著者 : 宮前やよい
貴族令嬢でありながら、伯爵である伯父の屋敷で使用人同然の不遇な毎日を送るエリーは、ある日、いとこの付き添いで社交界の花形レディ・ミルフォードを訪ねた。そこで美しい赤い靴を贈られた彼女は、幸運にとまどいながらも胸を躍らせる。ところが、社交シーズンが始まる前に、エリーは突然“悪魔の王子”の異名を持つダミアンに、孤島の城へとさらわれてしまった。まもなく誘拐は人違いだったとわかったものの、一歩も外に出られない悪天候が続き、ロンドンには帰れない。閉ざされた城の暮らしの中で、エリーに細やかな心配りを見せるダミアン。世間の評判とは違う彼の素顔にふれ、誘拐を企てた理由や秘めた孤独を知るうちに、エリーは次第にダミアンに惹かれていく。そして嵐がやんだ朝、突然レディ・ミルフォードが城を訪ねてきて…。
19世紀、ロンドン社交界を揺るがした、稀代の宝石“ブルームーン”盗難事件。社交界にデビューしたばかりのローラは、容疑をかけられた父と国外へ逃亡した。父の無実を信じながら、贅沢も恋も手放してひっそりと暮らす日々。それから10年ー父が急死し、ローラはついにすべてを失ってしまう。ところが、訪れたロンドンの街でローラは見覚えのある貴婦人に出逢い、導かれるままに、老貴婦人のコンパニオンの職と美しい赤い靴を手に入れる。豪奢な邸宅での暮らしが始まると、彼女の前に伯爵アレックスが現れた。彼こそ、かつて甘く激しい恋に落ちた相手ー偶然の再会にとまどいながらも、二人の情熱は一瞬で呼び覚まされる。複雑な想いを抱えたまま10年の時を経て、互いへの想いはさらに深まっていた。しかし、アレックスには隠し続けている秘密があって…。
人里離れた女学校で孤児として育ち、教師となったアナベルは、意地悪な校長と先生たちに囲まれた不遇な日々を送っていた。ある日、王室の貴婦人が突然学校を訪れ、見たこともないほど美しい赤い靴をふとアナベルに差し出す。靴はアナベルの足にぴったりだった。それを見た貴婦人は、なんとアナベルを幼い公爵の家庭教師に指名。思いがけずアナベルは公爵家で働くことになった。豪奢な城には、公爵に無関心な後見人サイモンも暮らしていた。アナベルのひたむきな愛情と明るさに、臆病だった公爵は無邪気な子供らしさを取り戻していく。そして、冷たく閉ざしていたサイモンの心には、忘れていたぬくもりと情熱がめばえ始めていた。ところが、アナベルと公爵が何者かに命を狙われて…。RITA賞受賞作家が贈る“シンデレラの赤い靴”シリーズ開幕!