著者 : 小沼文彦
鰐 ドストエフスキー ユーモア小説集 沼野充義編鰐 ドストエフスキー ユーモア小説集 沼野充義編
ドストエフスキーは最初から「ユーモア作家」だった! 怪しい色男を巡る、2人の紳士の空疎な手紙のやり取り。寝取られた亭主の滑稽かつ珍奇で懸命なドタバタ喜劇。小心者で人目を気にする閣下の無様で哀しい失態の物語。鰐に呑み込まれた男を取り巻く人々の不条理な論理と会話。19世紀半ばのロシア社会への鋭い批評と、ペテルブルグの街のゴシップを種にした、都会派作家ドストエフスキーの真骨頂、初期・中期のヴォードヴィル的ユーモア小説4篇を収録。 沼野充義 ここに収められた初期から中期のドストエフスキー作品の基調ともいうべきものは、延々と続く形而上的議論の底知れぬ深みに下りていく手前で踏みとどまり(いったん呑み込まれたら這い出すことができないような深みがあることはすでに予感されるとはいえ)、あえて表層で戯れ続けているような感じさえ与える過剰な言葉と自意識のドタバタ劇場であって、ドストエフスキーは明らかにユーモア作家でもあった。--<「解説」より>
二重人格二重人格
主人公は小心で引っこみ思案の典型的小役人。家柄も才能もないが、栄達を望む野心だけは人一倍強い。そんな内心の相克がこうじたあまり、ついにもう1人の自分という幻覚が現れた!精神の平衡を失い発狂してゆく主人公の姿を通して、管理社会の重圧におしひしがれる都市人間の心理の内奥をえぐった巨匠(1821-81)の第2作。
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