著者 : 古川日出男
家庭に居場所を得られず自転車を駆って遠征する少年、学校になじめず都バスに乗って往還する少女、超能力を持つ老女、ストリートミュージシャン、殺し屋、そして多くの野良猫。直感だけを生きる指針にして東京を疾走する者たちの、熱い鼓動がシンクロするー邂逅と別離のリンクから生まれるドラマを、軽やかなビート感にのせて鮮烈に描き、読書界を沸騰させた青春群像小説の傑作。
キスカ島に残された四頭の軍用犬北・正勇・勝・エクスプロージョン。彼らを始祖として交配と混血を繰りかえし繁殖した無数のイヌが国境も海峡も思想も越境し、“戦争の世紀=20世紀”を駆けぬける。炸裂する言葉のスピードと熱が衝撃的な、エンタテインメントと純文学の幸福なハイブリッド。文庫版あとがきとイヌ系図を新に収録。
「なかなかキュートな足跡なのよ」。恋人が教えてくれた、妖精の足跡の捕まえかた。ぼくが試してみると、本当に歩いた跡が残っていた。そこで、妖精の映像を撮影しようとするが…(「ラブ1からラブ3」)。水没したお台場にできた新国家、廃墟で死を待つ少女、校舎の屋上にある秘密の楽園ー。日常の隣りにある小さな奇蹟を、鮮烈に描いた掌編集。単行本未収録の作品を加えて待望の文庫化。
井の頭公園に湧く水をたどりながら、僕たちは海まで歩くーそれは、永遠の夏休みのはじまりだった。ひととひととがつながりあうミラクル。おだやかな熱に包まれる再生の物語。
東京は異常な街に変貌していた。ヒートアイランド現象によって熱帯と化し、スコールが降りそそぐ。外国人が急増し、彼らに対する排斥運動も激化していた。そんな街に戻ってきた青年トウタと中学生ヒツジコ。ふたりは幼いころ海難事故に遭い、漂着した無人島の過酷な環境を生き延びてきたのだった。激変した東京で、ふたりが出会ったものとはー。疾走する言葉で紡がれる、新世代の青春小説。
かつて母親に殺されそうになり、継母からも拒絶されたヒツジコは、世界を滅ぼそうと誓う。見た者の欲望を暴走させるダンスを身につけた彼女は、自身の通う女子高で、戦闘集団「ガールズ」を組織するー。一方トウタは、友人レニの復讐を手伝うため、東京の地下に住む民族「傾斜人」の殲滅を決意した。トウタとヒツジコの衝動が向かう先とは…。崩壊へと加速する東京を描いた、衝撃の長編小説。
聖遷暦一二一三年、偽りの平穏に満ちたカイロ。訪れる者を幻惑するイスラムの地に、迫り来るナポレオン艦隊。対抗する術計はただ一つ、極上の献上品「災厄の書」。それは大いなる陰謀のはじまりだった。
2009年、ヒートアイランド化した東京。神楽坂にはアザーンが流れ、西荻窪ではガイコクジン排斥の嵐が吹き荒れていた。破壊者として、解放者として、あるいは救済者として、生き残る少年/少女たち。これは真実か夢か。『アラビアの夜の種族』の著者が放つ、衝撃の21世紀型青春小説。