渡世を送っていた。運命のいたずらか、恭介の会社が推す地上げ工作が山脇の許に及び、抵抗する山脇は暴力団による放火の犠牲となってしまう。正義感の強い良太は暴力団の一人を刺殺し服役することになる。その間、持ち前の運とずる賢さで着実に青年実業家としてのしあがっていく恭介は、金儲けに執着するあまり、次第に精神が蝕まれ、人間性を失っていく…。
一流製薬会社・津久田健薬の研究所主任が殺された。何人かの容疑者が挙げられる中、その内の一人で、被害者の直属の部下でもある村田信彦が忽然と姿を消した。信彦は逃亡先の村で、農業を営む美しい未亡人、幸子と出会う。お互いの素姓も知らぬまま深い仲となる二人。だが、信彦を執拗に追跡する刑事の手は、すぐそこまで迫っていた。再び逃亡の旅に出る信彦だが、彼の行く手には、樹海の奥に潜む妖しい欲望の罠が待ち受けていた。村人も近づこうとしない、その樹海が孕む真の姿とは?そして、信彦は犯人なのか…。
「日本にも石油が埋蔵している」という父親の学説を信じ、石油探しの放浪を続けていた友人が送ってきた“小包”を受け取った日から、村野信二は怪しげな男達につけ狙われ…。暴力団や謎の宗教団体などが動き出すほどの小包の秘密とはいったい何なのか!?闇の勢力が垣間見え、奇っ怪な事件が村野を追いつめる。長編伝奇ミステリー。
全国制覇を目指し神戸から関東に進出した西仁会の斬り込み隊長は石田だった。石田の強引なやり方で抵抗の旗頭だった新藤組は呆気なく壊滅させられたが、組員の一人・南郷清二は西仁会への復讐の炎を燃やしつづけた。麻薬取締官の赤城も西仁会に苦汁を飲まされた一人だった。この二人が偶然なことから邂逅し、共通の目標に歩調を共にすることを誓った時、やはり西仁会に縄術師の祖父を殺された孫娘の裕子が加わることになった。長編バイオレンス・アクション。
一流商社部長の愛人が誘拐された。内閣調査室の捜査官・黒岩は異例の命令を受け、女の捜索に着手、犯人を突き止める一方、同じく女を追う組織暴力団の存在を察知した。内調と暴力団、相反する巨大組織が、何故一女性の行方を?任務に疑問を抱いた黒岩は命令に背き、真相解明へひとり乗り出す。暴力団から商社部長への繋がりを辿り、事件の裏に、内調によるおそるべき計画が進行していることを知って黒岩は、自らの組織に闘いを挑むことを決意するが…。長篇ハードロマン。
一流商社に勤める戸田正彦は、沖縄旅行で知り合った安岡由美と結婚した。由美は秩父市の石材店の一人娘だったので、正彦は婿入りし社長になったが、偽装倒産の罪をきせられ自殺した。この陰謀の裏では、正彦の大学時代の友人、横尾富男が糸をひいていた。そして、正彦の死に関係した横尾を含めた三人の男が次々と謎の死を遂げる。疑念を抱いた正彦の友人である福岡県警の佐々木が事件の解明にあたるが…。復帰前の沖縄に端を発し、平成までの二十二年間にわたる野心と愛憎と友情とが交錯するサスペンスドラマ巨篇。
関東の地方都市で一人の女が絞殺された。県警の敏腕刑事・尾藤と加島は、精密機器会社の工員・大場を逮捕。だが大場は巧妙な手段で留置場を脱走し、尾藤の妻を殺害、失踪してしまった。その後、女性殺しの犯人は別人と判明、捜査は混乱に陥る。なぜ無実の大場が刑事の妻を殺したのか?真相を追う加島は、大場の勤務先〈プレジテント精工〉を探るうち、社内から国家を揺さぶる重要書類が紛失した事実と、それに係わる特殊工作員グループの存在を知る。しかも加島の行く手には警視庁公安部の妨害が…。巨大な謀略の渦に巻き込まれた男の不屈の闘いを描く長篇ハード・ロマン。
東京から京都を訪れた渡部悟・小田育美の若いカップルが、東山の将軍塚で若い女性の殺人死体を発見した。匿名で警察に通報したが、育美から贈られたイニシャル入りのライターを悟はその場所に落したことに気がついた。犯人と疑われることを恐れた二人は、自力で事件の解決にあたることを決意し、手始めに将軍塚にことを書いた論文を掲載したことのある「歴史散策」編集部を訪ねると、寄稿家の大学助教授・東野総一郎と出会い、三人で犯人探しをすることになった。その後、鳴動伝説のある吉備津、湯田中で若い女性の殺人事件が続発した…。
派闘争いに巻き込まれ、背任の濡衣を着せられて、大日本商事を辞めたエリートサラリーマン・谷沢。身の潔白を証明し、真相を究明する谷沢が、事件の鍵を握りながらも謎の失踪を遂げた元上司・佐々木の行方を追ううちに辿りついたのは、意外にも新興宗教団体〈浄霊九竜教〉の存在だった。しかも、調べを進めるにつれ教団の背後には麻薬とセックスを餌にした、とてつもない野望が浮び上ってきたのだ。谷沢は、教団本部に囚われているらしい佐々木の救出を決意。ひとり内部に潜入する。だが、そこで谷沢が眼にしたものは…。書下ろし長篇官能バイオレンス。
新宿のドヤをねぐらにしている加藤剛介は、探偵が本業だが、あまり仕事熱心とはいえない。その剛介に、もと美容師をしていた娘の行方を捜す、という仕事が舞いこんだ。早速、調査を開始すると、かつて同僚だったルミ子が剛介に好意以上のものを示し、アシスタント役を務めてくれた。調査が進むにつれ、美容師の単なる行方不明事件だけでなく、同僚が何人も死んでいることが判明し、背後には凶悪な犯罪が潜んでいる臭いがぷんぷんとしていた。剛介自身の生命も危機にさらされ、また警察からもマークされ、剛介は退くに退けぬ状況に追いつめられていった。大都会新宿を舞台に正義派の著者が渾身の力でペンを揮う書き下ろし長編バイオレンス。
東亜銀行社長・矢口大助の娘芳枝と結婚した前沢真一郎は、45歳にして常務の椅子に坐り、権勢をほしいままにしていた。が、矢口が病気で倒れ会長に退いてから、反矢口派の勢力が強まり、前沢はBクラスの丸信百貨店に追いやられてしまう。取締役とは言え、アパレル部門担当とあっては全くの畑違いで腕の揮いようがない。〈おれもずいぶん軽く見られたもんだ〉…自暴自棄になった前沢は義父の愛人・奈保子との情事に耽ったり、深酒をしたりの日々を過ごしていた。そんな前沢に、業界誌を主宰する工藤甚六が近づいてきた。ライバルの極栄デパートの不正を暴いて叩きのめし、前沢に手柄を立てさせたいというのだ。前沢は一瞬、躊躇ったが…!-紳士の仮面をつけた狼たちの陰謀!著者渾身の企業バイオレンス!