著者 : 今日泊亜蘭
日本SFの黎明期にいちはやく長編『光の塔』を発表し、その後も無尽の博識と自在な語り口で存在感を示した天才作家。奇妙な発端が思いもよらぬ規模の展開を見せる作品群の中でも「縹渺譚」「深森譚」の連作は白眉。片田舎の孤児が思い出の女性との再会を求めさすらう物語は、著者の空前の演出のもと、忘れがたい感動をもたらす。代表的作品集を合冊し、書籍初収録作2編を加えた。
宇宙軍医官の水原は火星から帰航中に謎の閃光と遭遇する。一方地球ではあらゆる電気が一斉に機能を停止する“絶電現象”が起きていた。ふたつの現象に関連を見出した水原と宇宙省の人々は調査をはじめるが、事態は「光」を操る謎の侵略者による人類への壮絶な攻撃に発展するのだった。緻密な構成と魅力的な登場人物で圧倒的な面白さを誇る、日本SFの記念碑的傑作。
木星に探査に向かったきり帰らぬ友人を追って火星から天空船で飛び立った青年は、彼の星で驚くべき事態に遭遇する(「空族館」)。第一短篇集『最終戦争』に、未発表作「空族館」と1960年代から70年代にかけて雑誌に掲載された単行本未収録短篇14作を増補。日本SFに多大な影響を与えた伝説的作家の想像力を堪能できる、文庫オリジナルのアンソロジー。
2139年「脳髄共和国」は、人類が全ての武力を破棄しなければ地球を破壊すると宣言したー22世紀の科学者たちが真の平和を求めて設立した脳髄共和国は20年の歳月ののち巨大な力をもった超国家となって月面に甦った。脅迫を肯んじない地球政府は必死の探索を続けたが、期限まで半年となった今も、その本部を特定できない。ついに国際刑事・中山弓ノ助が、共和国の計画を阻止すべく月に飛んだ。空前絶後の月世界冒険活劇。
地球を脅かす「脳髄共和国」の活動阻止の任を受け、単身月へ赴いた国際刑事の中山弓ノ助は、月面に残された手がかりを探るうちに、さまざまな味方を得る。月背面の探索に向かう彼らに同行した中山は、共和国の妨害をはねのけ、苦難の末、敵本拠地に潜入することに成功したのだが、そこで彼らが見た共和国の正体は驚くべきものだった。-月世界に繰り広げられる胸躍る冒険を、著者ならではの絶妙な語り口でえがくSF巨篇。
22世紀、世界中の学者、芸術家たちが、地球政府の軍国主義、商業主義などに反対し、真の平和を求めて月に成立させた〈脳髄共和国〉。だが、その指導者を暗殺されたことにより活動は停止した。-そして20年の歳月をへたのち、1年以内に地球政府が地球、月及び火星に有する兵器ならびにその生産設備などを破棄しなければ、地球を攻撃するといきなり通告してきた。地球政府の必死の探索にかかわらず、〈脳髄共和国〉の所在は知れない。
地球を脅かす〈脳髄共和国〉の所在は杳として知れない。地球政府の国際刑事・中山は〈脳髄共和国〉発見と破壊の任を受け、月へと赴いたが…。ふとしたことから、敵側の女性地質学者、ジュディース・ラーソンと恋仲となる。ジュディースの話から〈脳髄共和国〉も内部で2つに分裂していることを知った中山だったが-。日本SF界最長老が、月を舞台に、国際刑事の胸躍る恋と冒険に満ちた物語を壮大なスケールで描く一大ロマン巨篇。
冥王星ドーム基地へ、半年に1度、故郷からの郵便物を運んでくる郵送艇。だが衛星ケルベルスが引き起こす嵐のため、ドーム脇に着陸した郵送艇は大破した。命がけで郵便物を守った男は…。「ケルベルスの嵐」、小惑星帯の鉱脈でひと山あてようと、違法採掘を始めた宇宙兵くずれと、僻外星界を布教活動している伝道者に偽装した宇宙警察の女刑事との軽妙なやりとりを描く「天女と羽衣」など、太陽系第3惑星地球を飛びたち、兵士として、またはやむなき事情により小惑星以遠の外惑星へ流れついた男女の哀歓を絶妙な筆致で描きあげた連作短篇集。