著者 : 吉本ミキ
どうして気づかなかったのだろう。 幸せをくれる人は、ずっとそばにいた。 若き看護師長レイチェルは仕事熱心で、充実した毎日を送っている。 ただ、自分勝手なボーイフレンドに振り回されるのが悩みだ。 そんな彼女を見て、上司のファン・トゥーレ教授が助言をくれた。 「彼が望む女性になろうとせずに、そのままの君でいなさい」 胸を打たれたレイチェルはいつしか教授を意識するようになり、 ボーイフレンドと会っていても、思わず教授と比べてしまうのだった。 彼の下で働き始めて2年、有能な外科医として尊敬してはいたが、 彼がどこに住み、どんな暮らしをしているのかさえ知らなかった。 今まで気づいていなかったけれど、 教授はいつも私を見守ってくれていた。でも、それはなぜ……? ハンサムで長身のオランダ人外科医の教授は落ち着きのある大人の男性で、派手好きで軽薄なボーイフレンドとは正反対。レイチェルは、彼が年の離れた兄のように優しく包み込んでくれていることに、あるときふと気づくのでした。それが恋の始まりとも知らず。
亡き親友の望みを叶えるための、 シチリア富豪との愛なき結婚。 ある日、コリンはシチリア大富豪のラファエロに突然呼び出された。 彼は亡き大親友の夫だが、用件すら告げず、どこか不遜だ。 いぶかりながらも、指定された最高級ホテルへ出向くと、 先日発見されたという、コリン宛てに親友が遺した手紙を渡される。 そこには、幼な子を独りで育てるコリンの暮らし向きを気遣うとともに、 なんと、一人親になった両家の子供たちのために、 ラファエロと結婚してほしいと書かれていた! 親友の思いやりと優しさにあふれた遺志に、涙が頬を伝った。 でも、たとえ親友の望みでも、愛のない結婚なんてできない……。 するとラファエロが冷然と言う。「これは感情抜きの、便宜上の契約だ」 〈運命を変える手紙〉と題し、ロマンスの鍵を握る重大メッセージをきっかけに始まる物語をお贈りします。ラファエロは魅力的な男性ではあるけれど、彼との結婚は施しを受けるようで自尊心が許さない。でも子供のためを思うと……。悩めるコリンの決断は?
10年前、レイチェルは恋人スティーヴンの前から姿を消した。 当時の二人は、バレリーナの卵と野心に燃える若き事業家で、 スティーヴンは千載一遇のチャンスを掴もうとしているところだった。 身ごもっていると気づいたのは、そのときだ。 愛する人が夢に邁進できるよう、彼女はそっと身を引いたのだった。 若気の至りと言うには大きすぎる過ちだったと知ったのは、 10年後、レイチェル親子とスティーヴンの偶然の再会のあと……。 あれからずっと彼女を捜し続けていたというスティーヴンは、 裏切られた苦しみのあまり、冷徹な億万長者へと変わっていた。 自分と同じ青い瞳の男の子を見て、彼の目に新たな怒りの炎が上がる。 「あなたのために身を引いた」「君のためにがむしゃらに働いた」自分のしたことは相手を想ってこそだったのに、とすれ違う二人の苦しみと愛の深さが、読む者の心を打つ感動ロマンスです。
異国のスペインで自活をめざしていたイジーは、 道で倒れた貧しい老人ミゲルを助けたことをきっかけに、 彼の家で住み込みの家政婦として働きはじめる。 ある日、おそろしくハンサムで裕福そうな男性が訪ねてきた。 老人は上機嫌で、甥のカーヨ・アンヘル・ガルシアだと紹介する。 イジーは訝しんだ。お金持ちなら、なぜ伯父さんを援助しないの? 一方、カーヨはイジーをうさんくさそうに見ていた。 まんまと伯父の家に入り込んだこの女は金目当てに決まっている。 実は伯父が旧家の出身で大金持ちだと、知らないふりをしているのだ。 僕が贅沢をちらつかせて誘惑すれば、すぐ本性を現すに違いない……。 情熱の国スペインを舞台にしたシンデレラ・ストーリーです。莫大な資産家であるが故に女性はみな欲得ずくだと思い込み、愛を信じない独身主義者、カーヨ。彼のかたくなな心を解きほぐしていくイジーの優しさに、思わず胸が熱くなります。
2カ月前に母を病で亡くしたばかりのマリーナは、 白血病の少女に骨髄を提供するため、はるばるイギリスへやってきた。 空港に迎えに来ていたのは、約束の運転手ではなく、 少女の親族である若く美しきウィンターボーン伯爵、ジェームズだった。 はじめこそ、尊大な態度をとる彼に反感をおぼえたものの、 互いに身の上話をするうち、しだいに打ち解けていった。 そしてマリーナは伯爵に魅了されている自分に気づくーー心も、体も。 経験したことのない我が身の反応に戸惑うと同時に、気分が浮き立つ。 だが、伯爵邸に案内されるなり、ジェームズの世話係の老人が忠告した。 伯爵様には、婚約を考えている美しい令嬢がおられます、と。 名うてのプレイボーイ伯爵の唇からこぼれた“ノーとは言わせない”という誘い文句が、何度も頭にこだましてしまうほど純朴なヒロイン。魅力的な彼との間に慎重に距離を保とうとしますが……。大スター作家リン・グレアムがお好きな方におすすめしたい一作です!
虹のむこうに幸せがある。 そう信じても、虹はこの手に届かない。 物心がつく前に孤児になったオリンピアは、伯母に引き取られ、 家事につけ仕事につけこき使われる日々を送っている。 ある日、使いの合間に、前から見たかった美術館へ寄ったが、 時間に追われるあまり階段で転び、膝をすりむいてしまう。 すると、品のよい銀髪まじりの紳士が手をさしのべてくれた。 私ったら、みっともない。それに比べ、なんてハンサムな方かしら。 だが、そのオランダから来た紳士はワルドーと名乗るなり、 断言するようにこう告げた。「君は結婚していないね」 伯母の言うとおり、私は男性が結婚したがる娘ではないということ? ワルドーの言葉に戸惑い、恥じ入るオリンピアだったが……。 穏やかな作風で多くのファンの心をとらえて離さないベティ・ニールズの傑作をお贈りします。おまえは結婚なんてできないと伯母に言われ、自分でもそう思っているオリンピア。けれど、そんな彼女が出会った裕福なオランダ紳士は、どうやら違う考えのようで……。
天涯孤独のクリスティは亡き養父母の思い出をたどるため、 二人がハネムーンを過ごしたパリの高級ホテルを訪れた。 自分が他の客に比べて見劣りする服装をしているのは確かだが、 それにしても従業員たちが彼女を見てうろたえる様子は不可解だ。 見回すと、貴族のような品と男らしさが漂う男性に目が留まる。 気づけば、まるで彼を知っているかのように強烈に惹きつけられ、 そばの女性に嫉妬すら覚える不思議な感覚にとらわれていた。 すると突然、彼が振り返って怒りも露わにクリスティを凝視した。 初めて会う人なのに、いったいなぜ私をそんな目で見るの?
蕾のままで手折られたこの想いは、 いつか花開くのでしょうか……。 デボラは出会ったときからヘーラルトに恋をしていた。 彼は優秀なオランダ人医師で、心から信頼できる理想の男性。 でもみんなの憧れの的だから、わたしの恋は成就しそうもない。 そのヘーラルトから、ある日突然、こう尋ねられた。 「僕と結婚する気はないか?」 呆然とするデボラに、彼は落ち着き払ったまま言い添えた。 「深い感情は持ちたくない。形だけの妻が欲しいんだ」 こんな冷たい申し出を、プロポーズと呼べるのかしら? すっかり落胆したものの、デボラの胸にはかすかな希望も芽生えた。 たとえ片思いでも、愛する人とずっと一緒にいられるのなら……。 超人気作家ダイアナ・パーマーも愛読する名作を、ベティ・ニールズ選集よりお贈りします。ダイアナの特別メッセージも巻頭に掲載。本作では輝く星が重要な役割を果たします。読み終えた後、夜空にベティの笑顔を思い浮かべたくなることでしょう。
グレースは姉夫婦のため、代理母となって赤ん坊を産んだ。 だがまもなく二人は事故で亡くなり、子どもだけが残された。 そこへ、訃報を受けた義兄の弟ジョシュが帰ってくる。 10年前、実業家になるという野望を抱いて町を出たジョシュ。 ずっと彼を慕っていたグレースは、その前夜、彼にすべてを捧げた。 やがてジョシュは世界を股にかける大物実業家となったが、 なぜかグレースの代理出産に猛反対し、二人は仲違いしたのだった。 姉夫婦亡きいま、その理由を知ってグレースは絶句する。 義兄は、姉に内緒でジョシュの精子を提供していたというのだ。 なんてこと……姉の忘れ形見は、“わたしたちの子”だというの? 優しい作風が人気のリズ・フィールディング。実はグレースも姉に頼まれ、義兄に内緒で卵子を提供していたのでした。かつては惹かれ合い、そして思いがけず子どもを授かっていた二人の未来は、はたして……?
小さな宿を営むジェニファーは、人工授精で子供を産む条件で 余命幾ばくもない年配の資産家セバスチャンと便宜結婚した。 後継者が欲しいのに病気でそれが叶わない彼と、 結婚はあきらめていても子供の欲しい彼女にとって、都合がよかったから。 ただ……その精子提供者が問題だった。 やがてセバスチャンが亡くなり、まもなく彼の息子レイフが現れた。 長身で、父と同じく億万長者の彼の言葉にジェニファーは震え上がる。 「君のおなかの子供の父親が僕だってことは、知っているんだ」 彼が精子提供者だということは、秘密のはずだったのに……。 レイフはなんのためにやってきたの? まさか、私の子供を奪いに? 〈ロマンス・タイムマシン〉と題してその年の名作をお贈りする企画、1999年は、ハーレクインの黎明期に大人気を博したベテラン作家、スーザン・ネーピア。代理母という先駆的なテーマにロマンチックなエピソードをちりばめた逸作です。