著者 : 佐藤泰志
「彼は憎しみでも怒りでも何でもいい、身体に満ちることを願った。…大きなハードルも小さなハードルも、次々と乗り越えてみせる」危機をひたむきに乗り越えようとする主人公と家族を描く表題作をはじめ八〇年代に書き継がれた「秀雄もの」と呼ばれる私小説的連作を中心に編まれた没後の作品集。最後まで生の輝きを求めつづけた作家・佐藤泰志の核心と魅力をあざやかにしめす。
郊外の書店で働く「僕」といっしょに住む静雄、そして佐知子の悲しい痛みにみちた夏の終わり…世界に押しつぶされないために真摯に生きる若者たちを描く青春小説の名作。読者の支持によって復活した作家・佐藤泰志の本格的な文壇デビュー作であり、芥川賞の候補となった初期の代表作。珠玉の名品「草の響き」併録。
復活した悲運の作家、幻のデビュー作。 『海炭市叙景』で奇跡的な復活を果たした悲運の作家、佐藤泰志のデビュー作が文庫化。山羊、栗鼠、兎、アヒル、モルモット…。バスに動物たちを乗せ、幼稚園を巡回する「移動動物園」。スタッフは中年の園長、二十歳の達夫、達夫の三つ上の道子。「恋ヶ窪」の暑い夏の中で、達夫は動物たちに囲まれて働き、乾き、欲望する。青春の熱さと虚無感をみずみずしく描く短篇。他に、マンション管理人の青年と、そこにするエジプト人家族の交流を描く「空の青み」、機械梱包工場に働く青年の労働と恋愛を描写した「水晶の腕」を収録。作者が最も得意とした「青春労働小説」集。 【編集担当からのおすすめ情報】 『海炭市叙景』に次ぐ佐藤泰志文庫化プロジェクト第二弾。この後も、佐藤泰志作品が文庫化される予定です。 移動動物園 空の青み 水晶の腕 解説:岡崎武志
北の夏、海辺の街で男はバラックにすむ女に出会った。二人がひきうけなければならない試練とはーにがさと痛みの彼方に生の輝きをみつめつづけながら生き急いだ作家・佐藤泰志がのこした唯一の長篇小説にして代表作。青春の夢と残酷を結晶させた伝説的名作が二〇年をへて甦る。
小さな動物をバスにのせて子供たちを訪ねる「移動動物園」。そこで働く二人の若い男女。じりじりと暑い“恋ヶ窪”の夏。懐しい土の匂いと草いきれ…。青春のただ中にいる者だけが知る気負いと絶望、熱情と虚無感を余すところなく書き続け、自ら死を選んだ著者の処女作ほか二作を収録。青春の苦悩と歓喜を鮮かに描いた小説集。