著者 : 坂本憲一
1963年11月。イージー、43歳。美貌の女教師アイダベルから雑種の小犬を預ってくれと頼まれたイージー。愛犬が夫に殺されそうだとの懇願に引き取ってみたものの、いっこうになつかない。しかも勤め先の学校の農園で男の死体が見つかった。そのしゃれのめした格好の男の死体はアイダベルの義兄ローマンだという。そして、小犬を引き取りに来ないアイダベルを自宅に訪ねたイージーを待ち受けていたのは、アイダベルの夫ホランドの死体のみだった。誰が二人の男を殺害したのか?さらにアイダベルはいったいどこへ?J・F・ケネディ暗殺時の60年代のアメリカ黒人社会をリアルに描く、ハードボイルド小説の白眉。
国税庁からの通告が、イージーの平穏な日々に終止符を打った。彼の隠し財産を至急申告しないと逮捕するというのだ。窮地に立たされた彼は、FBIにおとり捜査の協力を約束する。彼は著名な活動家の行動を探るが、やがて恐るべき陰謀の渦中に…赤狩り旋風が吹き荒れるロスの街で、黒人探偵イージーが労働運動絡みの殺人事件の真相を追う。
アイルランド系アメリカ人のヨット・ブローカー、ポール・シャナハンのもとに、四年もの間待ち続けた依頼が舞いこんだ。IRAのために、地中海からアメリカまで船を運ぶ仕事-彼はかつて、IRA暫定派とパレスティナ・ゲリラとの連絡役だった。ところが、四年前に彼がCIAの回し者だという噂が立ち、そのために組織から遠ざけられていたのだ。久しぶりの依頼は、IRAが53基のスティンガー・ミサイルを買うための500万ドルの金貨を、ヨットでアメリカまで運ぶというものだった。500万ドルの資金の出所には、イラクのサダム・フセインの影が見え隠れしていた。折りしも湾岸戦争が勃発しようとしており、フセインは西欧各地でテロを煽動しているらしい。IRAからの見張り役二人とともに金貨を積んだヨットで出港したシャナハンは、しかし意外な行動に出る…。
何者かに妻を殺されて生きる気力を失っていた造船所の経営者ティム・ブラックバーンは、過激な環境保護組織「ジェネシス」に入ったまま行方不明になった娘を探すためにフロリダめざし旅立った。世界各地の環境保護団体が一堂につどう会議に「ジェネシス」のリーダーが出席するかもしれないという情報を入手したのだ。だが、それは、嵐吹きすさぶ地の果てパタゴニアの海まで続く苛酷な闘いの旅のはじまりにすぎなかった。
1961年のロサンゼルス。ホワイトハウスには若きジョン・F.ケネディ大統領がいて、南部ではマーティン・ルーサー・キング牧師を指導者にして黒人解放運動が燃えさかっていた。ブラック・アメリカの新しい夜明けが叫ばれるなかで、黒人の私立探偵イージー・ローリンズは不動産投資に失敗し、破産状態に近かった。親友マウスも五年の刑期を終えて出所していた。四十一歳になったイージーにとって、この五年は悲惨な日々だった。親友が酒場の路地裏で人を撃ち殺すところを目撃した彼は、悪夢に悩まされた。しかも、可愛い子供がふたり残ったものの、妻のレジーナは自分のもとを去っていた。そんな彼のもとに、人捜しの依頼がもちこまれた。捜す相手はなんと“ブラック・ベティ”ことエリザベス・イーディ。イージーがテキサス州ヒューストンの少年時代に憧れ、はじめて異性にめざめさせられた年上の女であった。ベヴァリーヒルズの大富豪の家で働いていた彼女の行方を捜すことは簡単に思われたが、事は連続殺人へと発展していき…。セピア色のロサンゼルスを舞台に黒人の私立探偵イージー・ローリンズの活躍を描く人気ハードボイルド・シリーズ、『ブルー・ドレスの女』『赤い罠』『ホワイト・バタフライ』に続く第四弾。
青い海に囲まれた楽園バハマで雇われ船長を務めるニックは、ある日、弾痕も生々しい無人のヨットを発見した。残された海図の記入は“殺しの島”という名前の島で途絶えていた…。やがてニックは米国議員の子供を麻薬中毒から更生させるための航海に出る。だが海には卑劣な罠が待ち構えていた。船と友を失い、恋人も行方不明になったニックは、事件の黒幕が“殺し島”に住むことを突き止め、島を戦場に変えると誓う。
ひさしぶりに帰郷した伯爵ジョン・ロセンデールは、ヴァンゴッホ初期の《ひまわり》を探そうとしていた。四年前、この名画は母が売却する直前に盗まれてしまった。その犯人であると疑われたジョンは、海を放浪する旅へと逃げだしたのだ。だが母亡きあと、障害をもつ下の妹の面倒をみるために、行方不明の絵を見つけださねばならない。そう決心したジョンは何者かに命を狙われる羽目に。日本冒険小説協会大賞受賞の傑作。
大西洋横断ヨット・レース優勝などで名を馳せ、いまは造船所を経営している英国の冒険家ブラックバーンは、愛する妻が殺されたことを知った。二人一緒に帆走に出かけるはずだった船が、偶然妻が一人で乗っているあいだに何者かによって爆破されたのだった。警察の推理を聞いて、ブラックバーンは耳を疑った。遺産相続を狙った、娘のニコルの仕業ではないかというのだ。そんなはずはない、と彼は激しく否定した。勇敢なヨット乗りだったニコルは、双子の弟が死んでから不安定になり、ある日過激な環境保護組織〈ジェネシス〉に身を投じると宣言して出奔したまま消息を絶っていた。そんな折、核実験への抗議運動を報じる新聞写真の中にニコルが写っているのをブラックバーンは発見した。いまや残されたただ一人の家族への思いに衝き動かされ、娘に会うため、彼は旅立ちを決意する。それが、神のつくった最後の土地、嵐吹きすさぶパタゴニアの海まで続く苛酷な闘いの旅になるとは知らずに…。英国冒険小説の新旗手が放つ、白熱の冒険サスペンス。
1948年、ロサンゼルス。飛行機工場を馘になった黒人労働者イージー・ローリンズは、家のローンを返すため、どんな仕事でも引き受ける気でいた。とはいえ、自分が探偵の真似事をして人さがしをすることになろうとは、思ってもいなかった。さがす相手は、黒人のもぐり酒場に出入りする美貌の白人女ダフネ・モネ。なにやら厄介ごとの匂いがぷんぷんした。だが、仕事の選り好みをしている余裕はない。イージーは手はじめにジャズ関係者が集う非合法のナイトクラブ〈ジョンの店〉を訪れ、そこでダフネを知っている黒人女を見つけだした。ところが、ダフネの居場所を聞き出すまえにその女が無残な撲殺体となって発見されたことから、事件は思わぬ方向へ。アメリカ私立探偵作家クラブ賞、英国推理作家協会賞の処女長篇賞をダブル受賞し、クリントン大統領からも絶賛された衝撃のデビュー作、ついに登場。
英国の名優の息子ニック・ブレークスピアは、父親に反発して海兵隊に入ったが、いまはバハマでチャーター船の雇われ船長をしている。美人でインテリのクルー、エレンとともに長い航海に出ることを夢見ていたニックは、ある日弾痕だらけの遺棄船に遭遇する。船上にあった海図に書き込まれていたルートは、マーダー・ケイ(殺しの島)という悪名高い麻薬ファミリーの巣窟で途絶えていた。それからほどなく、ニックはアメリカの上院議員クラウニンシールドの子供たち、リッキーとロビン-アンを船客として迎えることになった。2人は麻薬中毒で、クルージングに出ることによって使用を断とうというのだ。ところがリッキーとしめしあわせた麻薬の運び屋たちが船を襲って兄妹を奪い去り、ニックの航海士は銃撃戦のさなかに殺されてしまった。官憲さえも麻薬密輸組織には手を出さないバハマで、ファミリーに闘いを挑む決意をしたニック。やがてマーダー・ケイが炎の戦場と化す時が来た。『ロセンデール家の嵐』で人気沸騰のコーンウェルが、またもや送る堂々の英国冒険小説。
レベッカ・カーペンターの死体は、10月のある夜遅く、十代の恋人たちが暗闇でのデートを楽しむ展望台で発見された。車の助手席に腰掛けた格好のまま、首に絹のスカーフをきつく巻きつけられて…。この事件が伝統ある東部の田舎町を揺るがしたのは、そのショッキングな殺されかたもさることながら、レベッカ・カーペンターが大金持ちの旧家の出身で、16年間つれそった夫のいる、上流夫人だからであった。そんな女性が、深夜、若者たちの密会場所でいったい何をしていたのか?野心的な地方検事は、これを“セックス”と“富”が絡んだ事件と考え、自分の出世に役立てるべく、捜査官パット・スターバックに警察とは別個の調査を命じた。だが、スターバック自身、町の没落した旧家の一員であったことから事件は思わぬ方向へ…。田舎町で起きたスキャンダラスな殺人事件をめぐり、嘘と欲望で塗り固められた真相に迫る法廷サスペンス。
港々を渡り歩いて気ままな“海のジプシー”暮らしを楽しんでいたジョン・ロセンデールは、母危篤の知らせを受け、故国イングランドへ向かった。じつは、彼は第28代ストウィ伯爵-没落した伯爵家から4年前に逃げ出した当主であった。彼の出奔は、1枚の絵が原因だった。ヴァン・ゴッホの初期の「ひまわり」。母の所有になるその絵は、逼迫した一族を救えるほどの価値のある傑作だったが、4年前に盗まれていた。疑いは絵の保管場所に入ることができたジョンにかけられた。身に覚えのない彼は、一族の白い目に耐えられず海へと逃げ出したのだった。母の死後、残された唯一の財産は精神薄弱である末の妹ジョージーナのための信託基金だけだった。ところが、それさえもジョンの双子の妹エリザベスが狙っていて、もし非情なエリザベスが後見することになれば、愛するジョージーナはどんな扱いを受けるかわからない。行方不明のヴァン・ゴッホを見つけ、コレクターに譲り渡して、ジョージーナの人生を守る。そう決意した彼だったが、何者かに命を狙われる羽目に…。ストーリーテラーの冒険サスペンス。
暴動に紛れて現金輸送車を襲ったのは、おれじゃなかった-。仮出所したばかりの黒人の大男デヴリーズは私立探偵ウォーカーにそう告げた。その事件が起きたのは、20年前のことだった。暴動中にビルが放火され、それに乗じて何者かが現金輸送車を襲ったのである。ビルに放火したデヴリーズは逮捕され強盗の共同謀議で有罪となった。だが放火は、当時知り合った白人の男子学生にそそのかされてやったことだった。この男が強盗を計画し、彼に罪を被せたのか?ウォーカーは白人男の足どりを追って過去の記録にあたり始めるが、そこには野望に満ちた策略が隠されていた。チャンドラーの衣鉢をつぐ著者が自信をもって放つ、正統派ハードボイルド。アメリカン・ミステリ賞受賞作。
とても仕事にとりかかる気分ではなかった。それでも、親友のトニーが失踪したとあっては腰をあげないわけにはいかなかった。どうせ大した事件ではあるまいと思いつつ、ハンク・プリンスは調査を開始した。ところが事態はもっと深刻だった。どうやら麻薬取引に手を染めていたトニーは、大物密売人から金をくすねていたらしい。それがばれて、命を狙われているのだ。エヴァン・ウィリアムズの黒ラベルとアンディ・ウィリアムズをこよなく愛し、フォークナーを愛読する元3A野球選手に私立探偵ハンク・プリンス、南部の街アトランタに初登場。