著者 : 小倉多加志
たまたま台所にあったボウルに入っていた食用かたつむりを目にしたのがきっかけだった。彼らの優雅かつなまめかしい振る舞いに魅せられたノッパート氏は、書斎でかたつむり飼育に励む。妻や友人たちの不評をよそに、かたつむりたちは次々と産卵し、その数を増やしてゆくが…中年男の風変わりな趣味を描いた「かたつむり観察者」をはじめ、著者のデビュー作である「ヒロイン」など、忘れることを許されぬ物語11篇を収録。
最新設備を誇るアラスカの石油基地にパイプライン破壊の予告状が届き、次いでポンプ・ステーションが爆破された。油田事故調査員のダーモットは調査を開始、犯人が基地内部に潜んでいることを突き止める。だが、ほぼ同時にカナダの油田にも同じ内容の脅迫が届けられ、今度は誘拐事件が起きていた。二つの油田地帯を襲った黒い影を追って、ダーモットは極北の大雪原を駆ける。巨匠が男たちの息詰まる対決を描く冒険小説。
動物学教授のクレイヴァリングはひとり南海の孤島へ船出した。伝説の巨大かたつむりを見つけ、歴史に名を残そうというのだ。だが運よく発見には成功したものの、船が流され、彼は島でたったひとりに…。孤立無援の男を襲う異常な恐怖を描く「クレイヴァリング教授の新発見」他、人間心理の歪みが生みだす恐怖と悪夢に彩られたサスペンスの鬼才の傑作短篇集。
悪夢から目覚めたとき、エリックの部屋は竜巻が通りすぎたあとのような有様だった。-幼いころ事故で両親を失ったエリックは最近、事故の夢をみるようになっていた。だが、そのあと必ず部屋が目茶目茶になっているのだ。謎を解く鍵を求めて、エリックは忌わしい記憶の残る故郷の町を訪れる。そこで彼が見出したのは、町のはずれにある湖畔の洞窟で過去に十数件もの殺人・自殺事件が起きているという事実だった。果たして洞窟にはいかなる秘密が隠されているのか?
閑静な田舎町に奇怪な事件が起こりはじめた。洞窟の見える家では男が妻子を射殺したのち、死亡。ヒッチハイクの若者が洞窟に連れ込まれて切り刻まれる。すべては、この世を支配せんとする闇の力の仕業だった。エリックは自分に課せられた重大な使命を知り、身を挺して対決することを決意する。やがて夜が訪れ、邪悪な力がつぎつぎと住民たちを襲いはじめた。〈悪魔の夜〉が明けるとき、生き残っているのは、人間か、それとも悪魔か?気鋭の力作サイキック・ホラー。
6月と7月の満月の夜に連続して起きた一家惨殺事件は、全米を恐怖の底に叩き込んだ。10人の残酷な方法で殺されたうえ、遺体の状況は現場で不気味な死の儀式が行われたことを示していたのだ。FBIは、かつての異常殺人の捜査で目ざましい業績をあげたグレアムを現場に呼び戻す。グレアムは犯人の心理に自分を同化させる独特の方法で、次の満月までに犯人を捕えるべく、捜査を開始。だが新聞の報道でグレアムの存在を知った犯人が、ひそかに彼をつけ狙いはじめた!冷酷な殺人鬼とグレアムの人知を尽くした対決を描く傑作サイコ・サスペンス。
詩人・画家であるウィリアムス・ブレイク描くところの〈大いなる赤き竜〉。その姿に自らをなぞらえて、恵まれぬ運命に復讐するかのように冷酵な殺人をくりかえす男、ダラハイド。新聞記者を生贄にし、不敵な挑戦状を叩きつける彼に、グレアムら捜査側は、なす術もなく翻弄される。だが、一人の盲目の女性との出会いを契機に、ダラハイドの自我は二つに分裂しはじめた!はたしてグレアムは次の満月が昇るまでにダラハイドを阻止し、第三の惨劇を防ぐことができるか?鬼才が人間心理の深淵に潜む怖るべきものを垣間見せる戦慄のサスペンス大作。
どこにでもある平和で静かな田舎町に、“それ”はある日突然やって来た。列車の脱線事故、ピクニック場での惨事、狂気にとらわれたとしか思えぬ意味不明の自殺、そして町のそこかしこで起こる不可解な事故死の数々…。町の新聞記者ジョン・ハモンドは事件解明にのりだした。謎を解く鍵は、ハモンドの幻影に執拗に現われる行進する足音と歌声。彼は事件の背後に超常的なものを感じとり、心霊能力者に助けを求めるが…。英国のS・キングと称される新鋭の話題作。
暑苦しく、騒がしいニューヨークを逃れて、ひと夏を郊外の別荘で快適に暮らしたい…。誰もがいだく望みを、ロルフ一家は実現することができた。美しい自然にかこまれた、壮麗で古風な屋敷、しかも、賃貸料は格安。ただ、ひとつだけ奇妙な条件があった。「家」の所有者の兄妹が留守のあいだ、老母の食事の用意をして欲しい、というのだったが…骨薫品がみちあふれた壮重な屋敷で次々と起こる奇怪なできごと。高まるサスペンス、蝕む狂気。やがて恐怖の幕は開いた!