著者 : 南条範夫
室町幕府第五代将軍足利義量の時代に幕府首脳部の一員として重きをなした一色満範が没すると、一色家は二つに分れた。丹後を領する喜多一色家を嗣いだ一色信康の死については多くの異説が伝わっている。信康は、同じ日、永享九年五月十四日に、別々の場所で殺されたというのだ。
明治歌壇に颯爽と登場した鉄幹を囲んで、多くの女性たちが愛を競った。その中で晶子は、もっとも激しく恋し行動して、彼の妻となった。しかし、結婚の現実は厳しく、次々と挫折に襲われる。萎縮する夫を支え続け、恋冷めの気持を歌によって発散し昇華させて、愛を貫いた与謝野晶子を描く、感動の長編小説。
淀君こそ史上最高の美女。雑誌編集者の誠之助が大坂城趾で艶麗な姿態を夢想したとたん、石垣は崩れ、彼は慶長十九年の城内にタイムスリップした。洋服姿から切支丹と疑われるが、歴史知識を活用、神の予言者として信頼と人気を集める。そして、ついに憧れの淀君の寝所へ招かれた。だが、彼も歴史を変えることはできなかった…。SF的発想と確かな史眼で、落城の悲劇を軽妙に描く異色の快作。
主君北条氏政に謹慎を仰せつかった身でもあるにも拘わらず、女と酒を求めて歩くようになった新六郎は、料亭の娘早苗と男女の仲にー。時を経て、赦免された新六郎は、彼女を側室として引きとった。周囲の評判も良い早苗だったが、秀吉の小田原城攻めが始まる直前、墓参に出掛けた2人の前に老人が現れてからというもの、俄に挙動が怪しくなってきた…『小田原城』他4篇収録。
「この人と一緒にいたい」京都随一の美妓・幾松が見初めたのは維新の志士・桂小五郎の颯爽たる姿だった。幕末の嵐を共に乗り越え、桂は新政府の参議・木戸孝允となり、幾松はその妻・松子となるが、結婚を境に二人の愛は姿を変える。国事に忙殺され次第に消耗する木戸。苛立ちと愛の渇きを、若い役者との「遊び」で紛らわす松子。動乱期の女性の生きざまと愛の軌跡を綴る傑作時代小説。
江戸での御前試合のため、沼田藩から5人の若い剣士が旅立った。試合は好首尾に終わったが、剣士たちは華の吉原でおいらん遊びの楽しさを知ってしまう。「我が城下にも小吉原を!」の要求で、藩内に奥方連も巻き込んだ騒動が起こって…。強いばかりが剣豪ではない。表題作など、血のかよった9人の剣士たちのほほえましい人間性に迫る異色の傑作剣士小説集。
遣唐副使として唐に渡ったまま行方不明となった父・石根を求め、道麻呂はかの地へ赴いた。20数年の歳月を経て、ようやく出会った父は、あまりにもおぞましい姿に変わり果て…。直木賞受賞の表題作のほか、オール新人杯第1回受賞作「子守りの殿」、異色作「水妖記」など初期の作品6編を収録。直木賞受賞までの歴史小説をすべて網羅した、巨匠の原点。
川越藩の城代家老・早川主馬は、自分の娘を藩主の妄にさし出し、その妄が生んだ千若を藩のあと継ぎにしようと奸計をめぐらせていた。その陰謀を知った井上伝八郎は、悪家老一味に敢然と立ち向かう。剣をとっては無双、言を吐いては剛直な伝八郎にふりかかる、試練のかずかずー。秘剣、剛剣、妖剣入り乱れる痛快時代娯楽の表題作とほか2編を収録。
才気煥発の平賀源内は、讃州(四国高松)藩におさまりきれぬ、型破りの大器。若さにまかせて、長崎、大阪、そして江戸へー。幕閣の有力者田沼意次の知遇を得てその才能は花開く。機略縦横、本格時代小説巨編。
出石藩仙石家の変人武士、白鳥大三郎と一柳主税は、美貌の娘二人を助けた。藩主の御落胤のお墨付を持つ袖姫と待女・糸枝。4人は、主家乗っ取りを企む一派が起こしたお家騒動をのがれ、江戸へ向け珍道中に出発!