著者 : 乾緑郎
江戸市村座の桟敷席から謎の怪人物が恋着したのは、今を時めく名女形瀬川菊之丞だったー。芝居小屋の地下の闇奥で、永遠に燃える怨讐、狂恋、役者の業等々に身もだえする、平賀源内(戯作者)、市川團十郎(二代目)、深井志道軒(講釈師)、稲生武太夫(物の怪退治で名を馳せる)、江島(大奥御年寄)、生島新五郎(島流しになった役者)などの面々…。虚実皮膜のあわいを壮大に描き切った伝奇時代エンタメの極地!
独自の自然主義に染まった元医師・土岐周一郎と不倫相手の北郷咲良は、家族も仕事も擲って、沖縄の遙か南に位置する無人の“フリムン島”にやって来た。新たな人生の幕開けに高揚する二人はしかし、そこに先住者が潜むことを知らなかった。恋人を殺し逃亡の果て、島に辿り着いた苅部公則。警察沙汰を恐れる公則は、理想に囚われた無知な二人が来て早々いがみ合いを始めるのを見て、仕方なく助けの手を差し伸べた。正体を偽る公則と二人の奇妙な共棲はうまく運ぶかに見えた…。だが、土岐に感化された親子、島ごとVIP向け宿泊施設にする野望の女社長らが、相次いで上陸。やがて島は、人間のエゴと憎しみがぶつかり合う“愚か者の島”と化していくー。
彼女をそこから出してはいけないー老夫婦惨殺現場で保護された身元不明の少女、十九年前、ダムに沈んだ町を精密に描く天才画家、その絵に魅入られる女性フリーライター。三人が出会うとき、開くはずのなかった扉が開く。
慶安三年、町人の悪党集団「町奴」の頭領・幡随院長兵衛が何者かに殺された。対立する旗本の悪党集団「旗本奴」の頭領・水野十郎の仕業ではないかと疑う町奴側は報復を画策。お菊という女をめぐって両者の関係はさらにこじれ、楊枝屋の女侠客お吟、凄腕女剣士の佐々木累らを巻き込んで、全面抗争へと発展していく。一気読み必至の痛快時代小説!
将軍綱吉の世で鍼灸道を確立し御典医に名を連ねた検校・杉山和一。彼にはしかし、安眠を許さぬ三つの悪夢があった。仇敵と狙われての東海道。逃れても逃れても追手は迫る。そして辿りついたのは江の島弁天。この地が、ゆくりなくも鍼灸道の原点となった…。和一の夢に繰り返し現われる亡魂。その予言が一つまた一つと的中するたびに、和一は自らに問いかけた。お前はいったい何者なのだ、とー。
永禄四年九月十日、最強と言われた戦国大名同士が激突した。信玄率いる武田軍と謙信指揮する上杉軍の決戦だ。霧立ちこめる北信濃の要衝で、稀に見る高等な駆け引きが繰り広げられた。そのとき、付き従った武将たちの本心とは!戦国最強対決の「瞬間」に、七人の作家が参戦。大好評「決戦!」シリーズ第四弾!
「あなたは、どなた?」少年が彼女の冷たい体を抱きしめるとき、運命の歯車が廻り始めるー。1892年、万博開催を翌年に控え、空前の賑わいを見せる新世界大陸の都市・ゴダム。万博の利権を巡る人々の争いが繰り広げられる夜、パビリオン「十三層」の頂上で、機巧人形・伊武が永の眠りから目覚めた。機巧と人間。本当の“心”を持つ者は誰か?未曾有の世界に魂が震えるSF伝奇小説の傑作!
天正十一年四月二十日(一五八三年六月十日)。突如、砦を襲う鬼武者に神速の用兵で立ち向かうー。秀吉の天下と七本槍の英雄を生んだ、もう一つの「天下分け目」。七本槍、首獲り競争の顛末を見届けよ!荒ぶる若武者が駆ける、決戦!第7弾!
応仁の乱から始まった戦国の世に終止符が打たれようとしていた。慶長二十年五月、舞台は豊臣秀吉が築いた天下の名城・大坂城。淀君や豊臣秀頼はなぜ散ろうとしているのか。真田信繁ら、戦に巻き込まれた武将たちの生きざまとは。七人の作家が異なる視点から歴史を描く大好評「決戦!」シリーズ第二弾!
天府城に拠り国を支配する強大な幕府、女人にだけ帝位継承が許された天帝家。二つの巨大な勢力の狭間で揺れる都市・天府の片隅には、人知を超えた技術の結晶、美しき女の姿をした“伊武”が存在していた!天帝家を揺るがす秘密と、伊武誕生の謎。二つの歯車が回り始め、物語は未曾有の結末へと走りだすー。驚異的な想像力で築き上げられたSF伝奇小説の新たな歴史的傑作、ここに開幕!
東京・多摩地区在住のフリーター・甲田には認知症の母がいる。母の介護を口実に仕事を辞めたのに団地の自治会役員を押し付けられてしまう。住民の自分勝手なクレームに翻弄される毎日。遂に近くに住み着いたホームレスの男性を追い出せと言われ…(「団地の孤児」)マンモス団地に住み暮らす人々の日常と街の様相を描いた7つの連作短編集。この一冊には理屈を超えて、感情を揺さぶるパワーがある。
気鋭の劇作家内藤岳は、知己を得た世界的劇作家ヘルムート・ギジに師事するため、ドイツに渡った。ギジは冷戦時代、旧東ドイツで体制を批判するシェイクスピアの翻案作品で名を馳せていた。その彼が、三十年ぶりに『ロミオとジュリエット』の翻案『R/J』を執筆中というニュースは世界を驚かせ、原作と翻案が同時上演されることに。だが、新作の完成を待つ中で進む原作舞台の稽古中、女優が重傷を負う事故が発生。直後、ギジが新作原稿とともに姿を消した。岳はルームメイトで演劇研究家の桐山準と協力、ギジの足跡を辿り、やがて彼の経歴から消された闇を知ることに…。
慶長二十年五月(一六一五年六月)。秀吉が築きし天下の名城・大坂城ー。いまここに、戦国最後の大合戦が始まろうとしていた。乱世に終止符を打つのか、敗北すなわち滅亡か…。いざ、戦国最終決戦へ!七人の作家が参陣、競作シリーズ第2弾。
心に迷いを抱えた人を誘い込む、古い神社の鎮守の森。手を繋いでその丘を下りて行く三人の親子。団地の植え込みの木の間を走って行く、親指ほどの大きさの、背中に蝶の翅が生えた小さな女の子。平凡に見える、全ての人が何か不思議な物語を心に秘めている。注目の新鋭が紡ぐ、団地を巡る少し不思議で懐かしい物語。
俺の指先が、いつ機械仕掛けの人形に魂を吹き込んだのだろう。或いはあの瞬間、生身の女とすり替わったとでも!?ともかくこの色香、ただごとではない!-十三層の大楼閣に君臨するという噂の遊女・伊武。カラクリ千年の秘術を求めて彼女を追う、幕府配下の機巧師・久蔵。遷宮と幕府転覆計画が絡み合う中、魂の歯車たちが狂乱する!異形の本格ミステリー。
尼子家再興を目指す山中鹿之介の前に、お国という謎の少女が現れる。お国は脈がなく心の臓も動かない。鹿之介の少年時代にも瓜二つの少女に会った記憶があるが、すでに十数年も前だ。一方、敵方・毛利家から遣わされた奇怪な忍法を操る鉢屋衆が出現、鹿之介ら尼子残党に襲いかかる。絶体絶命の鹿之介たちを助けたのは風魔の女忍び井筒。井筒は、年を取らぬお国の正体と鉢屋衆の恐るべき目的を語り始めるが…。