著者 : 富岡多恵子
逆髪逆髪
かつて姉妹漫才で鳴らした鈴子・鈴江。今はカンペキ主婦に身をやつす姉と、独身の物書きとして芸界の周辺に生きる妹。正反対のようで同じ血縁という強烈な磁力に搦めとられて彷徨う二人の日常の背後に、狂女逆髪と盲法師の姉弟が織りなす謡曲「蝉丸」の悽愴な光景を幻視、富岡節ともいうべき強靭な語りの文体で活写。『冥途の家族』『芻狗』等、家族や性をテーマに書き続けてきた著者の到達点とされる傑作。
湖の南湖の南
13歳で明治維新を、16歳で廃藩置県を、20代で西南戦争を体験し、巡査となった津田三蔵。病いがちの母を案じ、困った兄に悩まされ、妹には櫛や半襟を見立ててやる。不器用で几帳面、ごくまっとうなこの男が、なぜロシア皇太子を襲ったのか。近代化から逸れ、否応なく追いつめられていった一人の男の悲劇を、愛惜をこめて描き出す。
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