著者 : 中田耕治
観測台から見下ろしていた見学者たちを、突然の災厄が襲った。陽子ビーム加速器が暴走し、60億ヴォルトの陽子ビームが無秩序に放射され、一瞬で観測台を焼き尽くしたのだ!たまたまその場にいた8人は、台が消滅したためにチェンバーの床へと投げ出された。やがて見学者のひとり、ジャック・ハミルトンは、病院で意識を取り戻す。だがその世界は、彼の知る現実世界とは、ほんの少し違っていた…鬼才の幻の名品登場!
誰も深く愛することなく独りっきりで生きてきたアンジェラがようやく誠実な男ブルースターに巡り会った。「ああ、私の恋愛が始まるんだわ!」思いきってキスをしたのだが…。黒い残像を灼きつける表題作ほか、軽妙な味わいのミステリー・アンソロジー。
渦巻く欲望の名前をまだ知らない日、記憶に襞を刻むひとつの出来事が起こる。唐突に逝った姉の真実。レディの手袋とキスの取り引き。親切な老紳士の豹変。父への小さな復讐…。少女/少年たちは、夢の言葉をたずさえて大人になる。清冽な残響をのこす少女少年小説全10篇。
時は1902年初夏。新王エドワード7世の戴冠式を間近にひかえたロンドンは、奇怪な事件に震えあがった。巨大な魔犬が荒涼たるハムプステッド・ヒースで、浮浪者を襲ったという。あのバスカービルの犬の再来か?これにつづくクロムウェルの遺骨の発掘と盗難、フェリー内の中国人ボーイ殺害と、無関係に思える諸事件の裏に、ひとりシャーロック・ホームズは、邪悪な陰謀を見据えていた。ホームズの時代をあざやかに甦らせた会心作!
いまやフランスの支配者は民衆!あの貴族のやつらは国家の叛逆者なのだー。老若男女子供を問わず、ギロチンは連日犠牲者を追い求める…恐怖に駆られた貴族たちを救うべく、ドーヴァーの彼方イギリスから謎の秘密結社〈紅はこべ〉が神出鬼没の活動を展開する。果たして首領は何者?サスペンスとミステリー、恋と冒険と愛僧が渦まく、あの懐かしい古典ロマンの代表作。
雑誌〈コズモポリタン〉の仕事で、著者ホッチナーが世界的な文豪アーチスト・ヘミングウェイにはじめて会ったのは、1948年、ハバナのバー〈フロリディタ〉だつた。フローズン・ダイキリをしたたか飲み、2人の14年にわたるつき合いが始まった。メキシコ湾での釣り、パリはオートゥイユの競馬、そしてスペインの闘牛場めぐり…愉しい時が続いたが、それは1961年、ヘミングウェイの猟銃による自殺で終わりを告げたのだった。車中で、船上で、酒場で語られたヘミングウェイ自身の言葉をもとに、文豪の素顔と死にいたる日々を描いた衝撃の伝記。
熊と会話する方法を語り、自作の映画化作品をこきおろし、フイッツジェラルドやディートリッヒの思い出に笑う。ときには文学を志す者に真摯な助言をあたえ、また冒険と人生の意味を説く。“パパ”と呼ばれ、敬愛された彼の言葉は、いつも人を魅きつける力に溢れていた。しかし、アフリカでの2度の飛行機事故と、ノーベル賞の受賞騒ぎをさかいに、彼の身体と精神は徐々にバランスを崩していく。疑いと苛立ち。「もう書けない」という恐れ。入院。…弱さを背負った偉大な作家の生と死を、克明に、そして、かぎりない情愛をこめて浮彫りにする。