著者 : 小菅正夫
アイスクリームを愛する青年ジョニーは殺し屋だ。依頼は相棒のマックが持ってくる。一人では生きられないジョニーをマックが苛酷な世界から守り、ジョニーが殺しで金を稼いで、二人は都会の底で生きてきた。相棒を殺された刑事が彼らを追いつめはじめるまでは。男たちの絆と破滅を暗く美しく描いた幻の名作、30年ぶりの復活!
全寮制私立校ブレッドガー・チェンバーズは、良家の子女だけが入学を許されるイギリスの名門校だ。その閉ざされた世界の中で、一人の新入生が行方不明となり、全裸死体で発見された。捜査に乗り出すリンリー警部と相棒バーバラ。行く手を阻んだのは、いじめ、小児性愛、人種問題など、ありとあらゆる要素の絡み合った迷路と、絶対に告げ口をしないという“名誉の掟”だったー。
スティンハースト卿率いる劇団員は、スコットランドの古い館ホテルに滞在。ロンドンの劇場のこけら落としを前に、リハーサルを進めていたが、そのさなか、野心的な新進女流劇作家が殺害された。現場に乗り込んだ貴族刑事リンリーと相棒のバーバラは、やがて、スティンハースト一族のスキャンダル、パブの女房の自殺という、二つの過去の事件を知るのだが…。異色コンビが犯人を追う。
事故で顔面に重傷を負った女性記者カーリーの顔は、天才的形成外科医の手で見事に修復された。だが彼女はほどなく医師のいかがわしい前歴を知らされる。そして、自分と同じ顔を与えられた女が存在し、しかも彼女が行方不明になっていることもー。医師は完全無欠の顔を作り出し、自分の名を不朽のものにしようとしていたのだ。真相を知りかけたカーリーに、医師の魔の手が迫る。
ヨークシャーの農場主が首を切られて殺され、死体の傍らで彼の娘がつぶやいていた。「私がやった、でも後悔はしていない」-村人たちには彼女が犯人とは思えなかったが、娘は固く心を閉ざしたまま病院へ隔離された。その母と姉は過去に家出して消息不明だった…。既存のミステリーを超えて、平和な農村に起こった異常な犯罪とそれをとりまく複雑な人間関係を精緻に描く長編。
ジルベール・デュラック、この道26年のヴェテラン刑事。思慮深く公平、子供がないのが人生唯一の悔恨。そんな彼の前に事件が発生した。貧しい母子家庭の12歳の少年が突然失踪したのだ。誘拐したのは友人もなく、同性愛の世界へ片足を踏み入れている22歳の大学生。彼の生い立ちには、愛情がまったく欠落していた。彼はただ、ともに語り合える弟か友人が欲しかったのだが…。
子供の失踪の原因は充分な愛を注いでやれなかったからではないかと心を傷めつつ、安否を気遣う母。自分がつくりだした状況に逆に追い詰められ、子供を連れたまま身動きのとれない犯人。そして誠実に職務を果たし、犯人を追う刑事。-忌まわしい未成年者誘拐と、毒々しい同性愛の世界を描きながら、弱者や傷ついた者たちへの深い同情のまなざしを向け、非情な社会の深淵を突く長編。
ソ連の対潜ヘリ空母ハリコフに新兵器ウルトラ・ソナーが装備された。その性能を探るため、英国の最新鋭原子力潜水艦サターンはバレンツ海のソ連海軍演習海域へ潜入する。だがその行動はすでに察知され、ソ連はハリコフの他原潜四隻をも配置し、サターンを捕獲すべく待ち構えていた。サターン艦長が離脱を決意したとき、ソ連の対潜ロケットの衝撃がサターンの艦体を揺るがす…。
飛行テスト中の新型弾道ミサイルが突如方向転換して米本土へ舞い戻った。ソ連の妨害工作か?調査を命じられたCIA工作員マーカムは自国の驚くべき超能力開発の現場を垣間見るが、KGBでの研究はそれをはるかに凌ぐという。研究者に偽装した彼はソ連の研究の中枢に侵入をはたすがー。最先端の科学をめぐる秘密工作とその裏に隠れた謀略をスリリングに描くエスピオナージュ。
現実、フィクションを問わず、多くの殺人事件の舞台になってきたロサンゼルス。この映画界のメッカ、人種のるつぼ、光と色彩あふれる街にまた事件が起こる。解決にあたるのはハリウッドの若き“ミス・マープル”、アルメニア系の元ボクサー、かつてのスター、心霊研究者、メキシコ系の刑事…。8人のロス在住作家が地元を舞台にペンを競う書き下ろしミステリー短編集。