著者 : 友枝康子
極端な家母長制社会の惑星ストラトス。遺伝子工学の発達により、男性がほとんど排除され、女性のクローンが覇権を握る閉鎖的な惑星上では、短い夏の間、クローン技術によらずに生まれてくる子供たちがいた。そうした変異子の一人として、生まれ故郷から離れていくべく運命づけられた内向的な少女マイアは、快活な双子の妹ライアとともに冒険の旅にでる。だが、二人の行く手には想像を絶する苛酷な運命が待ち受けていた。
マイアとライアがそれぞれ乗りこんだ二隻の船が嵐に遭い、うちライアの船が消息を絶った。一人残されたマイアはさらなる孤独な旅を続けていく。鋳物工場での重労働、仲間の裏切り、そして監禁…。だが、マイアの身に襲いくる試練はそればかりではなかった。鬱々とした独房生活を送るうち、やがてマイアは、宇宙からの「訪問者」をめぐる陰謀の渦中へと巻きこまれていく!巨匠ブリンが雄渾の筆致で綴る感動のSF巨篇。
ベルファストの郊外で、自動車に轢かれた男の死体が発見された。その死体の両手首には奇妙な穴があけられ、コートのポケットには不可解な言葉が記された新聞広告の切れ端が入っていた。北アイルランド警察のクロス警部と女性刑事ウェスタビーが捜査を開始するが、その死体が冷凍されて路上に置かれていたことが判明、やがて特別保安部も介入してきた。そしてついに第二、第三の殺人が…大型新人が放つ壮絶なサスペンス。
懸命の捜査でクロスとウェスタビーは、被害者に一つの法則が当てはまることを発見した。さらに殺人の前に、新聞広告に旧約聖書の詩篇の一節が載せられていたことも突き止めた。そして、一連の事件が北アイルランド紛争と密接に関わっていることも探り出し、二人は犯人を追いつめていくが…思いもよらぬ展開と、やがて訪れる懸愕のクライマックス。エスピオナージュとサイコ・サスペンスを見事に融合させた空前の大作。
植民惑星ハーモニーを軌道上で密かに統轄するマスター・コンピューター「オーヴァーソウル」。入植以来四千万年を経て機能低下を自覚したこのコンピューターは、夢のお告げを送って人々を地球へ導こうとする。兄弟とともに花嫁を探せとのお告げを受けた少年ニャーファイは、独裁者ムウズーの侵略に揺れる都市バシリカを訪れた。そのお告げに隠された、コンピューターの真の思惑とは。人気作家の新たなる未来史、第二巻。
惑星ハーモニーに人類が入植して四千万年。平和な文明の栄えるこの星は、じつは軌道上のマスター・コンピューター“オーヴァーソウル”に密かに管理されている。ところがその機能が低下し、世界を制御できなくなってしまった。このままでは人類が自滅への道をたどるのは必至。守護者としての使命をまっとうすべく、オーヴァーソウルは一人の少年にメッセージを託すのだが…遠未来に生きる人類の姿を壮大に描く傑作長篇。
限定核戦争と細菌戦のために壊滅状態になった近未来のアメリカ。すべての大都市を破壊して、あらゆる州を荒れ地に変えた災厄にもかかわらず、人々は生き延びていた。金や生命を狙う暴徒や浮浪者が徘徊する土地を抜け、数千キロ彼方のユタをめざす旅人たちと一匹狼のティーグを描く「西部」、車椅子の教師と不良生徒たちの物語「辺境」など、コミュニティの中心から離れ“辺境”でたくましく生きる人々を描く傑作連作集。
地球=アルファ星系の星間戦争はとうに終結していた。だが、敵国アルファ系帝国の領地であるその衛星には、地球人の精神疾患者達が今もとり残され、連絡を断ったまま独自の文化を形成していた。この地を再び地球のものとすべく、地球側は調査部隊を送り込む。だが独自の思惑をもつCIAは、調査隊に一人の人造人間を潜入させた。著者が精神疾患への関心をもとに取り組んだ名編。
歴史小説家の調査助手をつとめるジェフは、友人の精神科医の紹介でアニーと出会った。彼女は奇妙な夢に悩まされていた。馬上の将軍や林檎園の死体…。南軍の敗色濃い南北戦争の光景が、夜ごとに夢に出てくる。まるで何者かが時を超えて過去からメッセージを送っているかのように。夢が悲劇的な様相を深めるなか、古戦場を訪れたアニーとジェフを待っていたものは…。実力派作家が歴史と虚構のせめぎあいを描く傑作長篇。
古代マヤ文明展が引き金だったー。人類学者ケイトが「神への愛のため、生贅の首を斬り、背中の皮を剥ぐ」儀式について、メトロポリタン美術館で講演した同夜、儀式通りに殺人が起こった。偶然、この講演を聴いていたローク警部補は、生贅に指名されたケイトを護衛するが、いつしか二人はお互いに強く心惹かれていく。一方、数名にしぼられた容疑者は、次々と殺しの擬式の犠牲に…。
闇夜を切り裂く銃火、大地を揺るがす迫撃砲の轟音、そして傷病兵の悲鳴…。従軍看護婦キティが見たベトナム戦争は、まさにこの世の地獄だった。だが、高齢のベトナム人患者からふしぎな護符を譲られたことで、彼女の運命は一変した。その護符の力で、キティは名実ともに“癒す者”となったのである。気鋭の女流作家が、みずからの体験をもとに魔術的な筆致でベトナム戦争を描き、全米に衝撃を与えたネビュラ賞受賞作。
考古学者エリザベスは、マヤのジビルチャルトゥン遺跡を発掘調査中、奇怪な現象を体験したー古代マヤ語を話す女の“幻”と遭遇したのだ。この女こそ、マヤに実在した女神官スーイー・カーク。壮大な使命を秘めて永劫の時を超え、マヤ暦の大いなる時の円環が一巡する現代にやってきたのだ。同じころ、長いあいだ音信不通だったエリザベスの娘ダイアンもマヤに姿を現わす。時を超えて3人の女が一堂に会したとき、古代マヤの恐るべき予言が着実に実現しようとしていた…。期待の新鋭マーフィーが華麗なる神話的小宇宙を紡いだネビュラ賞受賞作。
悠久の時を経て、廃墟となりはてながらも、なお神話の息づくマヤの遺跡。この神域にのみ生える“聖なるキノコ”には人間に過去を再体験させる不思議な力があるらしい。その遺跡をめざして消息を絶った夫のエディーを捜して、リンジーは内乱に揺れるメキシコへやってきた。エディーはかつてロックのスーパースターだったが、ドラッグで身をもち崩して入院中、その病院を脱走したのだ。エディーの兄で、マヤ文明崩壊の謎を解明に挑むトーマスとともに、メキシコ山中に旅だったリンジーを待つものは…?ファン待望の新鋭の問題作、ついに登場。
アメリカの軍事介入や、政府軍と反政府ゲリラの血みどろの抗争で政情不安におちいったメキシコ。銃火と硝煙をくぐり抜けて、リンジーとトーマスは一路〈ナ・チャン〉をめざす。果てしない時の輪廻を凝視しているような石像や、神秘の世界への扉を秘めた神殿の建ちならぶこの古代マヤの都市遺跡は、エディーになにを見せたのか?時を超えてよみがえる叡知に満ちたマヤの終末の予言とは?ギブスン、スターリングらと並んでSFの地平を果散に切り開く気鋭が、卓抜したストーリーテリングで現代SFと神話的世界を見事に融合させた衝撃の傑作。
「地底世界こそ神話にあるユートピアだーアトランティス大陸、シャンバラ、ペルシダー!そしてかの地に住まうは魚人間である」この珍説に我が意を得たりと共感したのが発明狂のジャイルズ少年。なにしろ自分の体に鰓と水かきがあってはそれも無理もない。驚くべきは、ガラクタ集めて地底探検車を作ってしまったこと。これに目をつけたのが名声ばかり追求するうさんくさい探検家ピニオン。にわかに騒がしくなったジャイルズ少年の身辺だったが、あげくは殺人事件まで生じる一大事に…。ディック記念賞受賞作家が描くマッド・ファンタジイ。
市井の哲学者、科学者、芸術家を自負する一風変わったメンバーからなるトリスメギストス・クラブに、ある日、盗賊が侵入した。どうやら、エントロピーを逆転する力を持つホムンクルスを狙ってのことらしい。だが、その伝説の小人がどこにいるのやら、当のクラブのメンバーさえ知らないしまつ。あまつさえ、この小人をめぐって暗黒街の黒幕、マッド・サイエンティスト、狂信的な伝道師、はてはゾンビまで現われて、事件は混乱の一途をたどるが…。ヴィクトリア朝のロンドンを舞台に奇人・変人・狂人が暴れまわる、話題のスチームパンク登場。ディック記念賞受賞。
烈風が吹きすさぶ荒れ果てた砂漠を、スネークはさまよっていた。彼女の職業は〈治療師〉。蛇の毒素から抗体をつくって、病人を癒す者。だが今のスネークには、その資格はなかった。治療のために必要な三匹の蛇のうち、スネーク自身がつくりあげた“夢の蛇”が殺されてしまったのだ。かくしてスネークは、新たなる夢の蛇を手に入れるべく、核戦争の爪跡も消えやらぬ荒野に旅立つが、その行手には何者かの邪悪な影がちらつき、旅を妨害するのだった!ル・グィン、ティプトリーと並び称される閨秀作家が流麗なタッチで描き、ヒューゴー、ネビュラ両賞受賞に輝いた傑作SF。
生活のすべてがコンピュータで管理される夢の新興住宅地、コブルストーン・ヒル。白い家と緑の芝生。すみきった青空。だけどこの街に住んでいるのは、ちょっとおかしな人ばっかり。お向かいのご主人は、なぜかわが家を目のかたきにして、わざわざ家庭用ミサイルを設置しちゃうし、それに対抗したうちのパパなんて、ガレージに原発をつくっちゃった!ふたりの喧嘩はエスカレートするばかりだし、おまけに家族は災難つづき…。いったいこの街、どうなっちゃうの?若き異才マーク・レイドローが、ブラック・ユーモア光線を乱射して、アトミック・エイジに捧げる傑作コメディ。
男の名前はドネル・ハリソン。詩人。だが彼は普通の人間ではない。死後数時間以内の新鮮な死体の脳に、墓地に棲息する特殊なバクテリアを注入することにより、死から呼び戻されたゾンビーなのだ!しかも復活する以前の死体は、ドネル本人のものではない。彼の人格はどこから来たのか?自分は何者なのか?脳がバクテリアに侵しつくされ、瞳が緑の輝きをおびるまでしか生きられないことを悟ったドネルは、人里離れた秘密の研究所を脱走して、放浪の旅に出るが…アメリカ南部のむせかえるような熱気の中に、生と死の織りなす不気味なSFゴシックを構築した俊英の話題作。
時は21世紀。かつて栄華を誇ったアメリカは、あとかたもなく消えていた。広大な国土には葛がおい茂り、大都会のあった場所には巨大な人工ドームがそびえるばかり…。〈都市核〉と呼ばれるこうしたドームが今や独立した国家となっているのだ!ジョージア州アトランタも例外ではない。だが宗教的独裁政権に支配されるこの街に、白鳥座からエーリアンが訪れて、ひっそり暮らしていた。市民には彼らの目的も、真意もわからなかったが、エーリアンの存在自体が、やがて〈都市核〉を根底から揺るがしていくのだった!米SF界きっての技巧派が鮮やかに描き出す近未来SF登場。