小説むすび | 著者 : 大森望

著者 : 大森望

犬は勘定に入れません犬は勘定に入れません

オックスフォード大学史学部の学生ネッド・ヘンリーは、第二次大戦中のロンドン大空襲で焼失したコヴェントリー大聖堂の再建計画の資料集めの毎日を送っていた。だが、計画の責任者レイディ・シュラプネルの命令で、20世紀と21世紀を時間旅行で行ったり来たりさせられたネッドは、疲労困憊、ついには過労で倒れてしまった。シュラプネルから、大聖堂にあったはずの「主教の鳥株」という花瓶をぜひとも探し出せと言われていたのだ。二週間の絶対安静を言い渡されたものの、シュラプネルのいる現代にいては、ゆっくり休めるはずもない。史学部のダンワージー教授は、ネッドをのんびりできるにちがいない、19世紀のヴィクトリア朝へ派遣する。ところが、時間旅行ぼけでぼんやりしていたせいで、まさか自分が時空連続体の存亡を賭けた重要な任務をさずかっているとは夢にも思っていなかった…。ジェローム・K・ジェロームのユーモア小説『ボートの三人男』にオマージュをささげつつ、SFと本格ミステリを絶妙に融合させ、ヒューゴー賞・ローカス賞のほか、クルト・ラスヴィッツ賞を受賞したタイムトラベル・ユーモア小説。

ヘミングウェイごっこヘミングウェイごっこ

ジョン・ベアドはヘミングウェイを専門とする、しがない大学教員。常人離れした記憶力の持ち主であるが、絵に描いたような学者バカ。学内政治に疎く、学者として出世する望みはほとんどない。そんなある日、キーウェストのとあるバーで論文をしたためていた彼は、詐欺師のシルヴェスター・キャッスルメインと知り合いになり、ヘミングウェイの小説の贋作作りを持ちかけられる。ヒトラーの日記やハワード・ヒューズの自伝など過去にも贋作事件の例はある、うまくすれば一攫千金も夢ではないのだ。最初のうちは気が進まなかったベアドだったが、ベトナム戦争で負傷し創作に手を染めるなど、自身の人生をヘミングウェイの生涯に重ね合わせがちな彼は、いつしか我知らずのうちに贋作作りに没頭してしまう。だが夢中になってタイプライターを打つ彼の目の前に、なんとヘミングウェイその人が現われたことから、事態は意外な方向へ進展していくのだった。消失したヘミングウェイ作品の贋作でひと儲けをしようという悪だくみに、パラレル・ワールドの幻想をからめたライトなSFコメディの世界。ヒューゴー賞、ネビュラ賞受賞。

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