著者 : 小杉健治
青柳剣一郎と剣道場で同門だった浦里左源太は、陸奥の藩に仕え幸せな家庭を築いているはずだった。ところが左源太の零落した姿が江戸で散見され、首をざっくりと斬られた武士の死体が見つかる。それは絶命剣という恐るべき技で、左源太がまさに体得しようとしていたものだ。何故家族を捨て、刺客となって帰府したのか?風烈廻り与力の剣と人情が冴える傑作。
闇に悲鳴が轟いた。南町与力の青柳剣一郎が駆けつけると、別れたばかりの同僚が斬殺されていた。これが、八丁堀を震撼させる与力殺しの幕開けだった。さらに二人、三人と与力ばかりを一刀のもとに斬り伏せる居合の達人とは何者か?風烈廻りから急遽探索の長に抜擢された剣一郎だが、息子の剣之助までが囚われ、絶体絶命の窮地に!人気シリーズ第三弾。
家庭内暴力をふるう不登校の中学生、志方恭介が刺殺された!悲劇の夜、たまたま誘われて怪しげな店で遊んでいた父親・恭一郎は、妻や娘たちに恨まれ、警察やマスコミからは疑惑を受ける。やがて犯人が判るが、少年法で守られている犯人を糾弾する恭一郎は、逆に非難を浴びる。家庭も将来も失い、復讐心から犯人の母・はつみに近づいた彼は…。少年犯罪で崩壊した家族の苦悩と再生を描く傑作。
昭和初年から平成の時代へ。なぜ、こんなに大勢の人が死ななければいけないのか。平和だが荒廃した現代への失望。燃え尽きた男は歴史の真実を語った。庶民から見た東京大空襲に迫る畢生の書下ろし1200枚。
盗品らしき象牙の撥、金縛りに遭う蒲団…台東区浅草の天野質店には、わけありの客がいろんな質草を持ってくる。なかでも主人・天野籐吉や息子の籐一郎が驚いたのは、旧華族更級家の娘・美登利が質入れした日本最古(!?)の仏像だった。ところが、その直後、更級家は全焼、美登利が蒸発した!?連続放火、集団詐欺事件の行方は?謎たっぷりの人情噺。
薬害問題で、製薬会社側の立場に立った雑誌の編集をしている倉沢の娘が誘拐された。犯人は倉沢だけでなく製薬会社側をも脅迫してきた。倉沢には10年前に失踪した恋人がおり、その女性と誘拐事件の関連に疑いを持つ。所轄の下谷中央署の矢尋・知坂両刑事も独自の捜査を続けていた。実力派が放つ書下ろし警察ミステリー。
今をときめく梨園の御曹司と、向島花街に生きる売れっ子芸妓。芸の未熟をつかれて自らを見失い、姿を消した人気役者羽村市之助。一方、彼を案ずるお良の身には向島乗っ取りを狙う陰謀の影が迫り…。明治下町を舞台に人情の機微を描く力作長篇。
人気大関、横綱昇進を辞退。前代未聞の騒動に困惑する角界をよそに、当の大龍は死んだはずの父の姿を求めて街をさまよっていた。彼の身を案じる幼な馴染の恋人、親友。そして彼らの集団就職を世話した恩師の死体がー。貧困の故に薄汚い欲望の犠牲となって翻弄される彼らの悲劇と、未解決事件の犯人逮捕に異常な執念を燃やす老刑事の姿が交錯する、出色の相撲ミステリー。
新社屋の美術館創設のため、孤高の日本画家名瀬光二の絵の入手を試みて失敗した山名啓司は、立ち寄った馴染みの店で、かつて同棲していた女・純子の描いた絵に似た絵を見て衝撃を受けた。画廊へ出かけた山名は、純子が亡くなったことをオーナーの藤崎美奈子から知らされる。やがて二人は深い仲になるが、ある日、内密に入手し、美術館を飾っている名瀬の絵が贋作だという手紙が山名の許に届く。長篇推理。
旧ソ連ウクライナ共和国キエフ北方130キロにあったチェルノブィリ原発の事故は、日本の原子力発電所建設にも多大な影響を与えたのだった。北陸地方の一漁港であった森尾町に建設された森尾原発も例外ではなかった。大浜栄吉は森尾町で発行される森尾新報の記者として、現在も続く原発反対運動の取材を通じてエゴを丸出しにする醜い人間を見た。
刑事が追う、女が逃げる。過去のある男と女が出会ったのは、殺人事件の疑惑の中だった。女は本当に財産目当てに夫を焼き殺したのか。はぐれ刑事として違法捜査へ踏み込む刑事は窮地に立たされ、執念も実を結ばず終わるのか?欲望の闇の底から浮かび上がる哀しい人間の営みを社会派推理の旗手が描く。
詐欺商法でのし上がった悪徳会社「シルクハウス」の会長が殺された。捜査陣は対立していた専務・工藤をマーク、しかし、彼には鉄壁のアリバイがあった。工藤有罪を信じる刑事・沢月は、執念の捜査の末アリバイを崩し、工藤を逮捕。若き美人弁護士・槙村ゆり子は、工藤の無実を証明するため、法廷で検察側と真っ向から対立するが…。気鋭の新境地。本格推理秀作。