著者 : 小嵐九八郎
政治の季節の影を引きずり、精神を病んでしまった彼女。その心を開かせたのは、ちょっぴりどじな彼の純情だった…。軽やかな語り、ユニークな青春像。気鋭作家が描く、注目の書き下ろしロマン。
鈍川家の長男・真逸郎は、父を殺した白館貴思雄の報復に失敗し刑務所に入っている。異母弟・小次郎は抜群の頭脳と腕力に恵まれ、東大に進学、学生運動の渦中に身を投じながらも、父、兄の無念を晴らすべく白館に迫ってゆく。しかし、その過程で密かに思いを寄せる女性がいながら、白館の娘に挑発され、苦悩の学生時代を送る。そして、小次郎は遂に白館を襲う直前まで至るが、その時、白館の長女は…。
日本の最南端、琉球諸島の小島に美しい女子大生が訪れた直後ー。波涛悠は、釣りに出掛けた父とリゾート開発業者が、巨大な鮫に食われる悲劇を目撃し、愕然とした。なぜ2人が海中に引きずり込まれ、鮫の餌食になったのか?一滴の血の臭いでもない限り、鮫はけっして人を襲わない。やがて悠の心に一つの疑惑が芽生えた…。長編冒険小説。
諏訪御柱祭り。七年に一度、命知らずの男たちが、切り出された巨木にまたがり、急坂を滑り下りてくる。先頭のハナ切りを狙い、欲襲次21歳は諏訪へ帰って来た。殺された養父の無念を晴らし、憧れの誉志子を手に入れるには、ライバル矢頭丸騎一に勝たねばならない。スピードとエロスの新青春小説いまここに誕生。
坂倫彦は息を呑み、思わず後ずさりした。雪に覆われた山麓に、翼を広げると2メートル半はある空の王者・大鷲が、彼を威嚇したのだ。が、大鷲は右脚から血を噴き苦しんでいた。助けを求めなければ、と振り向いたとき、倫彦は再び戦慄した。背後に、ぞっとするほど美しい少女が立っていたのだ。今や絶滅に瀕する大鷲との交流と、蠱惑的な少女との運命的な出会い。そしてやがて二人を襲う悲劇。都会の若者が愛と勇気に目覚める姿を描く、感動のアドヴェンチャー・ロマン。
剣道場を経営し、政治結社・土佐草志塾を開いていた鈍川竜平が、出征から高知市へ帰還したとき、家も妻も塾生も白館貴思雄に奪われていた。そして、長男の真逸郎は行方不明…。やがて、父と子は再会するが、竜平は失意のうちに白館の手下に殺される。真逸郎は父の無念を晴らすべく、白館に復讐を誓うが…。高らかに男のロマンを謳う書き下ろし意欲作。
ホーン岬。南米大陸最南端に位置し、岬を流れるドレーク海峡は、パナマ運河開設まで航海者達の命を累々と呑み込み、魔の海域と怖れられていた。大前信一郎をスキッパーとするアンズ号は、厳寒期、クルーザーでホーン越えに挑む。大前を兄と慕う山野井凛は、この航海を我がことのように見守っていた。しかし連絡が途絶えた後、凛のもとに届いたのはアンズ号遭難の報であった。絶望に打ち拉しがれる凛。しかも事故には不可解な点が幾つかあった。大前のフィアンセ・啓子の熱い勧めに、凛はホーン越え挑戦の決意を固める。
売れなくなった歌手北原季美と、破竹の勢いをみせるボクサー土方留夫。雑誌の対談で初めて顔を合わせた2人だが、土方の心には憧憬が、季美の胸には打算が宿っていた。私欲のために接近し、土方の将来如何では離婚を前提とした結婚を考えていた季美は、思惑通り幸運を掴んでいく。一方、世界戦への階段を順調に昇っていた土方は、リングへの恐怖心が募り、脅えた瞳のまま最強の敵に挑むが…『駆けゆくもの』。
まぎれもなくそれは、ニホン狼の特徴をすべて満たしている。大清水丈は驚愕した。絶滅したはずの狼が、凍てついた雪原に姿を見せたのだ。同じ冬、猟に出掛けた兄の震が死んだ。猟友の矢頭の証言によると、狼の群れに追いつめられ猪死谷から墜落したという。復讐を心に誓った丈だったが、やがて兄の死因に新たな疑惑が…。日本の哺乳類すべてが生息すると言われる秋田県白神山地を舞台に、伝説の狼を追い、男と女の愛憎の間で逞しく成長する若者を描く感動の冒険小説。
スナックのホステス、森園由香子が絞殺体で発見され、森園の愛人で、区役所に勤務する郷秀哉が逮捕された。だが、事件の成り行きに不審を抱く石倉練造刑事は、弁護士になりたての冬野尽に郷の弁護を強引に依頼した。1人ではからっきしだめな尽も、美女秘書の野村綾子、石倉の娘で新聞記者のさくら子、郷の娘で不良女子高生の淑子らの強力な助っ人を得て発奮!斬新な本格推理小説の秀作!
冬野尽は29歳の弁護士だ。が、やっと司法試験に合格し、やっと居侯弁護士から独立して事務所を開いたばかりだから、客はめったに来ない。とにもかくにも尽ちゃんが弁護士になれたのは、秘書で美人の野村綾子のお陰である。綾子は尽ちゃんのかつての家庭教師だったが、それは猛烈をきわめ、物差しでビシバシひっぱたいて鍛えたのだった。子持ちで離婚歴のある33歳の綾子と毎日ひまな事務所で顔をつき合わせている尽ちゃんは、アッチの方がダメなのだが、女盛りで魅力たっぷりの綾子に時には股間が刺激されるのだった。-男と女の微妙で深い襞を軽快なタッチで抉ったユーモア・ミステリー。
ぐらりと赤い不思議なものが自ら湾曲し、水飛沫が上がった。やっぱり魚類だ。だが鮭ではない。鮭はこんな鮮明な赤地ではない。それに鮭が丸木舟のように2メートルを優に超えるはずがない…。山形・鳥海山麓の湖で、北峰太郎彦は思わずわが目を疑った。村人の誰もが信じなかった伝説の巨魚〈アカノスケ〉がその雄姿を現わしたのだったー。祖父、父、そして太郎彦の親子3代が巨魚に挑戦するさまを、気鋭の新人が劇的に描く感動の冒険小説、登場。