著者 : 井沢元彦
永源寺峻の留守番電話に、先輩とも師匠ともいうべき楽田総一郎から「緊急の用件で会いたい」とメッセージが入っていた。青山の楽田宅を訪れると、そこには胸に深々とナイフをつきたてられた楽田の死体があった。楽田の葬儀の日、峻は突然、ツッパリ少女に声をかけられた。依頼は天才画賀シャトーブリアンの傑作「マダム・ロスタンの肖像」を見つけてほしいというものだった。その絵を楽田はどこかに隠したらしい。隠し場所のヒントを娘に遺していた。それはまさしく暗号ー松本清張の『点と線』の初版本に、すべてあり、解く鍵は三つ。スタジアム、十メートル下、ガンジン。-永源寺峻は必死に推理した。そして解けた答は意外にも…。乱歩賞作家が綴るミステリ・ファイル。
甲斐の若き猛虎・武田晴信(信玄)の運命は、隻眼の男・山本勘助を知行百貫で召し寄せた時から開かれていった-。諏訪頼重を討ち、宿願だった諏訪を押さえ、父信虎ですら果たし得なかった信濃経略への大きな一歩を踏みだした晴信。これはすべて、軍法にたけた城取りの名人・勘助の武略によるものだった。信濃の一角に武田領を作った晴信は勘助が描く「絵」によって、天下取りの目標を定めていく。「武田幕府を開く!」という野望を秘めた晴信と勘助の戦略をうたいあげる時代大長編。
第1回の新文学ホープ賞が17歳の朝倉奈美子の「ロスト・ラブ」に決定。文壇は久々の大型女流新人の登場で沸いた。ところが評論家の大御所・安本寅太郎が当選作は大正時代の寡作な作家の盗作だと公表した。衝撃で奈美子は急死、父親も自殺する。この悲劇の陰には残酷な陰謀が…。ほかに迫真の傑作7編を収録!
頭が痛む。また、悶え苦しむ女が浮かぶ。叫んでいる、のたうっているではないか!女は全裸で…どうしたんだ?おれは声をかけた。女の出る悪夢と頭痛、これは明確に、あることのきざしである。助けてやらねばならない。が、そのまま目覚めずに、おれは奈落の底に落ちたように意識を失った。予知夢というのだそうだ。不可思議な能力を、おれは授かったものだ。京都の、由緒正しい神官の家に伝わる、その能力が、貧しい、駆け出しの役者のおれを、つき動かす。そしておれは「死にたくなかった女たち」の、その艶かしい軌跡にのめり込んで行き、事件を解明する。-乱歩賞受賞作家が、富豪の女を脇役に、奇妙な行動で探偵役を操る、ひと味ちがった連作長編ミステリー!