欲望が種を発芽させ、希いは光にむかって葉をひらかせる。作中人物それぞれの思いの照り返しを受けて繁茂する、緑なす木々たちの肖像。芥川賞、三島賞に輝く著者が、樹木をキー・イメージに放つ物語の群落、出色の10篇。
コンピュータに精通した青年がサブリミナルテープを使って大衆を操作しようとする、芥川賞受賞作「表層生活」。環境保護派と開発派の板挾みになった広告会社社員が〈死の楽園〉づくりをねらう老僧に翻弄される「わが美しのポイズンヴィル」。テクノロジーの最前線で生命の捉えなおしに挑戦した二篇の意欲作。
三島賞、芥川賞の両賞を受賞した唯一の新鋭が、最前衛の文学意識で描く、初めての長編。