著者 : 井沢元彦
「娘さん、あんたには高貴な方の霊がついておる、闇の中の帝王が」みずきを見るなり高名な霊能者は叫んだ。見知らぬ土地の松の下に埋められたドクロが呼んでいる、みずきはそんな悪夢に毎晩うなされていたのだ。真偽を確めるべくドクロ探しに出掛けて驚いた、実際にそれはあったのだ。しかし警察は待っていたかの様に動き出しみずきを逮捕。五百年の時空を超えたドクロが暴く現代の殺人事件トリックとは?
おれは司門貘、由緒正しい神宮の家の出だが奇妙な能力を授かって生れたらしい。激しい頭痛と共に悪夢が続くのだ、それも決って悶え苦しむ女の姿だ。どうやら無残に殺された女が、おれに事件の解明と報復を求めてるようだ。だが見ず知らずの女なんてどうやって見つけ出すんだ?富豪の女子大生を助手に、死んだ女を探し歩く異色ミステリー。
徳川家康の妻が、子を生んだ。今川義元の人質だった幼少のころに、家康は子種を絶たれており、生まれるはずのない子だった。しかも、妻は義元の情人だったことがある、という噂も囁かれているー家康のわが子への憎しみは、年月とともに大きく膨れあがり、遂には、見事な若武者に育った信康を自刃に追い込むのだが…。戦国の世に生きる、権力者たちの不安と苦悩を描く7編。
不動産業で財を成した大沢円次郎の長女良江は、夫・英夫との第二のハネムーンで何者かに殺害された。英夫は愛人をつくって円次郎の不興を買っており、この旅行はその改心の証しだった。犯人は良江の死体を車に積んだまま事故死した元愛人と見られたが、良江の妹・沙織は不審を抱き、大学の同級生・飛田雄介とともに事件解明に乗り出し、英夫のアリバイ崩しに挑むのだが…。長篇トラベル・ミステリー。
永源寺峻の留守番電話に、先輩とも師匠ともいうべき楽田総一郎から「緊急の用件で会いたい」とメッセージが入っていた。青山の楽田宅を訪れると、そこには胸に深々とナイフをつきたてられた楽田の死体があった。楽田の葬儀の日、峻は突然、ツッパリ少女に声をかけられた。依頼は天才画賀シャトーブリアンの傑作「マダム・ロスタンの肖像」を見つけてほしいというものだった。その絵を楽田はどこかに隠したらしい。隠し場所のヒントを娘に遺していた。それはまさしく暗号ー松本清張の『点と線』の初版本に、すべてあり、解く鍵は三つ。スタジアム、十メートル下、ガンジン。-永源寺峻は必死に推理した。そして解けた答は意外にも…。乱歩賞作家が綴るミステリ・ファイル。
甲斐の若き猛虎・武田晴信(信玄)の運命は、隻眼の男・山本勘助を知行百貫で召し寄せた時から開かれていった-。諏訪頼重を討ち、宿願だった諏訪を押さえ、父信虎ですら果たし得なかった信濃経略への大きな一歩を踏みだした晴信。これはすべて、軍法にたけた城取りの名人・勘助の武略によるものだった。信濃の一角に武田領を作った晴信は勘助が描く「絵」によって、天下取りの目標を定めていく。「武田幕府を開く!」という野望を秘めた晴信と勘助の戦略をうたいあげる時代大長編。
第1回の新文学ホープ賞が17歳の朝倉奈美子の「ロスト・ラブ」に決定。文壇は久々の大型女流新人の登場で沸いた。ところが評論家の大御所・安本寅太郎が当選作は大正時代の寡作な作家の盗作だと公表した。衝撃で奈美子は急死、父親も自殺する。この悲劇の陰には残酷な陰謀が…。ほかに迫真の傑作7編を収録!
頭が痛む。また、悶え苦しむ女が浮かぶ。叫んでいる、のたうっているではないか!女は全裸で…どうしたんだ?おれは声をかけた。女の出る悪夢と頭痛、これは明確に、あることのきざしである。助けてやらねばならない。が、そのまま目覚めずに、おれは奈落の底に落ちたように意識を失った。予知夢というのだそうだ。不可思議な能力を、おれは授かったものだ。京都の、由緒正しい神官の家に伝わる、その能力が、貧しい、駆け出しの役者のおれを、つき動かす。そしておれは「死にたくなかった女たち」の、その艶かしい軌跡にのめり込んで行き、事件を解明する。-乱歩賞受賞作家が、富豪の女を脇役に、奇妙な行動で探偵役を操る、ひと味ちがった連作長編ミステリー!