著者 : 井辻朱美
夢の中で訪れることのできる街パリンプセストに魅せられた四人の男女。彼らは肌にパリンプセストの地図を持つ相手と次々に体を重ね、眠りの中で街を歩く。失われたものを取り戻せる街パリンプセストでは、鮫頭の将軍を打ち負かし勝者となった女カシミラが移住者を求めていた。何度か夢で訪れるうちに四人の男女は次第にパリンプセストに永住したいと願うようになるが…。ミソピーイク賞、アンドレ・ノートン賞作家がおくる、幻想と夢が交錯する摩訶不思議な物語。
皇女の婚礼の準備が進む“庭園”で、瞼に書かれた物語はふたたび始まる「飢えた王の物語」「蜥蜴の教訓の物語」「シナモンの靴の物語」…そしてすべての物語は収束し、驚異の結末を迎える奇書のなかの奇書。果てしなき『千一夜物語』。ミソピーイク賞受賞。
シルヴァーーエレクトロニック・メタルズ社が試作した人間そっくりのロボット。とび色の瞳に赤褐色の髪、銀色の膚をしたシルヴァーはギターをつまびき、ありとあらゆる歌をかなでる。ひとびとは心を揺さぶるその歌をきそって聞きたがった。だが、たったひとつエレクトロニック・メタルズ社にとって誤算が生じた。シルヴァーに恋する少女が現われたのだ!物語の名手が紡ぎだす、少女とアンドロイドとのSFラブロマンス。
おのれの出自を求める旅の途上でナズュレットがヴェロンニャ国王の命を救ってから五年。彼は、アーリンと名乗り男装して行動を共にしていた幼なじみの男爵令嬢と結ばれ、人里離れた庵でひっそりと暮らしていた。そんなある日、五人の刺客が庵を襲った。ナズュレットを貴族の落胤と知って、その存在を邪魔に思った者が送りこんだらしい。ナズュレットとアーリンは刺客の送り手と対決すべく旅立ったが…。三部作第二弾。
ゴブリンとあだなされる孤児ナズュレット。彼は4歳のときからヴェロンニャ王立全寮制男子校で過ごしてきたが、19歳の秋、独り立ちするために学校をあとにした。旅の途中で奇妙な建物に迷いこんだナズュレットは、そこで出会った魔法使いとおぼしき男ポウルに見込まれて弟子入りすることになった。その出会いが運命を変えるとも知らずに…。長じてヴェロンニャ国王の右腕となるナズュレットの波乱の生涯を描く3部作開幕。
都で1、2を争う腕を誇る美貌の剣士、リチャード・セント・ヴァイヤー。暗殺請け負いをなりわいにしている彼は、愛人の美青年アレクとともに気ままな暮らしを送っていた。そんなある日、政敵を追い落として権力を握ろうと図る大物貴族から仕事の依頼が舞いこんだ。そのときから、リチャードの運命はすこしずつ狂いはじめた…。剣に生きる男の恋と波乱の生涯を華麗に描く、アメリカ・ファンタジイ界期待の新鋭の傑作長篇。
白い肌、白い髪、紅い瞳の魔法少年エンジェル。彼は巡回奇人一座と一緒にやってきて、平凡なホーリイの夏をめくるめく興奮と恐怖のうずに巻き込んだ。エンジェルを意のままにあやつるハーヴァーストック、小人のティム、半獣人ミノタウロス、幻想と現実のはざまに棲む者たちーアメリカの知られざる幻想作家トム・リーミイが、ブラッドベリにも似た透明で美しい世界を織りあげた、ファンタジーの傑作。
その昔、類まれな美貌と比類なき詩歌の才を授かった詩人がいた。その名はトーマス。ある日、彼は白馬に乗った美しい貴婦人と出会った。その正体は、トーマスに惹かれてやってきた妖精の女王だった。女王は、7年間愛人として仕えることを条件にトーマスをエルフランドルに連れてゆくが…。〈まことのトーマス〉と呼ばれた伝説の吟遊詩人の波乱に富んだ生涯をあざやかに謳いあげ、1991年度世界幻想文学大賞に輝いた珠玉作。
十字軍遠征のため、騎士トヴィウス卿は南へと旅立った。留守を守るのは、奥方と幼い息子。好奇心あふれる年頃の少年は、禁じられている森へ入り、初代トヴィウス卿が悪漢を処刑した〈首くくりの木〉を七頭竜にみたて切りかかった。触れてはならない木を切った少年は、魔物に連れさられ、魔王の城にとじ込められてしまったが…。本格ファンタジイの名手が中世ヨーロッパを舞台に描く、魔法と恋と冒険にみちた書き下し長篇。