著者 : 大島真寿美
昭和のあの頃、百万人の少女たちを夢中にさせた漫画雑誌があった! 1969年、人類が月面着陸をした年に出版社に就職した辰巳牧子は、経理補助として「週刊デイジー」「別冊デイジー」編集部で働き始める。 親分肌の川名編集長が率いる「週デ」は、漫画班・活版班・グラフ班に分かれて編集部員一同、日々忙しく動き回り、「別デ」を率いる小柳編集長は、才能あふれる若い漫画家たちを見出し、次々にデビューさせていた。 いつかは男性編集者に並んで漫画を担当したいと願う西口克子や香月美紀、少女漫画という縁のない世界に放り込まれ戸惑う綿貫誠治、暇さえあれば雀荘で麻雀ばかりしている武部俊彦……。 女性漫画家たちがその若き才能を爆発させ、全国の少女たちが夢中になって読んだ“100万部時代”。編集部で働くひとりひとりの希望と挫折、喜びと苦しみに光をあて、時代の熱を描き出す大河長編! ◆著者プロフィール 大島真寿美(おおしま・ますみ) 1962年愛知県生まれ。1991年「宙の家」が第15回すばる文学賞最終候補作となる。1992年「春の手品師」で第74回文學界新人賞を受賞しデビュー。2012年『ピエタ』で第9回本屋大賞第3位入賞。2019年『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』で第161回直木賞受賞。『それでも彼女は歩きつづける』『空に牡丹』『結 妹背山婦女庭訓 波模様』『たとえば、葡萄』ほか著書多数。
まったく先の見えない状態で会社を辞めてしまった美月(28歳)。転がり込んだのは母の親友・市子(56歳)の家。昔なじみの市子たち個性の強い大人に囲まれ、一緒に過ごすうち、絶望の中にいた美月は徐々に上を向く。誰の心にも存在する将来への恐れや不安、葛藤。何度も心が折れそうになりながらも、やがて美月は自分の夢と希望を見つけていく…。
女の子特有の仲良しごっこの世界を抜け出したくて、高校を突発的に中退した美和。祖父が営む小さな銭湯を手伝いながら、取りまく人々との交流を経て、進路を見いだしていく。ほわほわとあたたかな物語。 ほどけるとける 1 ゆめ 2 あこがれ 3 女ともだち 4 かがやき 5 きぼう 6 おもいで フィルムの外
直木賞作家が描く「幻の女流作家」の運命! 明治の後期に、沖縄の士族の家に生まれたツタ。父親の事業の失敗によって、暮らしは貧しくなり、父親が亡くなったことで母と二人きりの暮らしになった。しかし、女学校の友人・キヨ子の家で音楽や文学に触れるうち、「書くこと」に目覚める。 雑誌の短歌欄へ投稿を始め、千紗子という筆名に出会い、自分の裡にあるものを言葉にし始めた。窮屈な世界から自分を解き放つ術を得たツタは、やがて「作家として立つ」と誓う。 高校卒業後の教員としての仕事、異国での結婚、愛する我が子との別れ、思いがけない恋愛ーーさまざまな経験を経て、ツタはとうとう作家としてデビューする機会を得た。昭和七年、婦人雑誌に投稿した短編小説が意外な形で評価されたのだ。 ところが、待ち受けていたのは、思いもよらない抗議だった……。 『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』で直木賞を受賞した著者が、実在した「幻の女流作家」と呼ばれるひとりの女性の数奇な運命を描く。 【編集担当からのおすすめ情報】 『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』で第161回(2019年上期)の直木三十五賞を受賞された、大島真寿美さんの、受賞後初の文庫化作品になります。 主人公は作家。『あなたの本当の人生は』(直木賞候補)、『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』に通じる「書くこと」をテーマにした物語です。
私のご先祖様・静助は、江戸から遠くない村で大地主の次男坊として生まれた。静助が幼少の頃、世が一変する明治維新を迎えたが、何不自由のない暮らしを送っていた。ある日、静助は両国の隅田川で打ち上げ花火を見物し、一目で心奪われる。より鮮やかな花火を上げるため、花火屋達は競い合っているという。村に戻ってからも花火への情熱が消えない静助は、潤沢な資金を元に職人を雇い、花火作りに夢中になるが、富国強兵へ向かう時の流れが、静助一族を飲み込んでいくー。一族誰もが語り継ぐ、花火に生きたご先祖様に思いを馳せるファミリーヒストリー。
第161回直木賞受賞作。 選考委員激賞! 虚構と現実が反転する恐ろしさまで描き切った傑作! ──桐野夏生氏 いくつもの人生が渦を巻き、響き合って、小説宇宙を作り上げている。──高村薫氏 虚実の渦を作り出した、もう一人の近松がいた── 「妹背山婦女庭訓」や「本朝廿四孝」などを生んだ 人形浄瑠璃作者、近松半二の生涯を描いた比類なき名作! 江戸時代、芝居小屋が立ち並ぶ大坂・道頓堀。 大阪の儒学者・穂積以貫の次男として生まれた成章(のちの半二)。 末楽しみな賢い子供だったが、浄瑠璃好きの父に手をひかれて、竹本座に通い出してから、浄瑠璃の魅力に取り付かれる。 父からもらった近松門左衛門の硯に導かれるように物書きの世界に入ったが、 弟弟子に先を越され、人形遣いからは何度も書き直しをさせられ、それでも書かずにはおられなかった……。 著者の長年のテーマ「物語はどこから生まれてくるのか」が、義太夫の如き「語り」にのって、見事に結晶した奇蹟の芸術小説。 筆の先から墨がしたたる。 やがて、わしが文字になって溶けていく──
働くって、生きるってどういうことだろうー。モモコ、22歳。就活に失敗して、バイトもクビになって、そのまま大学卒業。もしかして私、世界じゅうで誰からも必要とされてないー!?何をやってもうまくいかなかったり、はみだしてしまったり。寄るべない気持ちでたゆたうように生きる若者の、云うに云われぬ憂鬱と活路。はりつめた心とこわばった躰を解きほぐす、アンチ・お仕事小説!
平穏で地味に見えても、それだけですむ人生なんてない。同窓会の案内がきっかけで二十年ぶりに連絡を取り合った六人の女性。犬と暮らす失業中の領子、娘との関係に悩む明子、元恋人の死に夫が関わっていたのではと疑う穂乃香…深い感動が胸を打つ、終わりと始まりの物語。
この路地を曲がったら、そこはもう、すこし不思議な世界の入口ーー。どこかなつかしい気配が漂う架空の町・明日町の「こんぺいとう商店街」に、人気作家たちが個性あふれるお店を開店する、ほっこりおいしいアンソロジー。ポプラ文庫の人気シリーズ第3弾が文庫オリジナルで登場です! 今回、お店を開く作家は全部で7人。人気のベテランから注目の若手まで、読みごたえのある物語が揃っています! 大島真寿美「カフェ スルス〜一年後〜」/越谷オサム「ブティックかずさ」/青谷真未「エステ・イン・アズサ/秋山浩司「明日の湯」/島本理生「ドイツ料理屋『アイスバイン』」/加藤千恵「多肉植物専門店『グリーンライフrei』」/彩瀬まる「赤城ミート」
おそらく、信じてはもらえまい。でもたしかに彼女はそこにいるー文筆家を目指するみ子は、祖母から一族の秘密を聞かされ、それを書き記すように告げられる。秘密とは、一人の女性のことだった。嘉栄という名のその人は、世間からひた隠しに隠されていた。
離婚して雑貨を作りながら細々と生活する果那。離婚のきっかけになった事件のせいで家では眠れず、雑貨の卸先「梅屋」で熟睡する日々。昔々、子供の頃に誘拐されたときのことが交錯する、静かで美しい物語。
不登校の妹と、出社拒否の姉。 二人暮らしの日々に、ゆっくりと浮かび上がってくる気持ち。 両親の離婚時に独立を宣言した姉と二人で暮らすようになって三年。高三になった菜生は、大学への推薦決定後、学校をさぼりがちになっていた。 そのうち、短大を出て働いている姉までなぜか会社を仮病で休むようになりーー青春の一時期に描く感覚を、こまやかに切り取った物語。
嫉妬と羨望が混じり合う女たちの物語 映画監督・柚木真喜子が海外の映画祭で受賞した。OLを辞めてまで一緒に映画の脚本を書いてきた志保。柚木の友人の後輩で、当時柚木の彼氏だった男を奪い結婚したさつき。地元のラジオ番組の電話取材を受けることになる、柚木とは年の離れた妹の七恵。柚木が出入りしていた画家の家で、柚木と特別な時間を過ごした亜紀美。息子がどうやら柚木に気があるらしいと気を揉む、柚木が所属する芸能事務所の女社長・登志子。柚木に気に入られ、素人ながらも柚木の映画「アコースティック」で主演を演じた十和。 柚木に翻弄される女性六人の心の揺れから、柚木という一人の女性の生き方が見えてくる連作短編集です。最終話にシナリオを配した構成の実験的小説がついに文庫化。 【編集担当からのおすすめ情報】 「大人女子の恋愛&友情小説」シリーズ『虹色天気雨』『ビターシュガー』が大評判となり、ドラマ化もされた大島真寿美さん。女性の心の機微を丁寧に描く大島さんが、物語の構成にこだわりぬいた極上の小説です。 目 次 転 がる石……007 ト ウベエ……039 チュー リップ・ガーデン……073 光……105 伸 びやかな芽……137 流 れる風……175 リ フレクション……209 解 説 風間志織……253
七月のある日「郵便」を発見したぼくの胸がきゅんとするやりとりーー(「郵便少年」森見登美彦)など、夏をテーマに大島真寿美、瀧羽麻子、藤谷治、森見登美彦、椰月美智子が競作。きらきらの刹那を切り取る