著者 : 四方田犬彦
五木寛之のテーマ別作品集、第3弾! 第3巻目は、【異国ロマンス集】として、ソ連の国境地帯カレリアの哀しみ、ソフィアの村に残されたロシアイコン(聖像画)など、戦争と革命、民族の哀愁を伝える歴史ロマン小説6篇を収録。 巻末には、四方田犬彦との対談解説を掲載。 【収録作品】 『霧のカレリア』(1967年) かつてフィンランドとソ連の国境地帯であったカレリア。領土を奪われた民族の哀しみと誇り。 『ソフィアの秋』(1968年) ブルガリアの首都ソフィアの村に残されたロシアイコン(聖像画)をめぐるロマンと幻想。 『夏の恐れ』(1967年) ノルウェー娘のジュリーはムンクの〈叫び〉に死の戦慄を覚える。ドイツに抵抗した家族の悲哀。 『赤い広場の女』(1967年) 美貌のウクライナ娘は、なぜ未来を捨てたのか。ドイツの占領がもたらした6歳の少女の悲劇。 『白夜のオルフェ』(1966年) 米軍基地の黒人下士官の血を引く少年と、誇り高きスウェーデン娘との純愛がもたらした結末は? 『ローマ午前零時』(1969年) 五月革命の混乱の中、私はCM祭での入賞を狙っていた。しかし私には、メーデー事件の過去があった。
ソウルの大学への就職話というのもそれほど悪いものではないかもしれない。なにしろ自分はこの2年というもの、横文字ばかり読んできて、すっかり頭が欧米向きになってしまった。フランス語も英語も存在しない、この不思議な文字の連なりからなる国に足を向けるというのも、考えようによっては面白いに違いない。焼肉もキムチも好きだ。焼肉は食べ放題だっていうではないか。きっとこれは真の意味で冒険となるだろう。何しろまったく予備知識のない社会に、白紙同然の状態で行こうとするのだからな。となれば、ぐずぐずはしていられない。今すぐパスポートを申請し、ヴィザの発給を受け、この文字に少しでも親しんでおくことだ。わたしはそう決意した。わたしはパスポートを受け取ると、その足で南麻布にある大韓民国大使館に向かった。 1970年代に日本人が韓国を訪問するには、理由と期間の如何を問わず、ヴィザの発給を受ける必要があった。とりわけわたしの場合には、観光や就学のヴィザではない。一年間を外国人教師として過ごすには労働ヴィザを取得しておかねばならない。それは極めて稀なことだったのである。…… 「ところで皆さん、韓国に行ったことはありますか。」宴会のなかで梁さんの発したひと言が「わたし」の運命を大きく変えた。20代前半の「わたし」は日本語教師として、ソウルの大学に赴任し、そこで朴正煕大統領暗殺、戒厳令の施行に遭遇する。『ソウルの風景』(岩波新書)の著者による渾身作。 第1章 出発まで 第2章 到着直後 第3章 城市ソウル 第4章 日本人と僑胞 第5章 残滓と模倣 第6章 全羅南道への旅 第7章 里門洞 第8章 大蛸来韓 第9章 アジョシの還暦 第10章 夭折の映画監督 第11章 戒厳令発動 エピローグ
われわれはまだ生きている。来たるべきわれらの思考の誕生にふさわしいささやかなものだけを携えて。鳥となって、自分の無から存在を引っ掴む。繰り返される筆舌に尽しがたい惨事。それを記録する詩人ダルウィーシュ。パレスチナからのこの声は記憶されねばならない。
カポーティ、マキナニー、オーネット・コールマン、ベルトリッチ…遥かモロッコから、現代芸術に常に豊かな霊感を送り続けるアメリカ文学界の隠者。80年代に入り、ブームとも言える再評価が行われ、全作品が本国で復刻されたその伝説の作家の代表作にタンジールに赴いた訳者によるインタビュー、評伝を併録。