著者 : 多島斗志之
こんな時、あなたならどうしますか?同級生の母親の不倫現場を目撃してしまったら?姉の婚約者が、ある犯罪の常習犯だとしたら?-おだやかに過ごしたいと願う少年が遭遇する7つの出来事。テレビドラマ化された3編(「言いません」「言いなさい」「罰ゲーム」)を含む傑作短編集。他に類を見ない読後感と驚異の“どんでん返し7連発”をぜひ体感してください。
昭和30年、春。新任教師の明子は三重県伊賀の山里にある分校に赴任した。小さな村ならではの誰もが顔見知りの人間関係や、無邪気な子どもたちが教えてくれる自然の美しさに、初めての地での緊張もほぐれていく。そんな中、誰にも心を開かず、突飛な行動をとる生徒・朱根のことが気にかかっていた明子は、思いがけない事情を垣間見る…。清冽な空気とともに、人々の心の交流を丁寧に描きだす優しく温かい物語。
六甲の山中にある、父の旧友の別荘に招かれた14歳の私は、その家の息子で同い年の一彦とともに向かった池のほとりで、不思議な少女・香と出会った。夏休みの宿題のスケッチ、ハイキング、育まれる淡い恋、身近な人物の謎めいた死ー1952年夏、六甲の避暑地でかけがえのない時間を過ごす少年ふたりと少女の姿を瑞々しい筆致で描き、文芸とミステリの融合を果たした傑作長編。
精神科医の榊は美貌の十七歳の少女・亜左美を患者として持つことになった。亜左美は敏感に周囲の人間関係を読み取り、治療スタッフの心理をズタズタに振りまわす。榊は「境界例」との疑いを強め、厳しい姿勢で対処しようと決めた。しかし、女性臨床心理士である広瀬は「解離性同一性障害(DID)」の可能性を指摘し、榊と対立する。一歩先も見えない暗闇の中、広瀬を通して衝撃の事実が知らされる…。正常と異常の境界とは、「治す」ということとはどういうことなのか?七年の歳月をかけて、かつてない繊細さで描き出す、魂たちのささやき。
藍子叔母は、いつも物憂げで無関心で孤独だった。まるで、心の内部に暗くて深い裂け目が横たわっているかのように。ふとしたきっかけで叔母の謎多き過去を調べるようになった私は、叔母の旧友という老婦人から、古ぼけた八ミリフィルムを見せられた。そして、その中に写し撮られていたのは、初々しく、朗らかで、健康的な美しさを持つ、女学生時代の叔母の姿だった。いったい何が叔母を変えたのか。香気あふれる文芸ミステリー。
「パール・ハーバー」の記憶をいやでも呼び覚まされる12月のワシントンDC。はじまりは、ある不幸な交通事故だったー。被害者の母である現職警察官は、加害者の日本人留学生カオリ・オザキへの復讐を誓い、姿を消す。そして、日系FBI特別捜査官タミ・スギムラら警察当局と暗殺者との一大攻防戦の幕が切って落とされた!日米両国の狭間で翻弄される三人の女性の運命は。
神戸の異人館に住む日本人の若い女の元へ英国の大富豪ジョン・ポール・ゴッティの使いだという男が現われた。女の祖母である亡命ロシア人が残した古い黒鞄を法外な値で買い取りたいという。女が途方もない申し出を断ったとき、世界を揺るがす巨大な歴史の暗部が浮かんできた。幻の密約文書の正体は何か?
50口径ライフルの赤外線スコープが捉えた日本人少女の顔-ジャパンバッシングかまびすしいワシントンDCで起った不幸な交通事故を清算させるべく、元女性警官の指が引き金にかかった。護る側攻める側入り乱れて、聖夜のアメリカに展開する戦慄のサスペンス長編。
極寒の地シベリアを肥沃な穀倉地帯にする。-これは建国以来のソビエトの夢だ。その実現のためにソ連は「気候改造」を計画している、との情報をキャッチしたCIAは、日本の内閣情報調査室に共同作戦を提案してきた。内調室長稲月修造とCIAのバリンジャーの作戦は、来日中のソ連国家計画委員会議長ミハイルを誘拐して訊問しようというものだ。そして、その場所に選ばれたのが、京都の桂離宮だったが…。
戦後も40年余りたち、鳥居甚一の許に差出人不明の手紙が届いた。内容は、昭和19年11月6日暗夜にフィリピンで焚いた〈四つの火〉を再現しよう、との呼びかけだった。19年当時、鳥居は日本陸軍伍長で、浅田少尉らと命令をうけて、バターン半島のある地点で焚き火をした。同様の指示で他の3小隊も各地点で火を焚いた。〈四つの火〉が焚かれた理由は、何も知らされなかったが、捕虜収容所で耳にした噂は、〈四つの火〉こそ莫大な金塊を積んだ輸送船を自沈させた場所の“目印”であったというものだった。戦後の昭和36年、鳥居と浅田はある事件に巻きこまれて“噂”に信憑性があることを知ったのだが、興味も示さず、その後も平穏に生活を送ってきた。だが今回の〈四つの火〉再現呼びかけには奇妙に引きずられるのだった。呼びかけ人は誰?〈四つの火〉はどこに?読者をグングンひきずりこむストーリーテラーぶりには定評ある大型気鋭が、満を持して放つ傑作ミステリー。