著者 : 奈倉有里
第二次世界大戦、モスクワ。ソ連において、敵国の捕虜となることは祖国への裏切りに等しかった。国外の捕虜リストに夫の名を見つけたタチヤーナは、ある決断をするー。ベラルーシ気鋭の作家が描く、忘れ去られる過去への抵抗、そして未来への決意。ノーベル賞作家・アレクシエーヴィチ推薦の文芸作品。
10年の昏睡から生還した青年が見たものは、ひとりの大統領にすべてを掌握された祖国と、理不尽な状況に疑問をもつことも許されぬ人々の姿ー。目を覚ますと、そこは独裁国家だった。ベラルーシのディストピア的現状を文学の力で暴く。
初恋、ベルリン、危険な三角関係。初恋の記憶をめぐる処女作と、大都会に上京した青年の危険な密通。20世紀最高の天才作家、初のコレクション。「言葉の魔術師」の瑞々しい初期名作が、40年以上の時を経てロシア語原典訳でよみがえる。
舞台は1991年夏、猛暑のニューヨーク。亡命ロシア人で画家のアーリクの重病の床に集まる五人の女たちと友人たち。妻として、元恋人として、愛人として、友だちとして、彼らはアーリクとともに歩んだ、喜びと悲しみに満ち、決して平坦ではなかった人生の道のりを追想する。ウォッカを飲み、テレビで報道される祖国のクーデターの様子を観ながら。そして、皆に渡されたアーリクの最期の贈り物が、生きることに疲れた皆の虚無感を埋めていく…。不思議な祝祭感と幸福感に包まれる中篇小説。
ワロージャは戦地へ赴き、恋人のサーシャは故郷に残る。手紙には、別離の悲しみ、初めて結ばれた夏の思い出、子供時代の記憶や家族のことが綴られる。だが、二人はそれぞれ別の時代を生きているのだ。サーシャは現代のモスクワに住み、ワロージャは1900年の中国でロシア兵として義和団事件の鎮圧に参加している。そして彼の戦死の知らせを受け取った後もなお、時代も場所も超えた二人の文通は続く。サーシャは失恋や結婚や流産、母の死など様々な困難を乗り越えて長い人生を歩み、ワロージャは戦場での苛酷な体験や少年の日の思い出やサーシャへの変わらぬ愛を綴る、二人が再び出会う日まで。