著者 : 小川隆
ステレオ修理屋のレイは父親の死を契機に人生の行き詰まりを感じる。そんな時、自らの不思議な力に気づくー思い浮かべた伝説の音楽家たちの録音風景が実際に流れてくる。その力でビートルズ、ドアーズ、ビーチ・ボーイズ、ジミヘンの幻の音源を完成させていく。ロックファンなら必ず夢想した物語を実現させたロックンロール・ファンタジー。訳者小川隆氏による新たな「あとがき」を収録。
人生に倦み、最高の刺激を求めていたジョン・ニューハウスは、塵に覆われた異星の海に棲む“塵クジラ”から採取される麻薬“フレア”を探す旅に出た。コックとして乗りこんだ塵クジラ漁船で、翼を持ち、優雅に空を翔ける異星人女性ダルーサと出会ったジョン。漁船で厳しい生活をともにするうちに、激しく惹かれ合っていくふたりだったが…。若き日のスターリングが華麗に描き上げた、ロマンティックな冒険ファンタジイ。
植民惑星ミランダは変化の時を迎えていた。極地の氷が解け、陸の大半が水没する時季が近づいていたのだ。この星に星間政府の役人が派遣されてきた。グレゴリアンという男が禁制テクノロジーを使用し、水中生活の可能な改造人種を作りだしているとの報があったのだ。グレゴリアンの足跡を追ううち、役人は美しくも怪異なこの星の罠にからめとられていく…。科学と魔術を華麗に融合させ絶賛を浴びた珠玉のネビュラ賞受賞作。
近未来サンフランシスコ。この街では、あらゆるビジネスがコンピュータによる仮想現実空間“テレ空間”の中で瞬時に処理されている。その業務にたずさわるエリートを目ざす新人弁護士のカーリーは、こともあろうに初めてのテレ空間内裁判で原因不明の機能停止を起こし、キャリアに致命的なキズを負ってしまう。エリートの道へ復帰するためには手段を選ばないカーリーだったが…。期待の女性作家が鋭利な筆致で描く話題作。
若い愛人が電気屋につくった借金を返すため、心ならずも再びジャガーを狩る羽目になった中年インディオは、謎の美女に導かれて異界へと足を踏み入れる…。現代の南米を魔術的リアリズムで描く表題作のほか、全長200メートルの巨大な竜をめぐる途方もないファンタジー「竜のグリオールに絵を描いた男」など、全米SF界を瞠目させた驚嘆すべき珠玉作全8編。世界幻想文学大賞受賞。
中国奥地に源流を発し、極地地方を通ってニューヨークにまで流れ込む伝説の大河、ハサヤンパ。そこはすばらしい魚の宝庫であり、マストドンやユニコーンまでもが生息していた。少年ランナーは父親のティルカットに連れられて、釣りと狩りのキャンプ旅行にハサヤンパ河を訪れた。マストドンを撃ち倒し、淡水カジキを釣りながら、父子の旅は順調に続くように思えたが、ある苛烈な出会いがハサヤンパ河上流で二人を待ち受けていた…。奇想天外な傑作カルト小説。
時は21世紀。地球はひとつの巨大な“ネット”に包みこまれていた。情報化と核兵器廃絶で力を失った国家にかわり、ネット上で活躍する多彩な多国籍企業が地球を動かしているのだ。そのひとつ《ライゾーム》社の呼びかけに応え、第三世界のデータ海賊の大物たちが、社のゲストハウスに集結してきた。違法なデータ盗用と無意味な武力抗争に終止符を打つのが《ライゾーム》社のもくろみだったー。だが交渉開始の矢先、会談の責任者ローラの目前で悲劇が起こった…。気鋭作家が近未来情報化社会をリアリスティックに描いたSF問題作、ついに登場。キャンベル記念賞受賞。
会談は決裂したー第三世界のデータ海賊のひとりが、正体不明の無人機械に殺されたのだ。疑心暗鬼におちいり、復讐にのりだすデータ海賊たち。だが情報社会に暴力が無意味であることを確信するローラは、彼らを再度交渉のテーブルにつかせるため、単身旅立つことを決意する。グレナダ…シンガポール…権力と軍、秘密警察が一体となってデータ海賊行為をはたらく国々。そこでローラを待ちうけていたのは、想像を絶する悪夢だった。90年代SFを担うスターリングが果敢に新機軸を切りひらき、キャンベル記念賞受賞に輝いた話題の傑作長篇。
泥沼の戦争がつづく近未来の中米。米軍砲兵隊特技士官ミンゴラは、潜在的超能力開発の訓練を受け、特殊部隊に参加する。彼を特ち受けていたのは、悪夢にも似た非現実的な世界だった。ジャングルの奥深く、墜落したヘリの中で息づく人工知能コンピュータ。戦争の背後に蠢く2つの氏族。謎の女デボラ…。現代アメリカ文学の俊英が魔術的リアリズムで描く、21世紀の「地獄の黙示録」。
寒冷や酷暑、真空、低重力、容赦なくふりそそぐ宇宙線…。苛酷きわまりない大宇宙に生きるため、人類はおのれの肉体そのものを改造しはじめた。ある者は遺伝子工学を駆使して肉体そのものを改変し、ある者は肉体とハイテクの融合に未来を見出した。やがてそれが〈工作者〉〈機械主義者〉という二大勢力となり、他の党派をもまきこむ抗争をくりひろげるが、遥かに進歩した異星人〈投資者〉も、太陽系への進出を画策していた…。サイバーパンク派の旗手の未来史SFを日本で独自に結集した、ファン待望の傑作短篇集登場。
すべては1984年に始まった。ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』が発表され、英米SF界に〈サイバーパンク〉の嵐が吹き荒れはじめたのだ。テクノロジーとメディアの驚異的な発展が、人間そのものを変化させてゆくという認識のもと、才能ある若手作家たちがぞくぞくとサイバーパンク運動へと参加してゆく。運動の輪はSF界以外にも広がり、今もなおホットな議論をまきおこしている。そして今、現在進行形のこのSF革命の最前線から、1冊のレポートが届けられた。ギブスン、スターリング、ベア、ラッカーらの傑作を結集したサイバーパンク・ショーケース登場。