著者 : 太田忠司
名探偵・野上英太郎の恋人アキは、親友、紫織の故郷を訪ねた。玄武屋敷と呼ばれる西洋館で、紫織の伯父・多賀谷貴峰を紹介され、気乗りのしない縁談がもち上っていることを知った。貴峰の義妹、真智子と娘の琴絵が多賀谷家の財産を巡って紫織への敵意を露にしていた。さらに、十年前、殺人を犯して姿を消した貴峰の弟が舞い戻ったとの噂が流れるなか、紫織と真智子が行方不明となった。これが恐るべき惨劇の幕開けだったのだ。アキは野上と狩野俊介に助けを求める。気鋭渾身の書下し長篇本格推理。
やおい-やまなし、おちなし、いみなしの略だといわれる。少年と少年との耽美な物語、あるいはそれを愛する少女たちのことをいう。そんな少女の一人が自ら死を選んだ。その死は、少年の失踪と誘拐事件を引き起こし、元警察官阿南を若者たちの内面へと導くことになった。気鋭が挑む新感覚のハードボイルド。
石神探偵事務所の扉を、清麗女学院理事長・塩谷が叩いた。娘・美香の誕生会で奇妙な出来事が起きたのだ。差出人不明の小包が届き、中から小さな硝子細工の鼠が出てきた。美香が大の鼠嫌いと知っての悪戯か。彼女は怯えて、学校へも行かず家に閉じこもってしまった。不気味な送り主を捜し出してほしいとのことだ。硝子細工を包んでいた山吹色の包装紙に事件解決の鍵があると睨んだ狩野俊介は出所を洗うが…。少年名探偵・俊介の素顔を多角的に描きだす魅力満載のスペシャル版。全篇書下しの異色ミステリー集。
野上英太郎と同居することになった俊介とジャンヌは、中学の担任松永麗子先生の訪問をうけた。兄の死の真相を調べてほしい、ときりだした彼女の話は-。20年前の夏、兄・宏が帰宅途上に行方を絶ち、脅迫電話がかかった。身代金を工面し受渡場所へ父親が向ったが、犯人は現われず、警察への通報を詰る電話を最後に連絡は絶えた。宏の左薬指が発見されたが、指には生活反応がない。1年後、街の北端、夜叉沼での幽霊騒ぎから、宏と思われる白骨死体が出た。-俊介たちは20年前の殺人犯捜しに乗り出す。
鴬橋派出所の管内で起きた殺人事件。それが、一人の外勤警官の日常を変えた。死体に残された噛み傷、何かを隠している様子の同僚、夜ごとに駅前にたむろする少年たち。小さな謎が絡まりあい、やがて大きな疑惑へと変貌するとき、警官は自分自身の過去と対することとなる…。新本格の気鋭が新しい分野に挑む。
ロンドンのビッグベンを象った大時計の完成式典で、針が十二時を指した時、仕掛け人形のかわりに死体が飛び出した。死んでいたのは奇矯な行動で知られる時計作家弥武大人。出馬を要請された作家探偵霞田志郎の苦悩を嘲笑うかのように、さらに殺人は続いた。地元有力者高野の屋敷で、大人作の巨大な砂時計の中から孫娘あずみの死体が発見されたのだ。やがて事件の背後に横たわる巨大な悪意に気づいた志郎は…。『上海香炉の謎』に続く人気本格推理シリーズ待望の第二弾。
石神探偵事務所の野上英太郎の所に、突然、少女が現われて“両親を殺した人を捕えて”と強談判。数日後のこと、江戸時代から続く名門遠島寺家の当主で、今は屋敷を改造して旅館の主となっている重義が、野上を訪ねてきた。日く。“人殺しの汚名をすすいでほしい”と。実は先の少女は、重義の兄夫婦の娘で、養女としてひきとっているのだが、その兄夫婦は不慮の死を遂げていて、彼にその疑いがかかっていたのだ。助手の俊介少年とともに、調査にのりだした野上は、竜が棲むという屋敷の庭園で、不可解な怪事件に遭遇する。書下し長編本格ミステリー。
「姉を、助けて」新進作家霞田志郎は、ファンの女子高生水沢美智子に、失踪した姉圭子の捜索を依頼された。姉妹の父正一は、中国陶磁蒐集で知られ、悲劇の武将岳飛愛用の“上海香炉”が自慢だった。志郎が水沢家を訪れた夜、香炉の飾られた寝室で、正一の愛人で美人タレント高岡聖子が殺された。失踪と殺人。この二つの事件に関連はあるのか?志郎は妹千鶴と謎に迫るが、やがて第二の殺人が…。本格推理界期待の新鋭が贈る知的興趣あふれる問題作。
名探偵・石神法全の事務所をひきついだ“僕”の所に、猫のジャンヌを連れた狩野俊介少年が弟子入りした翌日、町で最大の豊川病院・寛治院長が来所して曰く「妻の信子が怪しげな導師を自宅に泊めて、妙な宗教に凝り固っているので、家に来て彼女の迷夢を醒まして欲しい」。早速、僕と俊介君とジャンヌはその豪邸に赴いた。そして、導師が午前零時に庭内にある庵、月光亭において奇跡をみせるというので家族が集まったが、肝心の信子の姿が見えない。その時、突如停電となって…。事件の幕が開いて“僕たち”の活躍が始まる。
父が不審な交通事故死をとげ、大学生の“僕”はそのときから「僕を知る」旅に出た。父の遺した一行だけの遺書「本当はお前も連れていきたかった」は何を意味するのか?推理作家でもある伯父の不可解な行動。“僕”の中に流れる殺人鬼の血。密室殺人事件ののち、驚愕の真相が。書下ろし新本格推理・三部作完結。
美奈-完璧な女の子だった。水着の跡さえない陽に焼けた肌。すらりとした肢体。そんな美奈に出会ったときから僕の「冒険」は始まった。美奈が誘拐され、もうひとりの美少女が殺され、奇妙な刑事が僕に迫ってくる。そして、そして僕の運命を変えた「あの人」。ゆれる青春を直視する新しい推理へのチャレンジ。