著者 : 小山田浩子
「ぼくのおじいちゃんは戦争で兵隊になって南方に行きました。」 家族に戦争体験を聞きまとめる宿題を夏休みに課された、1983年生まれ、小学6年生の千本慶輔は祖父の経験を提出した。慶輔が大学4年の時にその祖父も亡くなり、家族の間であの作文のことが話題に上がる。曰く、祖父は終生大事にしていて、祖父から直接聞いた記憶のない家族は「よくぞ書き残してくれた」と感極まっているのだが、書いた本人には落ち着かない背景があった。 一方、慶輔の同級生、夏目苑子は祖母の体験をまとめ、平和への祈念で締めた作文は先生やクラスから高く評価されたのだが、慶輔に「ウソなろうが」と糾弾される。 時は移り2024年。前年秋にイスラエルのガザ侵攻が起こり、苑子は元夫の妹のSNSと同僚の活動からパレスチナ問題に興味を持っていくのだが…。
植物や花、虫やさまざまな生き物が乱舞する、色鮮やかで心躍る「子供の世界」へ! 二人の少年が川原で拾った、怪我をした犬の命運は。(「心臓」) 子供が飲み込んでしまったスモモの種はいつ出てくるのか。(「種」) 「穴」で芥川賞を受賞して以来、独自の小説世界を築いてきた小山田浩子さん。近年では海外に招かれる機会も多く、「日本発のマジックリアリズム」の旗手として注目を集める著者が、言葉の奔流のような文体と、顕微鏡をのぞきこむような高精細な描写で「子供の世界」に挑む9篇。 子供の世界へ身体ごとダイブし、子供が見るように世界を見る、唯一無二のカラフルな小説集。 はね 心臓 おおしめり 絵画教室 海へ 種 ヌートリア過ぎて 蛍光 ものごころごろ
コロナ禍で経験した日常のキワが蘇る、超絶細密描写にハマること必至の連作。夫に付き添い初めての救急車でやってきた深夜の病院の待合室。ふと思い出したのは、子供の頃に聞いた、赤い猫を見ると死ぬという噂ーーパンデミックというついこの間の出来事を背景に、ある平凡な夫婦とその周りの人々の生活を精緻に描き、日常の外側に読者を連れていく。海外でも翻訳多数の気鋭作家による最新連作長篇。
思いもよらない人々や異界との出会いを生み、読む/書く人々の試行錯誤の場となる「公園」を目指して、様々な分野のエッセイ・小説・漫画を収録する文芸雑誌がいよいよ創刊。 特集は「矛盾」。矛盾をいかに抱えていくか、矛盾があるからこそ可能になることは? 小説家、コーヒー店店主、数学者、物理学者、など様々なフィールドの書き手が「矛盾」を描く15のエッセイ・小説を集めました。 創刊準備号に引き続き「この1年に読んだ本」では、ジャンル・新旧を問わず、執筆者・制作者が印象に残った全21冊を紹介。 連載・小特集「これから読む後藤明生」では、漫画家・panpanyaが後藤明生の小説を読んで描く漫画をはじめ、エッセイ2編を収録。 すべてのページに画家・佐貫絢郁の書き下ろし挿画掲載。 巻頭言 ようやく創刊する『代わりに読む人』 この1年に読んだ本 2022-2023 ・panpanya/松尾信一郎/わかしょ文庫/小山田浩子/はいたにあゆむ/松尾模糊/今村空車/佐貫絢郁/蛙坂須美/飯村大樹/二見さわや歌/伊藤螺子/伏見瞬/永井太郎/深澤元/コバヤシタケシ/北村さわこ/牧野楠葉/陳詩遠/友田とん 特集 矛盾 ・友田とん 「矛盾」が考える ・はいたにあゆむ 環 感 勘 歓 ・今村空車 芝生の習作 ・わかしょ文庫 よみがえらせる和歌の響き 実朝試論 ・松尾模糊 海浜公園建設予定地 ・蛙坂須美 幽霊は二度死ぬ、あるいはそこにないものがある話 ・小山田浩子 こたつ ・松尾信一郎 水の滴るような積分記号について ・永井太郎 健康 ・陳詩遠 ありえない秩序 ・二見さわや歌 骨を撒く ・牧野楠葉 瑠衣 ・伏見瞬 「さみしさの神様」を待ちながら ・伊藤螺子 鶴丸さんの分身 ・友田とん 矛盾指南 連載・小特集 これから読む後藤明生2 ・細馬宏通 蕨、遡る歌 ・深澤元 後藤明生を売る ・panpanya 読み方 コバヤシタケシ dessin 2 ミイラ 著者略歴 読者の声
可笑しさで世界をすこしだけ拡げる出版レーベル〈代わりに読む人〉から新しい文芸雑誌『代わりに読む人』を刊行。「読む」ことを通じた思いもよらぬ隣人や異界との出会いを生み、読む/書く人たちの試行錯誤の場となる「公園」を目指します。 『代わりに読む人0 創刊準備号』では、特集テーマも「準備」とし、有名、無名の分け隔てなく、文芸・アート・科学・実務などの分野から、次の作品を読みたい、広く読まれてほしいと感じる人たちに、「準備」から想起された小説・エッセイ・漫画などを執筆していただきました。 連載・小特集は「これから読む後藤明生」とし、今年生誕90周年を迎えた小説家・後藤明生について初心者からファン、批評家・怪談作家まで様々な人たちに寄稿いただいています。 「2021年に読んだ本」では、執筆者に2021年に読んだ本を紹介してもらっています。 ◎特集「準備」 二見さわや歌……行商日記 陳詩遠……………解凍されゆく自身とジュネーブ近郊の地下で起こっている乱痴気騒ぎについて 小山田浩子………バカンス 伏見瞬……………準備の準備のために、あるいはなぜ私が「蓮實重彥論」を書くことになったか 田巻秀敏…………『貨物船で太平洋を渡る』とそれからのこと オルタナ旧市街…完璧な想像(ポートオーソリティ・バスターミナルで起こったこと) 近藤聡乃…………ただ暮らす 橋本義武…………準備の学としての数学 わかしょ文庫……八ツ柳商事の最終営業日 柿内正午…………会社員の準備 海乃凧……………身支度 太田靖久…………×××××× 佐川恭一…………ア・リーン・アンド・イーヴル・モブ・オブ・ムーンカラード・ハウンズの大会 鎌田裕樹…………オチがない人生のための過不足ない準備 毛利悠子…………思いつき 友田とん…………雑誌の準備、準備としての雑誌 ◎「2021年に読んだ本」 近藤聡乃/太田靖久/佐川恭一/田巻秀敏/柿内正午/蛙坂須美/小山田浩子/二見さわや歌/オルタナ旧市街/伏見瞬/東條慎生/海乃凧/陳詩遠/鎌田裕樹/わかしょ文庫/haco/友田とん/コバヤシタケシ ◎連載・小特集「これから読む後藤明生」 haco………………日常と非日常の境界線 蛙坂須美…………後藤明生と幽霊 ──『雨月物語』『雨月物語紀行』を読む 東條慎生…………見ることの政治性 ── なぜ後藤明生は政治的に見えないのか? 友田とん…………後藤明生が気になって ◆装画・挿画・ロゴ◆ 佐貫絢郁 ◆制作◆ 装幀・コバヤシタケシ 組版・飯村大樹 校正・サワラギ校正部…
【概要】 世にも精緻な文の祝祭がここに──。 西崎憲プロデュースの短文集シリーズ〈kaze no tanbun〉第三弾。「夕暮れの草の冠」をテーマに、稀代の文章家17人が、小説でも詩でもない「短文」を書き上げました。作品同士が響き合い、さらに余白に配された超短文「エピグラム」によって一篇の物語のようにも読める、かつてない破格のアンソロジーです。 【著者】(五十音順) 青木淳悟/円城塔/大木芙沙子/小山田浩子/柿村将彦/岸本佐知子/木下古栗/斎藤真理子/滝口悠生/飛浩隆/西崎憲/蜂本みさ/早助よう子/日和聡子/藤野可織/松永美穂/皆川博子 【kaze no tanbunとは】 「自分の生涯においてこれを作ったと自慢できる本を作りたい」。日本翻訳大賞の発起人であり、電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」主催で、「BFC ブンゲイファイトクラブ」などを企画する西崎憲の発案からスタートした、全篇新作の〈短文〉アンソロジーシリーズ。「短文」とは「小説でもエッセイでも詩でもない、ただ短い文。しかし広い文」(西崎氏)。シリーズ通してブックデザインは奥定泰之。第一作「特別ではない一日」(2019年)、第二作「移動図書館の子供たち」(2020年)、「夕暮れの草の冠」(2021年)。 【「切手小説」プレゼント企画】 本書の執筆者17人による「切手小説」が印刷された、オリジナル切手シートを各種1名様、合計17名様にプレゼントします。 ・本書挟み込みの応募用紙からハガキ部分を切り取って、住所・氏名・電話番号・メールアドレス・希望する小説の執筆者名・本書/シリーズのご感想を記入し、63円分の切手を貼り送ってください。 ・本景品は、日本郵政の「オリジナル切手サービス」を利用して作成する、84円郵便切手×20枚・シール式の切手シートです。実際に切手としてご利用いただけます。 ・発表は当選者への通知をもって代えさせていただきます。 ・締切は2021年8月31日(火)消印有効 小山田浩子「コンサートホール」 木下古栗「僕の人生の物語」 円城塔「ドルトンの印象法則」 斎藤真理子「編んでる線」 蜂本みさ「ペリカン」 藤野可織「セントラルパークの思い出」 松永美穂「たうぽ」 日和聡子「白いくつ」 青木淳悟「旅行(以前)記」 早助よう子「誤解の祝祭」 大木芙沙子「親を掘る」 西崎憲「病院島の黒犬。その後」 岸本佐知子「メロンパン」 柿村将彦「高なんとか君」 斎藤真理子「エディット・ピアフに会った日」 滝口悠生「薄荷」 飛浩隆「緋愁」 皆川博子「夕の光」
当たり前の風景、繰り返される日常の営み。それが世界をかすかに震わせる。豪雨災害に見舞われた農村にボランティアとして赴いた私がふと目にした、花の世話をする住人らしき女性。その周りだけ、違う時間が流れていてーー被災地、自宅、保育園といったさまざまな場所で出会う何気ない出来事をつぶさに描いた中短篇の他、広島カープをめぐる奇談連作も収録。海外でも注目を集める作家の最新作品集。
【概要】 この本はあなたの本棚のために特別に作られました──。 西崎憲がプロデュースする短文集シリーズ〈kaze no tanbun〉第一弾。現代最高の文章家17人が「特別ではない一日」をテーマに、小説でもエッセイでも詩でもない「短文」を寄せました。作品同士が響き合い、まるで一篇の長編作品のようにも読めるかつてない本です。 【kaze no tanbunとは】 「自分の生涯においてこれを作ったと自慢できる本を作りたい」。日本翻訳大賞の発起人であり、電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」主宰、そして文芸ムック『たべるのがおそい』編集長をつとめた西崎憲の発案からスタートした、全篇新作の「短文」アンソロジーシリーズ。「短文」とは「小説でもエッセイでも詩でもない、ただ短い文。しかし広い文」(西崎氏)。全3冊を予定。シリーズ通してブックデザインは奥定泰之。 山尾悠子 「短文性について1」 岸本佐知子「年金生活」 柴崎友香 「日壇公園」 勝山海百合「リモナイア」 日和聡子 「お迎え」 我妻俊樹 「モーニング・モーニング・セット」 円城塔 「for Smullyan」 皆川博子 「昨日の肉は今日の豆」 上田岳弘 「修羅と」 谷崎由依 「北京の夏の離宮の春」 水原涼 「Yさんのこと」 山尾悠子 「短文性について2」 円城塔 「店開き」 小山田浩子「カメ」 滝口悠生 「半ドンでパン」 高山羽根子「日々と旅」 岡屋出海 「午前中の鯱」 藤野可織 「誕生」 西崎憲 「オリアリー夫人」
大河が南北を隔てる巨大工場は、ひとつの街に匹敵する規模をもち、環境に順応した固有動物さえ生息する。ここで牛山佳子は書類廃棄に励み、佳子の兄は雑多な書類に赤字を施し、古笛青年は屋上緑化に相応しいコケを探す。しかし、精励するほどに謎はきざす。この仕事はなぜ必要なのか……。緻密に描き出される職場に、夢想のような日常が浮かぶ表題作ほか 2 作。新潮新人賞、織田作之助賞受賞。
それぞれに無限の輝きを放つ、15の小さな場所。待望の短篇集。ふきのとう。ヒヒ。彼岸花。どじょう。葦。鶴。おたまじゃくし。ままならない日々を生きる人間のすぐそばで、虫や草花や動物たちが織り成す、息をのむような不可思議な世界。暮らしの中にある不条理と喜びを鮮やかに捉え、風景が静かに決定的に姿を変える瞬間を克明に描き出す、15篇の物語。芥川賞受賞後初著書となる作品集。
仕事を辞め、夫の田舎に移り住んだ夏。見たことのない黒い獣の後を追ううちに、私は得体の知れない穴に落ちる。夫の家族や隣人たちも、何かがおかしいー。ごく平凡な日常の中に、ときおり顔を覗かせる異界。『工場』で話題を集めた著者による待望の第二作品集。芥川賞受賞作のほか「いたちなく」「ゆきの宿」を収録。
不可思議な工場での日々を三人の従業員がそれぞれに語る表題作(新潮新人賞受賞)のほか、熱帯魚飼育に没頭する大金持ちの息子とその若い妻を描く「ディスカス忌」、心身の失調の末に様々な虫を幻視する女性会社員の物語「いこぼれのむし」を収録。働くこと、生きることの不安と不条理を、とてつもなく奇妙な想像力で乗り越える全三篇。