著者 : 北田絵里子
飛行機は、わたしの一部で飛ぶことは、世界のすべてだった。1950年、地球一周飛行挑戦中に消息を絶った女性飛行士。2014年、その飛行士を演じることになったハリウッド女優。残された航空日誌が繋ぐ、二つの人生の円。英国最高峰ブッカー賞最終候補作。
「わたしがその顔の持ち主だったら、あなたよりずっと上手に生きていくのに」整形手術で手に入れた美貌でルームサロン嬢として働くキュリは、美容外科の待合室で見かけた美しいアイドルを見て思った。キュリのルームメイトで孤児院出身のアーティストであるミホは、生まれつき美しい容姿に恵まれ、彼氏は財閥の御曹司だが、最近浮気を疑っている。キュリとミホの向かいの部屋に住む美容師のアラは、全面的に顔のお直しをした手術の後遺症に苦しんでいる幼馴染を心配しつつ、推しのアイドルに夢中だ。裕福な家庭の出身ではない20代の彼女たちが暮らすのは、ソウルの一角にある賃貸アパート。下の階には、妊娠しながら仕事を続けているものの、韓国で子どもを育てていくことに不安を抱える30代の会社員のウォナが暮らしていた。ある日、アラは下の階から聞こえてくる悲鳴に気づきー。美容整形大国、韓国の厳しい社会を逞しく生き抜く彼女たちの物語。
1990年、トルコ。イスタンブルの路地裏のゴミ容器のなかで、一人の娼婦が息絶えようとしていた。テキーラ・レイラ。しかし、心臓の動きが止まった後も、意識は続いていたー10分38秒のあいだ。1947年、息子を欲しがっていた家庭に生まれ落ちた日。厳格な父のもとで育った幼少期。家出の末にたどり着いた娼館での日々。そして、居場所のない街でみつけた、“はみ出し者たち”との瞬間。時間の感覚が薄れていくなか、これまでの痛み、苦しみ、そして喜びが、溢れだす。トルコでいま最も読まれる女性作家が描く、ひとつの生命の“旅立ち”の物語。
『ニューサウスウェールズ中西部の消えゆく町々』という本を執筆中の「ぼく」。取材のためにとある町を訪れ、スーパーマーケットで商品陳列係をしながら住人に話を聞いていく。寂れたバーで淡々と働くウェイトレスや乗客のいない循環バスの運転手、誰も聴かないコミュニティラジオで送り主不明の音楽テープを流し続けるDJらと交流するうち、いつの間にか「ぼく」は町の閉塞感になじみ、本の執筆をやめようとしていた。そんなある日、突如として地面に大穴が空き、町は文字通り消滅し始める…カフカ、カルヴィーノ、安部公房の系譜を継ぐ、滑稽で不気味な黙示録。
15歳のチャーリーは、ポートランドに引っ越してきたばかりだ。母はおらず、父は気まぐれで家を空けることも多い。生活費に困った彼は、ランニングの途中で見つけた競馬場で調教師の手伝いをはじめる。そこで出会ったのは、リーン・オン・ピートという名の競走馬だった。穏やかなリーン・オン・ピートに愛情を持つようになったチャーリーは、ある事件をきっかけに、ひそかにリーン・オン・ピートを連れ出して、伯母のもとをめざす。孤独な少年の旅路を描き、心を打つ感動作。映画化原作。
亡父ヘンリーは、なぜ危ない橋を渡り情報を売ろうとしたのか。そして、自らの生誕をめぐる隠された真実とは。その答えを求めて、マックスはチームを組織して日本へと乗り込む。ドイツのスパイ網指揮者は日本の悪名高き大物政治家と手を組み、その行く手を阻むー大正期の東京、横浜を舞台に描く諜報戦!
一九一九年春、第一次大戦後のパリではじまった愛と憎しみの国際諜報戦は、スコットランド、ロンドン、マルセイユを経て、夏の日本へ。英・米・独・露のスパイに運命を翻弄されたマックスは、東京で亡父の真意を知り、謎に包まれた京都の古城に潜入、囚われ人を救出しようと試みる。三部作、感動の完結篇。
父ヘンリーの秘密を握るドイツのスパイ網指揮者レンマー。彼を陥れるべく敢えてドイツのスパイとなったマックスはスコットランド最北に抑留中のドイツ軍艦から極秘ファイルの回収を命じられる。レンマー打倒の材料となるファイルを携えマックスはロンドンをめざす。スリルと疾走感溢れる極上スパイミステリ!
極秘ファイルの解読を試みるマックスらに立ちはだかる意外な刺客。レンマーのスパイ網は身内にも張り巡らされていた。一方、日本代表団の新たな代表となった戸村伯爵とその息子が、マックスらの行く手を阻む。密約、裏工作、祖国に対する背信ーゴダードが紡ぐ壮大なスケールの国際諜報戦、いよいよ佳境へ!
退職目前、古参社員ケラウェイが命じられたのは社史編纂のための記録探し。買収合併を繰り返して世界的大企業にのしあがった会社の記録の一部が紛失していたのだ。ケラウェイは四〇年あまり前の記憶からたどり始める。それは今も彼の心に重くのしかかる、一人の少年の死の真相をつきとめる旅でもあった。
一八歳の夏、地元企業でアルバイトをするケラウェイは創業家の姉弟と出会う。多くの謎を残して死んだ弟、美しい姉との運命の恋。その後も一族で不審な死が重なり、企業は拡大していく。裏切り者は誰なのか?結末まで全貌が見えない洗練のプロット、含蓄がちりばめられたセリフ。ミステリ読みのための快作。
オーストラリアの海辺でひとり暮らす75歳のルース。ある日そこに、虎とヘルパーが現れた…。サスペンスと抒情に満ちた傑作。オーストラリアの著名な文学賞、ニューサウスウェールズ・プレミア文学賞、ヴォス賞、バーバラ・ジェフリーズ賞受賞。
カナダでの休暇からもどる途中、山火事に遭遇したクイーン父子。身動きが取れなくなったふたりが見付けたのは、薄気味悪い雰囲気が漂う屋敷だった。初めは使用人に追い払われたものの、主人であるゼイヴィア博士の好意で、泊まらせてもらえることに。しかし翌朝、書斎で博士の射殺体が発見される。右手の指には半分にちぎれたトランプが挟まっていた。エラリーがダイイング・メッセージに挑む“国名”シリーズ第7弾!
かつて高額な報酬に惹かれ、セルビア民兵組織リーダーの生体肝移植を成功させたことがある高名な外科医ハモンドの前に、リーダーの娘が現れた。大量虐殺を繰り返し、戦争犯罪人として逮捕された父親の財産の隠し場所を知る組織の元会計係を探してほしいという。半ば脅迫されたハモンドはハーグへ向かう。MWA賞受賞後第1作。バルカンを舞台に繰り広げられる、秀逸ノンストップ・スリラー。
リーダーの元情婦、民兵組織の元側近、捜査官。会計係を探しているのは、ハモンドだけではなかった。何人もの復讐心といくつもの強欲がからみあい、行く先々で死が累々と積み上げられていく。隠し財産はどこにあるのか。戦争の爪痕生々しく、動乱が続く地帯で正義は貫きとおせるのか。ノンストップ・スリラー。
盲目の大富豪・ハルキス氏の死が全てのはじまりだったー。葬儀は厳かに進行し、遺体は墓地の地下埋葬室に安置された。だが直後、壁金庫から氏の遺言状が消えていることが発覚する。警察の捜索の甲斐なく、手掛かりさえも見つからない中、大学を卒業してまもないエラリーは、棺を掘り返すよう提案する。しかし、そこから出たのは第二の死体で…。天才的犯人との息づまる頭脳戦!最高傑作の誉れ高い“国名シリーズ”第4弾。
競売にかけられた伝来の指輪を落札するよう頼まれ、英国コーンウォールへ赴いたハーディング。その地で謎めいた美女ヘイリーに出会った瞬間、彼は不思議な感覚にとらわれた。いつか確かに見た顔だが、どこで会ったか思い出せない。そして目的の指輪には18世紀の惨劇に関する複雑な来歴が隠されていた…。
何者かに競売会場から奪われた指輪。ある事件とともに姿を消したヘイリーと彼女の意外な素性。次々と悲劇に見舞われる関係者。幾多の謎に巻き込まれながら事件の真相を求めるハーディングは、14世紀の伝説へと辿りつく…。史実を背景に名手ゴダードが精緻に築き上げた、スケール感溢れる傑作ミステリー。