著者 : 宇佐美まこと
小さな花屋「フラワーショップ橘」の店主志奈子は、50歳を過ぎて地元の刑事、横山昇司と結婚した。白薔薇、桜、ガーベラ、馬酔木……。物言わぬ花たちが、事件に埋もれた真実を、うやむやにされそうになった死の真相を静かに語ってくれる。不条理な殺人事件をめぐる、六つの愛憎ミステリー。
愛媛で起きた学生の事故死と、 三十年後に東京で起きた資産家殺人。 過去と現在が交錯する時に明かされる真相とは? 強い絆で結ばれていたふたりの音楽仲間。 ひとりは転落死し、ひとりは失踪した。 日本推理作家協会賞受賞作家の新境地、慟哭と郷愁のミステリ 東京・赤羽の路上で資産家が殺害された。赤羽署初の女性刑事・黒光亜樹は、本庁から来た癖の強い先輩刑事とコンビを組まされ、彼と対立しながらも懸命に捜査を続けるが、なかなか容疑者は浮かんでこない。同じ頃、松山大学マンドリンクラブのOG・国見冴子は、仲間二人と母校の取り壊し予定の部室棟を訪れていた。すると部室の黒板に、三十年前に失踪したクラブのメンバー・高木圭一郎が最近書き残したと思しき「その時鐘は鳴り響く」を見つけて驚く。それは四年生の夏合宿で事故死した篠塚瞳を含め、五人の間で頻繁に言い交わしていた言葉だった。瞳の死後に失踪した高木は、なぜ今になって部室を訪れ、この言葉を残したのか? 冴子たちは当時の事故について調べ始めるが……。
沙代子は夫の暴言に耐えきれず、衝動的に家を出て、車を走らせていた。そこに飛びだしてきたのはキャバクラ嬢の紫苑。彼女は沙代子の車に乗り込んできて、スポーツ公園の体育館の植栽に隠されているボストンバッグの回収を命じた。中に入っていたのは、なんと現金3000万円!紫苑は金の持ち逃げを提案。この金があれば、沙代子の実家・印刷所の倒産はまぬがれる。しかし、その金は実は誘拐事件の身代金で…。暴力団に、闇の犯罪集団、想定外の連中に追われる羽目に陥った二人。異色のバディは窮地を乗り切ることができるのか!?
造園設計士・高桑は、伝説の作庭師・溝延兵衛に心を奪われていた。彼の代表作である清間庭(せいけんてい)は、昭和初期に吉田房興侯爵が兵衛に依頼したもので、定石を覆す枯山水を作るために、大きな池を埋めていた。だが、その池からは白骨死体が見つかっていた。
人類の歴史の裏で暗躍し、秘かに生き続ける“竜舌”。その正体に気づいたら最期…!古の中国で、ある男の野望と怨念から生まれた「竜舌」。古井戸に宿る奇異な生命体は漢、唐、明…と時代を経ながら歴史のはざまで姿を現しては暗躍し、人知れず不気味な存在へと変貌していく。因果は巡り“思い”を受け継いだ一組の男女が危機を察知するも、刻は満ち…。悠久の刻を超えて巡る“愛と禍”の因果を描く、ホラーサスペンス!
孤独を愛する人気作家が突然の断筆宣言。担当編集者は地方に住む作家の元へひとり、向かった。作家を脅かしているものを探しにー(「夢伝い」)。自らの胎内で卵を孵すセグロウミヘビ。海洋生物マニアの男は「彼女」を手に入れてから生活が一変し…(「卵胎生」)。地球に近づいた彗星、現れた女遍路ー。四国に戻ってきた私は、四十年前の雨の午後を思い出していた(「送り遍路」)。日常に潜む怪異、心理の歪みから生まれる怪奇を描いた全11編を収録。
真面目な女子高生、美優は予期しない妊娠をしてしまう。堕胎するには遅すぎると、福祉の手によって奥多摩にあるゲストハウス「グリーンゲイブルズ」に預けられる。そこには、明良と華南子という兄弟が、深刻な事情を抱えた子どもたちの里親となって、高齢の母、類子と暮らしていた。貧困、未婚、虐待、難しい背景をもつ里子たちを慈しんで育てる彼らにも、運命に翻弄され絶望を乗り越えた苦しい過去があった。話題作『展望塔のラプンツェル』に続く、家族の在り方に迫る物語。
幼い頃、妹の虐待死に絶望した航を救ってくれたのは、クラスメイトの蒼人と彼の家族だった。蒼人の祖父は「生き返った子とそうでない子は、いずれ別れなければいけない」と告げ、不思議な力で蘇った妹を連れて姿を消す。彼らの失踪以降、母と絶縁し孤独な航にとって、妹との再会だけが生きる希望だった。二十二年後、ガオという青年の紹介で妹・満里奈と奇跡的に再会した航は、蒼人たちが人間ではなく不老の魔族と呼ばれる存在だと知る。さらにガオから、世界に蔓延する感染症、タルバガン・ウィルスの原因は蒼人の家族だと明かされる。航のたった一人の友だちは、世界の敵なのかー?壮大なスケールで綴られるホラーミステリ!
アイと富士子は、二十年来の友人・益恵を“最後の旅”に連れ出すことにした。それは、益恵がかつて暮らした土地を巡る旅。大津、松山、五島列島…満州からの引揚者だった益恵は、いかにして敗戦の苛酷を生き延び、今日の平穏を得たのか。彼女が隠しつづけてきた秘密とは?旅の果て、益恵がこれまで見せたことのない感情を露わにした時、老女たちの運命は急転するー。
拉致した女性の体の一部を家族に送り付け楽しむ、醜悪な殺人者。突然、様子のおかしくなった高校生のひとり娘。全ては自らが過去に犯した罪の報いなのかー!?推理作家協会賞受賞作家が、人間の悪を描き切った驚愕のミステリー!
多摩川市は労働者相手の娯楽の街として栄え、貧困、暴力、行きつく先は家庭崩壊など、児童相談所は休む暇もない。児相に勤務する松本悠一は、市の「こども家庭支援センター」の前園志穂と連携して、問題のある家庭を訪問する。石井家の次男壮太が虐待されていると通報が入るが、どうやら五歳児の彼は、家を出てふらふらと徘徊しているらしい。この荒んだ地域に寄り添って暮らす、フィリピン人の息子カイと崩壊した家庭から逃げてきたナギサは、街をふらつく幼児にハレと名付け、面倒を見ることにする。居場所も逃げ場もない子供たち。彼らの幸せはいったいどこにあるのだろうかー。
友人と旅行代理店を経営している四十二歳の鞠子は、十一歳も年下の男と付き合っているが結婚する気はない。そんな鞠子が、亡くなった父から相続することになった元遍路宿の古民家を訪れ、その家で古い遍路日記を見つける。四国遍路で果てる覚悟の女遍路が戦前に書いたと思われる旅の記録。彼女はなぜ絶望し、自分を痛めつけるような遍路旅を続けたのか。女の生と性に揺れる鞠子はこの遍路日記にのめり込んでいくー。
癌で余命半年と宣告されたヤミ金業者のマキ子も、その「田所リース」で働く落ちぶれた取り立て屋の乾も、陸上部のエース阿久津先輩に憧れる高校生の結も、生まれてから車椅子の生活しか知らない身体不自由な博も、彼らの世界は、きっとどこかでつながっているー。底辺で生きる人間たちの業と、人生の不思議な縁を描く、書下ろし長編ミステリー。
ピアノ調律師の一藤麻衣子には、秘密があった。愛媛の山奥にある七富利村で過ごした少女時代、村がダムに沈む直前の村長であった伯父日出夫の無惨な死体を、麻衣子は目撃したのだ。その肩には、くっきりと十字の印が焼きついていた…。それは村人が噂する隠れキリシタンの祟りなのか?深い水底に沈んだ村から二転三転して真実が浮かび上がる、戦慄のミステリ。
毎夜、同じような悪夢を見る。それはさまざまな女をいたぶり殺すことで性的興奮を覚えるという夢だ。その夢はまるで自分がやったかのような錯覚に陥るほど、リアルなのだ。ある日、自分が見た夢と同じ殺人事件の犯人がつかまったニュースが流れた。そこには自分と同じ顔の、違う名前の男が映っていたー。行き止まりの人間たちを描いた全九篇。
民生委員の千加子は、「レインボーハイツ」とは名ばかりの、くすんだ灰色のマンションをたびたび訪れる。そこに住む、なかば育児放棄された5歳児・瑠衣を世話するためだ。他の住人たちも生活に倦み疲れ、暗い気配をまとっていたが、やがて必然のように不幸が打ち続く。住まい以外には特に共通項もない事件の裏にちらつく影は一体…?日常にじわりと滲み出す狂気を生々しく描く、長編ホラーミステリー。
事故で陸上選手生命を絶たれた中学教師、家庭崩壊で転校してきた女子中学生、Iターン就農を目指す初老の男。無関係だった人生が「禁断の森」で交錯した時、平穏な日常が狂い始めた…平家の落人伝説、漂泊の山の民、因習の小集落…期待の大型新人が日本の原風景が残る山村を舞台に、人間の狂気と再生を描く、瞠目の野心作。