著者 : 原田康子
少女の淡い恋心と、突然訪れる別れを描いた痛切なお話。別れるときの女性と男性それぞれの心理を、鮮やかに切り取った大人の恋愛物語。生き別れた父への複雑な感情と、忘れがたい思い出が綴られた作品…。「別れ」にまつわる味わい深い短編を精選したアンソロジー。別れはつらいもの。けれど別れを経験してこそ、出会いの喜びを強く感じられる。心が揺さぶられる作品に、きっと出会える13編。
愛も無力となるほどに苛酷な蝦夷の大地。厳しい寒さと水腫病が警備の藩士たちの生命を次々に奪った。和人たちの横暴を憎みながらも心を開き始めるアイヌの若き女、人妻への思慕を断ち切れぬ青年武士。苦悩の愛を抱えながら男たちは寡黙に、生命を賭けて北の守りを固める。自然と歴史に立ち向う愛の群像。
療養のため、とある温泉地に滞在している少女は、そこで出会った1人の青年に惹かれるが…。感受性の強い少女の清新の時を瑞々しい筆致で切り取ったデビュー作「サビタの記憶」。単調な生活に倦んだ人妻は、若い従弟との危険な時間に足を踏み入れた…。3組のカップルが織りなす妖しい愛のロンド「廃園」。ベストセラー『挽歌』刊行の前後に発表された8編を収録した作品集。
仲秋の満月の夜、愛犬セタを連れて散歩に出た若い高校教師まりは、豊平川の河原で奇妙な男と出逢う。まるで時代劇から抜け出してきたような格好の男は、津軽藩士・お手廻り組、杉坂小弥太重則と名乗った。アイヌの老婆フチの魔術によって時を越えて北国の街に現われた三百年前の侍と、現代的な女教師との不思議な恋愛を描く、ちょっぴり切ない長編ロマンティック・ファンタジー。
21歳の奔放な社長令嬢淳子は、父の小切手を無断で使ってしまったために、北海道で謹慎生活を送ることになった。ある夜、3発の銃声が響き、一人の青年が逃げ込んで来る。淳子は何故かこの殺人犯を匿い、二人の間にはやがて奇妙な感情が芽生えていくのだが…。からまつの自然林に囲まれた別荘地を舞台に若い娘の揺れ動く複雑な心理を描き出した異色の長編サスペンス・ロマン。
北海道の霧の街に生いたち、ロマンにあこがれる兵藤怜子は、知り合った中年建築家桂木の落着きと、かすかな陰影に好奇心を抱く。美貌の桂木夫人と未知の青年との密会を、偶然目撃した彼女は、急速に夫妻の心の深みにふみこんでゆく。阿寒の温泉で二夜を過し、出張した彼を追って札幌に会いにゆく怜子、そして悲劇的な破局ー若さのもつ脆さ、奔放さ、残酷さを見事に描いた傑作。