著者 : 吉田修一
横浜で探偵業を営む遠刈田蘭平のもとに、一風変わった依頼が舞い込んだ。九州を中心にデパートで財をなした有名一族の三代目・豊大から、ある宝石を探してほしいという。宝石の名は「一万年愛す」。ボナパルト王女も身に着けた25カラット以上のルビーで、時価35億円ともいわれる。蘭平は長崎の九十九島の一つでおこなわれる、創業者・梅田壮吾の米寿の祝いに訪れることになった。豊大の両親などの梅田家一族と、元警部の坂巻といった面々と梅田翁を祝うため、豪邸で一夜を過ごすことになった蘭平。だがその夜、梅田翁は失踪してしまう……。
39歳になったカメラマン・横道世之介が暮らすのは、東京郊外に建つ下宿「ドーミー吉祥寺の南」。元芸者の祖母が始めた下宿を切り盛りするあけみちゃん、最古参の元芸人の営業マン礼二さん、書店員の大福さん、大学生の谷尻くんらとゆるーっと暮らす毎日に、唐突に知り合いのベテラン教師ムーさんの引きこもりの息子一歩が入居することになって…。
湘南のカフェ店員に一目惚れ、相手をふり向かせたくてサーフィンを始めた「ドーミー吉祥寺の南」の下宿人谷尻くん。その恋を応援する傍らで、最愛の人二千花と過ごした日々を幾度となく反芻する世之介だった。春から夏へ。相変わらずのんびりと季節が移ろうなか、後輩カメラマンのエバと咲子カップルが新しい命を授かり、世之介は「名付け親」に指名される。ところが咲子の容態が一転し…。やがて運命の日がやってくる。
「この香港のどこかを、もう一人の自分が歩き回っているような気がして仕方ないんだ」ボート選手枠で入社して10年、タイムが低迷する偉良はコーチから思わぬ宣告を受ける(『香港林檎』)。「私たち、上海に住んでるのよ。欲しいものは欲しいって、今、世界で一番言える街に」ケガで体操選手を諦め、臨時体育教師になった阿青。結婚目前の恋人には初めてのチャンスが訪れていた。(『上海蜜柑』)。「がんばるって、約束したじゃないか」ソウルのスケート場で働くクァンドンは、三回転ジャンプに挑む赤い練習着の少女に心惹かれるが…(『ストロベリーソウル』)。「誰も悪くない。なのに、誰も幸せじゃないのはなぜだ?」東京五輪が始まった。開会式を前に失踪した部下を探す白瀬は、国立競技場の前に立つ。2021年東京オリンピックと同時進行で新聞連載された話題作。(『東京花火』)。
琵琶湖近くの介護療養施設で、百歳の男が殺された。捜査で出会った男と女ー謎が広がり深まる中、刑事と容疑者だった二人は、離れられなくなっていく。一方、事件を取材する記者は、死亡した男の過去に興味を抱き旧満州を訪ねるが…。昭和から令和へ、日本人が心の底に堆積させた「原罪」を炙りだす、慟哭の長編ミステリ。
「横道世之介」(柴田錬三郎賞)、「長崎乱楽坂」、「自伝小説」(書き下ろし完結篇)など。「一緒に変わろうぜ。もう昔の自分なんて忘れてさ」(「横道世之介」より)いまを生きる人気作家の全9作品。愛蔵版コレクション、ついに完結!
「悪人」(毎日出版文化賞、大佛次郎賞)「ランドマーク」「さよなら渓谷」など。早く嘘を殺さないと、真実のほうが殺されそうで怖かった(「悪人」より)「自伝小説3」(書き下ろし)など全9作品、愛蔵版コレクション!
「パーク・ライフ」(芥川賞)、「東京湾景」、「最後の息子」(デビュー作)、書き下ろし「自伝小説2」、単行本未収録作など、全14作品を収録。時代が生んだ人気作家の愛蔵版コレクション!
職を失い、年老いた母を抱えて途方に暮れる男。一世を風靡しながら、転落した元アイドル。道ならぬ恋に落ちた、教師と元教え子。そして、極北の地で突如消息を絶った郵便配達員。彼らが逃げた先に、安住の地はあるのか。人生の断面を切り取る4つの物語。数多の賞を受賞する著者がライフワークとして挑む、傑作小説集第2弾。
職を失い、年老いた母を抱えて途方に暮れる男。一世を風靡しながら、転落した元アイドル。道ならぬ恋に落ちた、教師と元教え子。そして、極北の地で突如消息を絶った郵便配達員。彼らが逃げた先に、安住の地はあるのか。人生の断面を切り取る4つの物語。
「パレード」(山本周五郎賞)、「初恋温泉」、「自伝小説」(書き下ろし)など、初期の傑作短篇から永遠の名作まで、全13作品(単行本未収録を含む)。時代が生んだ人気作家の愛蔵版コレクション!
品川の貨物倉庫で働く亮介は25歳の誕生日、出会いサイトでOLの“涼子”と知り合った。どんな愛にも終わりは来るとうそぶく亮介と、愛の力を疑いながら、でもどこかで信じたい“涼子”。嘘と不安を隠し、身体を重ねるふたりは、やがて押し寄せる淋しさと愛おしさに戸惑う…。東京湾に向きあった、品川埠頭とお台場に展開する愛の名作に、その後を描く短篇「東京湾景・立夏」を増補した新装新版。
バブルの売り手市場に乗り遅れ、バイトとパチンコで食いつなぐこの男。横道世之介、24歳。いわゆる人生のダメな時期にあるのだが、彼の周りには笑顔が絶えない。鮨職人を目指す女友達、大学時代からの親友、美しきヤンママとその息子。そんな人々の思いが交錯する27年後。オリンピックに沸く東京で、小さな奇跡が生まれる。
ビール会社の営業課長、明良。都議会議員の妻、篤子。テレビ局の報道ディレクター、謙一郎。それぞれの悩みや秘密を抱えながら、2014年の東京で暮らす3人が人生の中で下した小さな決断が驚愕のラストへとつながるー「週刊文春」連載時から話題沸騰。吉田修一史上、最も熱い議論を呼んだ意欲作を文庫化。
田園に続く一本道が分かれるY字路で、1人の少女が消息を絶った。犯人は不明のまま10年の時が過ぎ、少女の祖父の五郎や直前まで一緒にいた紡は罪悪感を抱えたままだった。だが、当初から疑われていた無職の男・豪士の存在が関係者たちを徐々に狂わせていく…。(「青田Y字路」)痴情、ギャンブル、過疎の閉鎖空間、豪奢な生活…幸せな生活を願う人々が陥穽にはまった瞬間の叫びとは?人間の真実を炙り出す小説集。
1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」-侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。舞台は長崎から大阪、そしてオリンピック後の東京へ。日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながら、その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか?朝日新聞連載時から大きな反響を呼んだ、著者渾身の大作。