著者 : 伊坂奈々
ジェシカは昼間の仕事に加え、毎晩オフィス清掃をしている。 唯一の楽しみは、その会社の“美しい彼”を見ること。 シチリアの名門カルディーニ一族を率いる大富豪、サルヴァトーレだ。 尊大だが魅力あふれる彼に、ロンドン中の女性が熱をあげている。 洗練された美貌の独身貴族と、なんの取り柄もない自分……。 ふたりの間に愛なんて芽生えるはずがないのは承知の上だった。 そんなある日、彼からパーティに誘われ、ジェシカは舞い上がった。 さらに思いがけずベッドまでともにし、夢見心地になったのもつかのま、 サルヴァトーレは事もなげに傲然と言い放った! 「いつかシチリアに戻り、地元の無垢な娘と結婚すると決めているんだ」 サルヴァトーレは望まぬ結婚話を無にすべく、清掃員のジェシカを恋人に仕立てようとしますーー平々凡々な彼女なら、大富豪の自分と結婚しようなどと思わないだろうと考えて。ところがある夜、月の光を浴びたジェシカが、彼の目に妙に魅惑的に映り、思わず……。
唯一無二の作家ベティ・ニールズの名作短篇、ヒーローのかっこよさに定評のあるサラ・モーガン作品の初リバイバルなど、知的で魅力的なドクターが繰り広げる恋物語を3篇収録したアンソロジー!
ナースのブリタニアが働く病院に、優秀なオランダ人外科医、ファン・ティーン教授が高度な手術を行うためにやってきた。年上の品格漂う彼を見て、ブリタニアは直感した。この人と結婚する、と。彼のことなど何も知らないのに、なぜか胸のときめきがそう感じさせた。だがほどなく、教授は帰国してしまった。また彼に逢いたい…。そこでブリタニアは、休暇でオランダへ行く同僚に同行することにする。旅を楽しもうと自転車で散策中に、傷ついた小鳥を見つけて拾った瞬間、立派なロールス・ロイスが、ブリタニアの目と鼻の先で急停車した。中から現れたのはなんと、ファン・ティーン教授!「君は大ばかだ」彼は冷たく言い放って小鳥を預かると、彼女を置いて、走り去ったー
アリスはコーンウォールの漁村にある小さな診療所の医師だ。ある日、村の不良少年たちに絡まれてしまったアリスは、ハンサムでたくましい、イタリア系の男性に助けられる。それがジョヴァンニ・モレッティージオとの出会いだった。その年の夏、アリスの同僚が恋人とバカンスに出かけるあいだ、代わりに来てくれることになった元外科医だという。ひょんな手違いからジオはアリスの家に下宿することになり、職場でも家でも一緒という、気まずい夏が始まった。なぜなら、ジオは完璧すぎるのだ。腕の立つ医者で、優しくて、セクシー。アリスは初めて覚える胸のときめきに、とまどいを隠せず…。
鉄道王の一人娘エレンは物憂い日々を送っていた。自分でも不器量だとわかっているのに、父親の財産目当てに求婚してくる男は後をたたず、辟易する毎日。そんなおり、父とともに避暑地を訪れたエレンは、長身痩躯でハンサムな牧場主ジョンに出会う。災難に見舞われて困っているところを彼に助けられ、エレンはジョンにほのかな想いを抱くように。この人は他の男性とは違うわーだがそう思ったのも束の間、父親の鉄道事業の支援が欲しいからとジョンに便宜結婚を申し込まれ…。D・パーマー『運命を紡ぐ花嫁』他収録、豪華短編集。