著者 : 小杉健治
東京高輪でおきた社長殺しの容疑で逮捕された古沢克彦は無実を叫びながら、獄中で自殺した。兄の無実を信じ名誉回復の再審を弁護士に依頼する妹秀美。だが、公判中の被告人の死は、有罪ではなく無実というのが法律上の建前で再審請求には該当しない。マスコミが騒ぎ、殺人者に仕立て上げられた兄の無実を晴らすために、秀美が打った奇策と意外な事実とは…。真実を問う長編法廷ミステリー。
“夫殺し”の起訴事実を、すべて認めた被告弓丘奈緒子。執拗に無実を主張する原島保弁護士。犯行に使われたと思われる柳刃包丁を買ったのは奈緒子だ、と認める証人。殺された夫には愛人がいた。離婚話もあって…状況は被告不利に傾むいてゆく。だが、裁判の進行につれて明らかになる秘められた意外な真実とは。人間の心の気高さを謳いあげる感動の長編法廷ミステリー。第41回推理作家協会新人賞受賞作。
黎明期の向島花街に生きたひとりの女の愛と哀しみ。明治20年、新橋の売れっ子芸妓お良は政商村岡にひかされて向島に移る。隅田川に秋風が渡るある夜庭先に現われた目許の涼しい若い男に別れられない想いを抱いたお良だが、村岡が何者かに暗殺され…。向島花街に生きたひとりの女の物語。
静岡県藤枝市で起った“食堂一家殺害事件”の犯人として逮捕された岡野保は、一貫して無実を主張したが、死刑が確定。拘置所で刑執行におびえる日々を送っていた。一方、東京では岡野の冤罪を晴らすべく特別弁護団が結成された。弁護団の一員月村耕介は再調査のため静岡に赴き、かつて岡野を取調べ、今は停年退職している志木元刑事を訪ねる。月村は新事実をつかんだが…!?会心の長篇法廷ミステリー。
昭和57年9月ー東京・荒川の河川敷で、関東大震災直後に故なく虐殺された朝鮮人を慰霊するための遺骨発掘作業が行なわれた。だが、遺骨は見つからず、3年後、別の白骨死体が隅田公園で発見された。身元捜査が開始される…。過去と現在が交錯する二重、三重の深い謎を描く、本格社会派ミステリー。
昭和42年夏場所で準優勝した大関・大龍は、横綱審議会の推挙の報を尻目に失踪する。次いで発表された横綱昇進辞退宣言。困惑する角界をよそに、大龍は死んだはずの父親の行方を必死に追っていた-。東京がまだ至るところ工事中だった20年前、濃好な下町情緒のなかで起った殺人事件にからめとられた大龍は、はたして再起できるのか…。東京オリンピック前後のレトロな風俗を織り込みつつ描く、人間味溢れる相撲ミステリー。
13年前、新宿裏通りで殺人事件が起きた。犯人とされた男は有罪判決を受け、無実を訴えたまま獄中で病死した。この事件は、他の大きな事件の陰で忘れられたかに見えたがー。ある日、汚名をそそぐ機会も与えられなかった父の無念をはらしたいと、若い女性が水木弁護士を訪れた。正義感に燃える水木は、困難な調査を開始した。先入観と焦燥感に歪められた警察捜査の本質を暴く処女長編。
現金輸送車が襲撃された。犯人に名を呼ばれたことから当然疑いをかけられた運転手は、潔白を主張した。彼は、急に病欠した同僚に代って運転手を務め、事故に遭ったのだった。度重なる取調べと周囲の冷たい目に耐え切れず、彼は独力で真犯人を追うが、そのまま失踪してしまう。夫を信じる妻も又、孤独な戦いを挑むがー。社会の谷間で傷つく弱者を描き続ける著書の書下ろし長編。
コンピュータ・ソフトウェア会社の野心家のSE・桂木勲は、ある日の午後、若いOLと情事を愉しんでいた。ところが、その同じ時間に出向先の銀行で、まったく予期せぬ出来事が起こり、桂木はピンチにおちいる。はじめて味わう挫折感。やがて、新しい出向先に移った桂木は、今度は自己の存在理由が根底からゆさぶられるような、衝撃的な事件に遭遇する。その事件とは?ビジネスマンの生き方の問題を、恋愛とえん罪をからめて鮮烈に描く感動の長編推理。
詐欺商法でのし上がった悪徳会社「シルクハウス」の会長・碓井宗晴が絞殺された。碓井と対立する同社専務・工藤博幸を捜査陣はマーク、殺人の動機をつかんだ。が、工藤には鉄壁のアリバイがあった!有罪を信じる沢月刑事は執念の末アリバイを破り、工藤を逮捕、事件の舞台は法廷に…。さらに公判中、工藤は愛人・篠原紀絵の意外な証言で窮地に追い込まれる。若き美人弁護士・槙村ゆり子と工藤の無実を証明するため、検察側と真っ向から対決するが…。二転三転と息づまる展開のなかに秘められた真実は?アリバイくずしと緊迫の法廷シーンとを見事に融合させた、気鋭の書下ろし本格長編推理の秀作!