著者 : 宇野和美
ブッカー国際賞最終候補作 カラモもうひとつの視点賞受賞作 わたしの予想は、最高の形で裏切られました。 この物語を読んでいるあいだ、イネスはわたしの子どもだったし、 アリナはわたしの友人だったし、ドリスとニコラスはわたしの隣人だった。 「産む/産まない」の先にある人生とはこんなにも長く、 容易でなく、なんとかけがえのないものか。 やっぱりわたしはネッテルの作品がとても好きです。 大塚真祐子(文筆家・元書店員) わたし(ラウラ)とアリナは親友で、20代のころはお互いに「子どもは産まない」と誓い合った仲だった。その意志をかたくなに貫くラウラとは裏腹に、アリナは結婚し、やがて子ども(イネス)を身ごもる。そんななか、ラウラの暮らすアパートのベランダでは鳩が巣を作り、やがてラウラはアパートの隣に暮らす母子家庭の男の子ニコラスとだんだん交流を深めていく。やがてイネスが生まれるが、イネスには生まれついて重度の障害があり明日を生きる保証もない状態だった。 イネスの誕生とニコラスとの交流、ベランダに巣を作った鳩……、ラウラの心は揺れ動き、本人がそれまで思いもしなかった自らの気持ちに気づかされていく。イネスの生命や母という宿命、女として生きることの葛藤……。そして、物語は思わぬ形で最後を迎えることになる。
魔女が死んだ。鉄格子のある家にこもり、誰も本当の名を知らない。村の男からは恐れられ、女からは頼られていた。魔女は何者で、なぜ殺されたのか? 現代メキシコの村に吹き荒れる暴力の根源に迫り、世界の文学界に衝撃を与えたメキシコの新鋭による長篇小説
アルゼンチン辺境で布教の旅を続ける一人の牧師が、故障した車の修理のために、とある整備工場にたどりつく。 牧師、彼が連れている娘、整備工の男、そして男とともに暮らす少年の4人は、車が直るまでの短い時間を、こうして偶然ともにすることになるがーー ささやかな出来事のつらなりを乾いた筆致で追いながら、それぞれが誰知らず抱え込んだ人生の痛みを静かな声で描き出す、注目作家セルバ・アルマダの世界的話題作。
「すべての人間はモンスターであり、人間を美しくしているのは、私たちのモンスター性、他人の目から隠そうとしている部分なのです」(グアダルーペ・ネッテル) 現代メキシコを代表する作家グアダルーペ・ネッテルの世界観全開の短編小説集。 まぶたの整形手術の術前・術後の写真撮影を仕事とする、まぶたに執着せずにいられない男(「眼瞼下垂」)。ほんのわずかなブラインドの隙間から通りを隔てた向こうに住む男性を覗き見ては妄想にふけることをやめられない女(「ブラインド越しに」)。自分をサボテンに同化させたうえに妻をつる植物に見立て、家庭崩壊に突き進む男(「盆栽」)。〈ほんものの孤独〉を探し求め、離島で一夏を過ごす少女(「桟橋の向こう側」)。女性トイレに「痕跡」を発見し、その主を探し求める男(「花びら」)。髪を抜く癖に取り憑かれ生活も精神も崩壊し、出口の見えない状態で病院で療養している女の手記(「ベゾアール石」)。 作品の舞台は、パリ、メキシコシティ、東京、ヨーロッパの架空都市。 他人には言えない習慣、強烈なる思い込み、密かな愉しみ、奇妙な癖を手放せない、あまりに個性的な人物が躍動します。 『赤い魚の夫婦』(2021年刊行)で一躍注目を集めたグアダルーペ・ネッテル。本作でも確かな筆致で読者を作品世界に引きずりこみます。 眼瞼下垂 ブラインド越しに 盆栽 桟橋の向こう側 花びら ベゾアール石 訳者あとがき
悲しみ、死、少年少女のやわらかい心に爪を立てる現実。それらを一瞬にして光に変える、たわいのない噓と幻想。小説の魅力を一粒一粒に閉じ込めたような、繊細で味わい深い掌編小説集。 (帯文/中島京子) 新しく村に赴任してきた若き医師ロレンソは、ある事情から、気がふれていると言われる女の家に一晩泊まることになってしまう。清潔で手入れが行き届いた部屋、美味しい食事とワイン、町で靴屋見習いをしているという一人息子の話を聞くうちに、彼は大地のようなあたたかさに心満たされ始めるが……「幸福」、過ぎ去りしある夏の淡くおさない初恋を詩情豊かに綴った「隣の少年」、人生に疲れ絶望を感じる寡婦の身に起こる摩訶不思議な出来事「噓つき」、心躍らせながら行ったお祭りで娘を襲う悲劇「アンティオキアの聖母」など、リリカルで詩的なリアリズムに空想と幻想が美しく混じりあう21篇を収録。二十世紀スペインを代表する女性作家アナ・マリア・マトゥーテ本邦初の短篇集。
第3回リベラ・デル・ドゥエロ国際短編小説賞受賞。 メキシコの作家が贈る人間とペットにまつわるちょっと不思議な物語。 初めての子の出産を迎えるパリの夫婦と真っ赤な観賞魚ベタ、メキシコシティの閑静な住宅街の伯母の家に預けられた少年とゴキブリ、飼っている牝猫と時を同じくして妊娠する女子学生、不倫関係に陥った二人のバイオリニストと菌類、パリ在住の中国生まれの劇作家と蛇……。 メキシコシティ、パリ、コペンハーゲンを舞台に、夫婦、親になること、社会格差、妊娠、浮気などをめぐる登場人物たちの微細な心の揺れや、理性や意識の鎧の下にある密やかな部分が、人間とともにいる生き物を介してあぶりだされる。 「赤い魚の夫婦」「ゴミ箱の中の戦争」「牝猫」「菌類」「北京の蛇」の5編を収録。 2014年にはエラルデ文学賞を受賞するなど国際的に高い評価を受け、海外では毎年のように「今年のベスト10」に取り上げられる実力派作家グアダルーペ・ネッテルの傑作短編集、待望の日本語訳。
ジャングルと川に挟まれた亜熱帯の町に、理解不能な言葉を話す32人の子どもが現れた。彼らは物乞いをし盗みを働き、スーパーで市民に襲いかかる。そして数ヶ月後、不可解な状況で一斉に命を落としたーー。子どもたちはどこからきたのか。なぜ死んだのか。社会福祉課職員として衝撃的な出来事に関わった語り手が、20数年後に謎をひもといていく。現代スペインを代表する作家が奇妙な事件を通して描く、純粋で残酷な子どもたちの物語。