著者 : 北村薫
映画、演劇、父との記憶ー魅惑の創作世界の謎を探り行く。本との出会いを人生の時間と重ねて綴る9篇の連作小説集。泉鏡花文学賞受賞作『水 本の小説』に続く独自の“ものがたり”
本と日常の謎はコタツ探偵におまかせ!消えた映画の名台詞はどこへ?あの傑作の名付け親は誰?原作料だけもらった大作家?教師の父と編集者の娘の“名探偵コンビ”シリーズ。
小さな謎は大切なことへの道しるべ。解いてみると一筋縄ではいかない人の心が照らし出される。学生時代に届いた想い出の葉書には、姉のように慕っていた先輩が遺した謎めいたアルファベットの羅列があった。数十年の時を経て読み解かれたとき、現れたものとはー。表題作のほか、宇宙人たちが日本の名著を読むユーモア作「解釈」、乱歩へのオマージュ「続・二銭銅貨」など、ミステリの名手が贈るバラエティに富んだ謎解き7篇。
天国的な美貌を持つご令嬢・新妻千秋のもう一つの顔は、覆面作家。お嬢様の推理力が光るのは、小説の中だけじゃない。心霊写真に隠された秘密の思い出、断崖絶壁を走る車に仕掛けられた罠、ドールハウスに残された小さなダイイング・メッセージ。担当編集者・岡部良介にはお手上げの謎もなんのその、お嬢様は鮮やかに真実に迫る。2人の距離も次第に縮まってー?イラスト入り完全保存版で贈る“覆面作家”シリーズ、完結編!
若手編集者の岡部良介が担当する覆面作家こと新妻千秋の正体は、天国的な美貌を持つ可憐な大富豪のご令嬢。だが、一歩外に出ると様子が一変。日常に潜む事件をたちまち見抜くもう一つの顔を持っている。禅寺に消えた菓子職人の秘密、ラブレターと血液型の謎、シェークスピアと愛にまつわる殺人事件…。名推理を披露するお嬢様探偵の身に危険が迫るー!?ミステリの名手による傑作シリーズ、完全保存版の第2弾!
19歳でデビューした覆面作家の正体は、大富豪のご令嬢・新妻千秋。天国的な美貌と明晰な頭脳の持ち主、さらに可憐な性格ーと思った担当編集者の岡部良介だったが、ある事件の話をしたことからお壌様の意外すぎる顔を知ることに!殺人現場から消えたプレゼント、あっけなく解決し女児誘拐事件、警報は鳴るのに品物が消える万引き…2人を取りまく謎は鮮やかに解き明かされる。名作ミステリ、挿絵収録の完全保存版!
一千万円を持つ女のもとへ、詐欺の電話がかかってきた。女はどうする?干支十二支が五回めぐって還暦を迎え、生まれた年と同じになるとどうなる?花のお江戸の居酒屋の、看板娘の失われた記憶に何が眠る?グアムで発見された世界的名画が、価値以上の数奇な運命をたどる…。自己破産を狙う女美容師が、なぜか大金を拾った話を始めた…。「銘探偵」が要注目、死者がキャップを閉じたマジックインキを握る理由とは?六つのどんでん返しが、あなたを驚かす。
新迷探偵コンビ登場!? 文芸編集者の娘と高校国語教師の父が、出版社の「日常の謎」に挑む! 主人公は大手出版社「文宝出版」に勤める田川美希。女性誌から晴れて希望の文芸部門への配属がかなうと、大学時代までバスケットボール部で鍛えたバイタリティを活かし、仕事に燃える毎日だ。 ある日、文宝推理新人賞の最終候補を決める会議で、有力な候補作品「夢の風車」の担当となった美希は、その候補者へお知らせの電話をかけた。が、まさかの返事を聞くことになる。「--応募していませんよ、私は」、と。一昨年までは新人賞へ投稿していた候補者の男性だが、まったく芽が出ずに今回は応募をしていないというのだ。 何とかこの作品を世に送り出したいと願う美希は、さまざまな可能性を探るが、どこからこの原稿が届いたのかまるで見当がつかない。ふと、父親にことの顛末を話してみようと思ったのは、高校教師をしている父は最近、ずいぶんお腹は出てきたものの百科事典タイプの人間で、インターネットで分からなかった疑問を解決してくれたりもする。相談役として誠に便利な存在だからだ。娘の相談にお父さんが導き出した真実とは果たして? 大作家同士の手紙、スケッチを映した写真、落語の解釈、マラソン大会でのハプニングなど、中野の実家に住む父は抜群の知的推理で謎を次々に解き明かす。 「日常の謎」の名手が、自らのフィールドを最大限に楽しみつつ、新たに送り出したユーモアとけれん味たっぷりの名探偵シリーズ。 解説・佐藤夕子 夢の風車 幻の追伸 鏡の世界 闇の吉原 冬の走者 謎の献本 茶の痕跡 数の魔術 解説・佐藤夕子
昭和八年。ドイツでは年の初めにヒトラー内閣が成立。日本は三月に国際連盟を脱退した。その三月には、東北三陸地方を、想像を絶する大地震が襲った。昨日から今日、そして明日も続くように見える穏やかな日常も、実はたやすく奪われるものだった。この年、父は慶應義塾大学を卒業した。
昭和4年。著者の父・宮本演彦は慶應の予科に通い、さらに本科に進む。教壇に立つのは西脇順三郎や折口信夫。またたびたび訪れた歌舞伎座の舞台には、十五代目羽左衛門、五代目福助が…。父が遺した日記は、時代の波の中に浮かんでは消えていく伝説の人々の姿を捉えていた。“本の達人”が描く小さな昭和史。著者のライフワーク3部作第2巻。
みさき書房の編集者として新潮社を訪ねた《私》は新潮文庫の復刻を手に取り、巻末の刊行案内に「ピエルロチ」の名を見つけた。たちまち連想が連想を呼ぶ。卒論のテーマだった芥川と菊池寛、芥川の「舞踏会」を評する江藤淳と三島由紀夫……本から本へ、《私》の探求はとどまるところを知らない。太宰が愛用した辞書は何だったのかと遠方にも足を延ばす。そのゆくたてに耳を傾けてくれる噺家。そう、やはり「円紫さんのおかげで、本の旅が続けられる」のだ……。《円紫さんと私》シリーズ最新刊、文庫化。
雑誌の副編集長をしている「わたし」。柄に合わない上司と部下の調整役、パートナーや友人との別れ…日々の出来事に心を擦り減らしていた時、山の魅力に出会った。四季折々の美しさ、恐ろしさ、人との一期一会。一人で黙々と足を動かす時間。山登りは、わたしの心を開いてくれる。そんなある日、わたしは思いがけない知らせを耳にして…。日常の困難と向き合う勇気をくれる、山と「わたし」の特別な数日間。
気心のしれた女同士で飲むお酒は、自分を少し素直にしてくれる…そんな中、思い出すのは、取り返しのつかない色んなこと(「元気でいてよ、R2-D2。」)。産休中の女性編集者の下に突然舞い込んだ、ある大物作家の原稿。彼女は育児に追われながらも、自ら本作りに乗り出すが…(「スイッチ」)。本人ですら気付かない本心がふと顔を出すとき、世界は崩れ出す。人の本質を巧みに描く、書き下ろしを含む9つの物語。