著者 : 奥田亜希子
子どもと一緒に参加したかるた教室で、希海は初めてかるたの札を払う。空を切り裂くように飛んだ札。指先に満ちた新鮮なエネルギー……。その記憶が強く刻まれた希海だが、「もうすぐ40歳になる」「暗記力に自信がない」「子どもがいるから」など、気づけば自分に言い訳ばかりして、競技かるたを始めることにためらっていた。かたや夫は、仕事と趣味の優先順位をつけようとするのだった。果たして希海が選びとった道とは? 今、自分の〈好き〉を手放そうとしている人すべてに捧げる物語。『ちはやふる』漫画家、末次由紀さん推薦!
運命もロマンも信じない今の大人の恋愛とは 花屋でパート勤務をしている主人公の彩香は、30代で未亡人となった。高校生の頃恋焦がれた20歳以上年の離れた数学教師との出会いを運命と信じ、想い続け、卒業後に2人は結ばれた。 娘も授かり幸せな生活を送っていたが、その最愛の夫はガンで他界。当時の彩香にとってすべてだった夫。 喪失感を抱え「もう運命なんて信じない。ロマンも要らない」とすべてを諦めて暮らしていたが、ある日、自分が失ってきたものの大きさに気づく。そして、焦燥感にも近い熱い衝動から偶然出逢った男性・今井と「雑な大人の恋愛」をすることに。 ほどよい距離感と大人のルールを決めて始まった二人の恋。だが、徐々にその関係性は歪に綻び始める。お互いを、「運命の果てに立ち尽くしていた者同士」と実感していたはずだったが、徐々に彩香の心には違和感が生じる。そして今井にも、打ち明けられずにいた「真実」があった・・・・・・。 不倫、泥沼、女性が悩み泣き濡れる恋愛・・・・・・。そんな「昭和・平成までの大人の恋愛」とは一線を画す、現代<いま>の大人の恋愛に「本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞」受賞の著者が真っ向から取り組んだ渾身の一作。 【編集担当からのおすすめ情報】 ずっと以前から、奥田さんに「大人の恋愛小説」の執筆をお願いしていた。どうしても読みたい、と思っていた。その後奥田さんが第二回「本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞」を受賞されたと聞いて、「やっぱり!」と思った。その後もぶれずに「大人の恋愛小説」の執筆をお願いし続け、5年ほどの月日を経て、ようやく形になった。打ち合わせをする度、小説の輪郭が見えてくる過程でわくわくしたし、何度も「やっぱり(読みたい)」と思い、そして完成したときには「やっぱり、お願いして良かった。待っていて良かった」と思った。「大人の恋愛小説」という言葉から連想される従来のじっとり感はまったくなく、むしろ読後は爽やか。現代の大人の恋愛は、かくあるべし、と背筋がシャキッと伸びる。分別もある大人の女性は、恋愛にすがりついたりしない。戯れから始まる恋愛も、自分の成長の糧としてしまう。そんな女性の成長譚と逞しさをさらりと紡ぐ、奥田さんのなめらかな文章と小説世界。是非ご堪能ください。 【目次】 1 アジサイ 5 2 カーネーション 38 3 ベニバナ 86 4 カスミソウ 120 5 ワスレナグサ 155 6 アネモネ 189
『三千円の使いかた』原田ひ香さん驚嘆! 見返りがなくてモヤる! 相田愛奈は、正しいことがなにより強いと信じている。無職の彼女の銀行口座には、幸運に得た約2億円があるにもかかわらず、節制した生活を続けている。その一方で、福祉団体等には多額の寄付をしていた。 そんな愛奈のもとに、無職かつ浪費家の従姉妹・忍が転がり込んできた。さらに、Amazonの<ほしい物リスト>で約3万円分の品を贈った相手から、お礼らしいお礼がないことに愛奈は気づく。 なぜ? どうして? 数々の出来事が正しさセンサーに引っ掛かり、悶々とする愛奈の日々が始まった。 贈与と返礼、お金と正しさを描く著者最高到達点
中学教師の葉奈子は中二の夏、ネットの掲示板で声をかけてきた男のもとに身を寄せた。そこは、母親から放置されていた葉奈子が逃げ込んだ場所だった。だが、教え子の女子生徒が抱える秘密と、15年前の夏の記憶が重なったとき、ひとつの真実が立ち上がるーー。心に傷を負ったまま生きる中年男性教師の再起を絡めて描く、希望と祈りの物語。
翻訳家の志織は三十四歳。五年の交際を経て結婚した夫の誠太は、友人から「理想の旦那」と言われ、夫婦生活は安定した温かさに満ちていた。ただひとつ、二人の間に子どもがいないことをのぞいては。あるとき、志織は誠太のSNSに送られた衝撃的な投稿を見つける。“自分の人生に奥さんを利用しているんですね。こんなのは本当の愛じゃないです。”二週間後、夫は失踪した。残された手紙には「自分は志織にひどいことをした、裏切り者だ」と書かれていてー。心をかき乱す極上の恋愛小説。
愛衣は隠しごとの「匂い」を感じる。そのため人間関係が築きにくい。小中高大、そして30歳を過ぎてからの五つの年代を切りとり、その時々の友情の変化と当時の事件を絡めながら、著者の育った年代に即した女性の成長を描く連作短編。
福岡のクリニックで働く「頼れる助産師の白野さん」には、自分とは対照的に美しい妹がいる。佳織は真澄の誇りだったが、真澄には仲の良い妹にも言えない秘密があった……。駆け出しイラストレーター、結婚して白野姓になった主婦、二人の男の間で揺れる女子大生、繊細な小学生。「白野真澄」という同じ名前を持つ者の五者五様のわだかまりと秘密。生きるのに少し不器用で頑固な者たちをを優しい眼差しですくいあげる短編集。
「ポリアモリー(複数愛)に理解があること」が条件のシェアハウスで暮らす四人の男女。たがいの愛のありようをはかり、揺れ動く感情に翻弄されつつ、表面上は日々はおだやかに過ぎていくが……。気鋭の書き下ろし小説。
「ひとりで行きなよ」「いやなの、ねぇ条介お願い、ついてきて」 高校生の僕は幼馴染のアンから、恋人と別れるところを見ていてほしいと頼まれる。 バイトを休んで渋々ながら彼女についていった僕が目にしたのはーー。(『ポケット』加藤シゲアキ) 朝起きてぼうっと生きていたらいつの間にか時間が過ぎ去っている。仕事から帰宅すると、毎日違う知らない友達が家にいる。 そんなある日、一人の友達だけが何度も家に来ることに気がついてーー。(『コンピレーション』住野よる) 誰に何を言われようと行きたくない場所もあれば、なんとなく気持ちがのらない朝だってある。 ふとしたきっかけでサボってしまうかもしれないし、人生を変えるような決意で回れ右をすることもあるかもしれない。 ひとはいつでも「行きたくない」気持ちを抱えている。 僕たちのそんな所在なさをそっと掬い上げる、刹那のきらめきを切り取った物語。
PC上で輝く星だけが、進むべき道を照らしてくれるー。離婚して実家に戻った恵美は、母の介護を頼んでいるホームヘルパー・依田の悪い噂を耳にする。細やかで明るい彼女を信頼していたが、見る目がなかったのだろうか。動揺する恵美に、母が転んで怪我をしたと依田から連絡が入り…。ネットのレビュー、ブログ、SNS。評価し、評価されながら生きる私たちの心を鮮やかに描き出す6編。
「家族か、他人か、互いに好きなほうを選ぼうか」姉と絶縁しシェアハウス暮らしのOL。愛する妻の親族に興味を持てない画家。未来を考えられないせいで離婚された男。突然曾祖母と同居することになった中学生。姉の忘れ形見とほんとうの母娘になりたい女教師。そして婚約破棄をして自暴自棄の女。何かが欠けた6人の男女は、家族と呼ぶには遠く他人と呼ぶには近すぎる存在に救われるーあなたの心を揺さぶる連作短編集。
小学生の同級生で「完璧な存在」だった吉住君を想い、誰のことも愛せないと孤独を感じている早季子。ある日、吉住君と共通点を持つ男性・宮内の存在を知り……。すばる文学賞受賞作。(解説/沢田史郎)
カースト最底辺のグループに所属している中学三年生の基哉。背は180cmと高いが顔は中の下。ある日、大学デビューを果たした兄が、サークル主催のBBQに基哉を誘う。一夏の経験が彼を成長させる。
ティーン誌の編集者の禄は読者からのお悩み相談ページを担当しているが、かつての投稿者との間にトラブルを抱えていた。一方、地方に暮らす中学生の郁美はその雑誌の愛読者。東京からの転校生が現れたことで、親友との関係が変わり始めてしまう。出会うはずのない二人の人生が交差する時、明かされる意外な真実とはー。
同じ屋根の下で暮らす女ともだち。ふたつきに一度だけ会う親子。単純なことばでは表せない“かぞく”。すばる文学賞作家が切り取る6つの関係性の行方はー。紡がれるひと言ひと言が心を揺さぶる、感涙必至の短編集。
小学5年生の時に出会った奇跡のような存在の少年・吉住を忘れられないまま大人になり、他者に恋愛感情を持てなくなった26歳の早季子。恋愛未経験で童貞、超がつくほどのオタクで、人生をアイドル・リリコに捧げる宮内。どうしようもない星たちを繋げるのは、片目を閉じる癖、お互いが抱える虚像。第37回すばる文学賞受賞作。