著者 : 中村保男
その古書を開いた者は跡形もなく消えてしまうーそう伝えられるとおりの奇怪な事件が起きる「古書の呪い」を始めとして、閉ざされた現場での奇妙な殺人の謎がこのうえなく鮮やかに解かれる傑作「“ブルー”氏の追跡」など、いずれもチェスタトン特有のユーモアと逆説にあふれた全9編を収録する。全編が傑作にして必読であるという、奇跡のような“ブラウン神父”シリーズ最終巻。
第四作品集に至っても驚異的なクオリティーを保ちつづける“ブラウン神父”シリーズ。容疑者の不可解な行為の謎と意外な真相「大法律家の鏡」、この世の出来事とは思えぬ状況で発生した金塊消失事件「飛び魚の歌」、常識を超えたユーモアと恐怖の底に必然的動機がひそむ「ヴォードリーの失踪」など全10編を収録。シリーズの精髄である逆説とトリックが冴える、逸品揃いの短編集。
名作揃いの“ブラウン神父”シリーズでも、特に傑作が集まっている第三集が、読みやすくなって新しいカバーでリニューアル!これを読まずしてブラウン神父は語れないほどの傑作「犬のお告げ」、チェスタトンならではの大胆で奇想天外な密室トリックが炸裂する「ムーン・クレサントの奇跡」など、珠玉の8編を収録する。ブラウン神父の魅力あふれる名推理をどうぞご堪能あれ!
逆説の論理の魔術師チェスタトンを代表する名シリーズの第二集。トリックの凄みでは、名作揃いの巨匠チェスタトン作品のなかでもトップクラスに位置する「通路の人影」、仮装舞踏会を舞台に神父の心理試験反対論を織りまぜた「機械のあやまち」など、いずれ劣らぬ名作12編を収録。とても名探偵とは思えない外見のブラウン神父が明かす奇妙な事件の真相は、読む者の度肝を抜く!
難破宇宙船から持ち帰った謎の生命体は妖艶な美女の姿をしていたー“彼女”を犯そうとした者は心を読まれ、生命エネルギーを吸い取られる。人体から人体に乗り移り、「殺人」を重ねる宇宙ヴァンパイアー。やがて明らかになる人類創世をめぐる壮大な宇宙ドラマとは…。英国の奇才コリン・ウィルソンによる異色のゴシック風スペース・ホラーを復刊!“村上柴田翻訳堂”シリーズ。
1913年、表面は平穏でもヨーロッパは戦争に向けて水面下で熾烈な駆け引きを操り返していた。なかでも、統一後いまだ政情が安定しないイタリアは危険な状態だった。外国の手に落ちている領土の奪回を求める急進派は、中央政府の思惑とは別に、様々な策をこらしていた…情報局にリクルートされて一年余、ランクリンとオギルロイはロンドンに戻り、新人教育や書類仕事で平穏に過ごしていた。だが、急進派のイタリア上院議員ファルコーネの警護を命じられたことで、平穏の日々は終わりを告げる。イタリアの失われた領土回復を叫ぶファルコーネは、軍のための兵器調達に飛び回っており、対立するセルビアやオーストリアに命を狙われているのだ。そんな彼が調達に躍起となっているのが、実用化されたばかりの飛行機だった。飛行技術の先進国であるイギリスに渡ってきたファルコーネを追い、危険な刺客も放たれているらしい。さっそくランクリンは一計を案じるが…激動止まぬヨーロッパを駆けめぐる、草創期のスパイたちの活躍。
ムーアたち特捜班は少年男娼斡旋所を監視下に置く一方、犯人割り出しに努めるが、犯人は捜査の網を潜り犯行を繰り返した。やがて特捜班は、死体の傷つけ方がインディアンの習慣を連想させることから、犯人はインディアンと接していた白人ではないかと容疑者を絞り込む…近代化以前のニューヨークを舞台に、プロファイリングの原型となる画期的な捜査方法を用いて異常殺人に挑む特捜班。話題の歴史サイコ・スリラー巨篇。
英国最大の避暑地ブライトン。光学器械店を営むモスクロップは、海岸でゼナという女性に一目惚れし、やがて彼女と近づきになる。ある朝、水族館で女性の片手が発見された。地元警察はスコットランド・ヤードに応援を求め、クリッブ部長刑事とサッカレイ巡査が駆けつけ捜査を開始する。一方、ゼナを見かけなくなったモスクロップは、彼女が殺されたのだと思い警察に赴くが…英国ミステリ界を代表する著者の初期の話題作。
双子の姉と暮らすミス・オイスター・ブラウンは、五十歳を迎える現在までいつも汚れなき生活を心がけてきた。ところが、姉の留守中に犯したささやかな犯罪をきっかけにオイスターは思いもかけない窮地に立たされることに…模範的市民の中年女性に降りかかった皮肉な運命を描く表題作をはじめ、ブラック・ユーモアや洒落た味わいなど短篇巧者ラヴゼイの魅力が堪能できる18篇を収録。『煙草屋の密室』に続く第二短篇集。
主婦リー・アデルマンのもとに、ある日、一枚の絵葉書がとどく。それは、かつての恋人ファウラーからのものだった。再会したファウラーはしかし、不治の病に冒されていた。死を間近にした恋人か、それとも家族か?リーの心は激しくゆれる…。
ハックルベリー・フィン以来の新しい少年像の誕生を予感させるピーター・ルロイ!!何時のことだったろうか、可愛い妖婦グリン姉妹のベッドにもぐり込んだのは-。豪邸ネヴスキー邸が焼失したことが唯一の大事件であるような、のどかな漁村。風変わりなグリン一家との交流-その中で、ちゃっかりとしたたかに成長してゆく少年ピーター。グリン姉妹との幼い性の芽生え-甦る少年の日の甘酸っぱくも、懐かしい冒険の数々…。
三月の寒い夜、《ニューヨーク・タイムズ》の記者ムーアは、友人の精神科医クライズラーからの使いに叩き起こされた。呼び出された先は凄惨な殺人現場で、殺されたのは少年男娼。特異な手口の同様の犯行が、過去に何件も起こっていることが判明した。時に1896年。ニューヨーク市警の総監に任命されたばかりの、のちのアメリカ大統領セオドア・ルーズヴェルトは、この連続殺人事件解決のため、画期的な特別捜査班を設置した。「あらゆる人間の行動は、幼時の経験に左右される」という革新的な理論を唱える精神科医クライズラーを長とし、マンハッタンの犯罪社会にくわしい記者ムーア、市警初の女性職員サラなど、異色のメンバーが集まった。心理学を捜査に応用するなど、「殺人者は生まれつきのものだ」と信じられている社会にあっては異端そのものだったが、彼らは少年男娼を血祭りにあげる犯人の生い立ちを犯罪現場から推理し、混沌とした世紀末における異常殺人者の実像に迫っていく。だが、ある謎の勢力が彼らの捜査に妨害の手を伸ばしてきた…。世紀末のニューヨークを舞台にリアリテイとイマジネーションをみごとに融合させた、心理学的プロファイリングの事始めともいうべきサイコ・スリラー。
パリを訪れた英国皇太子バーテイを、驚くべき知らせが待ち受けていた。長年の知りあいである伯爵家の娘の婚約者が、ムーラン・ルージュで衆人環視のなか射殺されたというのだ。やがて、娘に思いを寄せていた画家が容務者として浮かんだ。が、納得のいかないバーティは、旧知の女優サラ・ベルナールとともに、独自に調査を開始した。19世紀末の花の都に舞台を移し、英国ミステリ界きっての才人が贈る殿下シリーズ第三弾。
深い闇に包まれた夜の森の中で、忌わしき惨劇に見舞われた美しい少女ディー。それ以来、彼女の幼い心は、夜ごと訪れる悪夢に苛まれ続けていた。どこからか聞こえてくる“声”が「父親を殺せ」と囁くのだ。愛する娘の異変に気づいたブリーマーは、彼女の精神を支配しようとする邪悪な力と対決すべく、ついに銃を握ったが…。P・K・ディックの絶賛を浴びて登場した鬼才が、圧倒的な筆力で描破する恐怖と異常世界。
月曜日、イングランドでも有数の大邸宅で、一週間にわたる狩猟パーティーが始まろうとしていた。そんな矢先、招待客の一人の女優が、突然食卓に突っ伏し、息絶えた。しかも火曜日にはさらなる死体が飛び出し、そしてそのあとにも…館の女主人に招かれていたわれがパーティ殿下は、ここぞとばかりに名探偵ぶりを見せつけようとするが…。アガサ・クリスティーを思わせる設定で才人ラヴゼイが贈る殿下シリーズ第2弾。
殺人を犯したことは1度もない。だが自らの手で正義の裁きを行なったことはある。8年前のことだ。大叔母のエマが怯えきった声で、同居している妹夫婦が自分を精神病院に追いやり財産を奪おうと画策していると電話してきた。あわてて駆けつけた私が目にしたものは、なんと頭を吹き飛ばされた大叔母と床に転がる拳銃だった。妹は自殺だと主張したが…。女の冷酷な復讐劇を描くエリザベス・フェラーズの表題作をはじめピーター・ラヴゼイ、マイクル・Z・リューインら現代イギリス・ミステリ界を代表する気鋭9人がものした傑作書き下ろし短篇集。
ロンドンのビジネス街にあるささやかな煙草屋の二階に、切手商が間借りしていた。間借りといっても、切手商は週に二回しか部屋に来ず、しかも部屋には家具もカーテンも絨毯もなかった。ある日切手商のことを調べに刑事がやってきて、煙草屋の主人は俄然好寄心にかられた。切手商は、なんのために部屋を借りたのか。空っぽの部屋で何が行われているのか…築二百年を経た建物の意外な来歴が惹き起こした犯罪を描く表題作はじめ、ブラック・ユーモア、とぼけた味わい、あざやかなツイスト等、さまざまな趣好の逸品16篇を収録した初短篇集。