著者 : 南條竹則
長篇小説を執筆中の作家ポール・オレロンは古い貸家に引越すが、忽ち創作は行き詰まり、作家は周囲に何者かの気配を感じ始める。邪悪なものの憑依と精神崩壊の過程を鬼気迫る筆致で描き、ブラックウッド、平井呈一らが絶賛した心理的幽霊譚の名作「手招く美女」。沈没寸前のガレオン船の前に霧の中から現れた謎の船の正体とは…超時間的な幻想譚「幻の船」。シチリアの富豪の娘が旅先のチュニスで英国青年と恋に落ち、同時に神秘的な人格の変容を経験する。エキゾティックな舞台に古代幻想が交錯する中篇「彩られた顔」。第一次大戦で顔貌を損傷した英国人がフランスの田舎の城館に隠棲するが、相次ぐ怪異現象と迷信深い土地の人々の視線に次第に追い詰められていく…陰鬱な雰囲気に満ちた「屋根裏のロープ」など全8篇と、作者がその怪奇小説観を披露したエッセーを収録。英国怪奇小説の黄金時代において、精緻な心理主義と怪異描写を追求し、斬新なアイデアで新しい地平を拓いたオリヴァー・オニオンズの怪奇小説傑作選。
恐怖の爆弾テロリストたちの暗躍を物語の経糸にして、黄昏の世紀末ロンドン、合衆国の荒野、カリブ海の小島を舞台に繰り広げられる、怪奇で波瀾万丈な奇談の数々。ドイルやマッケンにも大きな影響を与えた連作小説、本邦初訳なる!!
ラヴクラフトは不遇のままその生涯を閉じた。だが、彼の創造したクトゥルー神話は没後高く評価され、時代を越えて世界の読者を虜にしているー。頽廃した港町インスマスを訪れた私は、魚類を思わせる人々の容貌の恐るべき秘密を知る(表題作)。漂流船で唯一生き残った男が握りしめていた奇怪な石像とは(「クトゥルーの呼び声」)。英文学者にして小説家、南條竹則が選び抜いた、七篇の傑作小説。
邪恋と功名心に駆られ、北極点を目指すアダム。だが、何処からか毒の雲が立ち昇り、地上の動物は死に絶えた。ひとり死を免れたアダムは、孤独と闘いつつ世界中を旅する。生存者を求めてー。異端の作家が狂熱を込めて物語る、世界の終焉と、新たな始まり。
巨大な蜂の巣のようなロンドンの街路の中で「奇商クラブ」は扉を開かれる時を待っているーこの風変わりな秘密結社は、前例のない独創的な商いによって活計を立てていることが入会の条件となる。突然の狂気によって公職を退いた元法曹家のバジル・グラントが遭遇する、「奇商クラブ」に関する不可思議な謎。巨匠が「ブラウン神父」シリーズに先駆けて物した奇譚六篇を新訳で贈る。
五感の中でもっとも記憶が薄れないのが味覚。人間は食とともにある。健康のためには一日三食、規則正しい食生活を。心の健康のために、一日一作、規則正しい読書生活はいかが?ただしご注意を。「食」ではなく「味覚」、しかも「冒険」と銘打たれたこのアンソロジー、一筋縄ではいかないかも。ただ、14編どれもがリアルな味覚に訴えかける迫力と、飛び切りの面白さを備えていることは保証します。
英国怪談の第一人者が半世紀に近い歳月を掛けて選び抜いた、イギリス怪奇幻想恐怖小説の決定版精華集。26人におよぶ作家の作品32編を一堂に集める。M・P・シール『薔薇の大司教』、マッケン『N』、ウェイクフィールド『紅い別荘』等の訳し下しや、フィオナ・マクラウド『牧人』等の単行本未収録作も多数収録。既訳の作品も全面的に改訂、磨き上げられた愛蔵版。
「耳なし芳一の話」「むじな」「ろくろ首」「雪女」…。日本をこよなく愛したハーンが、古来の文献や伝承をもとに流麗な文章で創作した怪奇短篇集。日本の文化、伝統、習慣を世界に紹介し、いまや「日本文学の古典」とも言えるハーンの代表作。昆虫エッセイ「虫の研究」も収録。
ありえないのに合理的、逆説が導くさかしまの真実。互いの意見が一致したため相手を殺した男、誰もが知っているのに何者かわからない男。“ブラウン神父”の巨匠が創りだしたもう一人の名探偵による八つの謎解き。
かつて鳥だったころのことが忘れられず、母親と別れてケンジントン公園に住むことになった赤ん坊のピーター。葦笛で音楽を奏でたり、公園内の小さい家での一夜の出来事など、妖精たちや少女メイミーとの出会いと悲しい別れを描いたファンタジーの傑作。挿し絵アーサー・ラッカム。
「どこかおかしいんです。ここまで正反対にできているものは、喧嘩のしようがありません」-謎めいた二人の人物に隠された秘密をめぐる「イルシュ博士の決闘」。呪われた伝説を利用した巧妙な犯罪。「ペンドラゴン一族の滅亡」など、全12篇を収録。ブラウン神父が独特の人間洞察力と鋭い閃きで、逆説に満ちたこの世界の有り方を解き明かす新訳シリーズ第二弾。
「私の音色は薄緑なの」ヴァイオリンのような甘美な声で娘は言った…。“勇気と想像力ある秘書求む。当方は隠退した聖職者。テノールの声とヘブライ語の多少の知識が必須”。謎の求人に応募した主人公が訪ねたのは、人里離れた屋敷だった。そしてそこには美しい娘がいて…。