著者 : 増田みず子
真っ直ぐな言葉の連なりが織り成す微妙な色合い。 読むほどに人と人との間の心の綾が身に沁みて、 少しだけ人生が愛おしくなる -- そう、小説ってこういうものだった。 長い沈黙のトンネルの果てに、作家がたどり着いた新境地!
1975年以降に発表された名作を5年単位で厳選する全8巻シリーズ第2弾。現代小説は40年間で如何なる変貌を遂げてきたのかーー
昭和はじめの浅草を舞台にした川端康成の都市小説。不良集団「浅草紅団」の女首領・弓子に案内されつつ、“私”は浅草の路地に生きる人々の歓び哀感を探訪する。カジノ・フォウリイの出し物と踊子達。浮浪者と娼婦。関東大震災以降の変貌する都会風俗と、昭和恐慌の影さす終末的な不安と喧騒の世情をルポタージュ風に描出した昭和モダニズム文学の名篇。続篇「浅草祭」併録。
孤独の彼方の一筋の光のごとき夢…。都会の片隅、一人の若い女性の心の中にひっそりと咲く夢を描き、ひとのかたちとひとの棲む此の世のかたちを清澄な筆致で確実に捉える純文学連作長編小説。
広大な神殿に住み、神の声を聞く童女が、ひとりの少年に光の矢を向けられた時から、不思議な変化が起る…。寓話形式の中に、著者が描き続けてきた「個」へのあらたなイメージが表出する表題作など最新作八篇。
今朝もまた、街角の自動販売機の陰から見知らぬ男の気弱な眼示しが執拗に見江子にからみつく。児童館に通う幼児にいたずらしていた男が捕まった日、その男も忽然と消えたが…。見つめる視線と見つめ返す視線の曖昧な共犯的交錯のなかに、孤絶する現代人の心の内景をとらえた表題作ほか最新作4篇を収録。
孤細胞(シングル・セル)のように生きる一大学院生と女子学生の共生と別離ー単独者の生の論理を思考実験的に追求し、人間の永遠の孤独と現代の愛の窮極のかたちを豊かな筆力で描き切った第14回泉鏡花文学賞受賞の長篇小説。